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RIZAPで話題の「割安購入益」って何?

2018年11月21日

  • 会計・財務
  • 先進事例
溝口 聖規 グロービス経営大学院 教員

先週、RIZAPグループ(RIZAP)が2019年3月期の通期業績予想を下方修正するという発表をしました。通期の営業利益は従来予想の230億円の黒字から33億円の赤字となる見込みとのことです。同社の業績下方修正の要因の1つとして、業績予想に織り込んでいた割安購入益が企業買収(M&A)路線の凍結によって使えなくなる点が報じられました。この割安購入益とはいったい何なのでしょうか?


簡単に言うと、M&Aにおいて買収対象の会社の純資産を下回る金額で買収する場合、買収金額と純資産の差額は「負ののれん」として把握されます。負ののれんは、日本の会計ルールでは発生した年度にP/Lの特別利益の区分に利益として計上されます。その際、使用される勘定科目が割安購入益です。


なお、RIZAPは会計基準としてIFRSを採用していますので、同社では割安購入益は営業利益に反映されます。

M&Aにおいて、通常は「買収金額>純資産」となるため、のれんはプラスとなります。負ののれん、あるいは割安購入益が発生するのは特殊なケースと考えていただいて結構です。


RIZAPは、ここ数年、多くのM&Aを繰り返して事業を拡大しています。2015年3月期には19社であった連結子会社数が、直近の2018年9月期では85社まで増加しています。RIZAPの連結P/Lでは、割安購入益は「その他の収益」に含められています。同社の決算説明会資料を確認すると、2017年3月期と2018年3月期に計上された割安購入益はそれぞれ、約59億円、約74億円です。なお、同期間の売上高、営業利益等は以下の通りですが、割安購入益が営業利益に与える影響は小さくないことが分かります。この点からも、M&A路線の凍結がRIZAPの業績にどのような影響を及ぼすか読み取れると思います。

ところで、そもそも企業を割安で買収できるのは何故でしょうか?売却する側からすれば財務的にももちろんですが、あるいはこれまで育ててきた事業を売却するという心理的な要因もあり出来るだけ高く売却したいと考えるはずです。いくつか要因は考えられますが、例えば、足元の業績が悪化しており、このまま事業を継続すれば徐々に企業価値が下落すると考えられるケースです。現時点では未だ実現していない将来の企業価値の目減り分をM&Aでは買収金額に織り込んで評価するため、「純資産>買収金額」となるわけです(その結果、負ののれんが発生します)。


ということは、買収する企業は買収時に一時的に利益(割安購入益)を得たとしても、買収した企業が以降損失を発生し続ければせっかくの割安購入益が帳消しになることも考えられます。したがって、このようなケースでは買収後の経営再建が重要になりますが、業績が低迷する会社の再建は困難な場合が少なくありません。RIZAPは、買収後の経営再建の遅れも今回の業績下方修正の一因に挙げています。

溝口 聖規グロービス経営大学院 教員

京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。


(資格)

公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)

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