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宇宙ビジネスのフロンティア

2018年11月16日

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  • テクノベート
  • 創造
  • 変革
  • 最先端

モデレーター

石田 真康氏 A.T.カーニー株式会社 プリンシパル、一般社団法人SPACETIDE 代表理事

パネリスト

岡田 光信氏 アストロスケール 創業者兼CEO
白坂 成功氏 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授
中村 友哉氏 株式会社アクセルスペース 代表取締役CEO

※あすか会議とは


経営者、政治家、学者、メディアなどのトップリーダーと、グロービスのMBAプログラムの学生(在校生・卒業生)および教員が一堂に集い開催する合宿型のカンファレンスです。第1回あすか会議は2005年、奈良県飛鳥荘にて80人の参加者を迎えて開催。第14回目となる2018年のあすか会議には、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン、英語MBAの学生1,400名が京都に集い開催しました。

宇宙ビジネスを取り巻く環境変化と現代のテクノロジーの融合

宇宙ビジネスはベンチャーの参入により急速に拡大している。今やAIやビックデータ、IoTなどのテクノロジーと融合し、既存のビジネスの構造も変える力を持ち始めた。この領域の環境変化や開発の状況、またビジネス関連の動きについてトップランナーが語った。


起業10年にもなると、宇宙ビジネスの世界ではもはや老舗だ。人工衛星の開発、その衛星から撮影した写真データの提供・活用サービスを行うアクセルスペースもその1つ。代表の中村氏は、この10年における宇宙ビジネスを取り巻く環境の変化やテクノロジーの影響をこう語る。

「当時、宇宙ビジネスはハイリスクの筆頭とも言える領域だった。自分は学生時代から携わっていた人工衛星開発を続けたい、その技術を社会に還元したいという思いだけで起業を考えていたので、ウェザーニューズとの出会いは本当に幸運だった。この10年で事業内容は、専用衛星の提供から自社衛星で収集したデータの活用や提供へと変化してきた。宇宙データの活用経験がある顧客は少なく、分析技術も未熟で保存も難しかった時代から、ビッグデータ解析やAIの進歩によって大量の撮影データを活用できるようになったことが大きい」


 同様に、世界初の宇宙デブリ(宇宙ゴミ)除去サービスを運営する岡田氏が宇宙ビジネスへのテクノロジーの活用を紹介した。

「AIを衛星の打ち上げ前の故障対応のシミュレーションなどに導入している。機械学習は慣性と温度変化の予想にも効果的だ。弊社も起業当時は市場がない、技術がないと心配されたが、前例がなく競合もいない業界だったからこそ成長できた。来年末には世界初のデブリ除去実証衛星の打ち上げを行う予定だ」

宇宙ビジネスの世界で新たな勝機を見出すために

まだ歴史の短い宇宙産業だが、この5年で投資総額は8100億円超。売上は35兆円という成長領域だ。岡田氏は「2030年には宇宙に3カ所は小基地ができます。つまり宇宙でもGDPが生まれ、地球版と宇宙版で足してGDPがいくらになるという時代が来るでしょう」と語る。また中村氏は、こうした背景の中でビジネスや市場に起こりうる変化を述べた。


「地上データに比べると宇宙データは広範囲の情報が得られるため、事象を多角的に見る時に役立つだろう。ビッグデータの一要素として、すべての産業に有用な可能性をもたらす新しいインフラになるはずだ。カメラやレーダーの撮影データがより便利な形で活用される世界は近いうちに実現すると予想できる。弊社は現在、そのプラットフォームのデファクトを確立するために鋭意開発に取り組んでいる。ハードウエア開発が必要な宇宙ビジネスの成功は資本力だけではなし得ないものなので、小さな日本の宇宙ベンチャーにも充分勝機があると思う」


さらに衛星データの最新活用事例とその可能性を白坂氏が紹介。シンスペクティブという観測衛星からレーダー撮影した画像データ提供サービスを行うベンチャーを立ち上げた経験から語った。

「例えば、エアバスとメルセデスベンツが行った包括提携は、エアバスのレーダーが撮影したデータとそこから抽出した高度情報を利用できるというものだ。これはベンツのロジスティクス分野への応用が主眼で、自動運転を行う際に三次元の高度情報を活用し効率的に速度コントロールを行うことが狙いだ。自社で開発するコストも軽減できる利点もある。この例から衛星をセンサーと考えれば、小型化して複数打ち上げる、現状で宇宙にないセンサーを持ちこんで新たな情報を取得するなど、比較的シンプルなアイデアでも充分ビジネスとして成長できる可能性がある」


「弊社ではエッジコンピューティング化(端末の近くにサーバーを分散配置すること)してセンサーを宇宙に拡散している。日本はセンサー分野が強いので、その強みを活かしつつ、地上の仕組みを宇宙に応用するアイデアも可能だろう。参入する余地は大きいと言える」

リスクヘッジと未来に向けた可能性の拡大

冒頭では宇宙ビジネスにおけるリスクが語られたが、この10年でかなり軽減されたという中村氏。扱う商材の選択がその後に大きく影響をもたらすようだ。

「人工衛星などのハードウエアを扱う場合は、リスクが高まるのはやはり避けられない。しかし購入したデータに付加価値をつけて販売するビジネスとして展開すればリスクを抑えることが可能だ。宇宙ベンチャーとして有名なオービタルインサイトがこの手法を取っている。宇宙データの活用・分析方法とよい顧客が見つかれば成立するので、近い将来はこうしたデータ分析系ビジネスが増加するだろう。ビジネス参入のハードルもかなり下がるはずだ」


 さまざまな側面から語られた宇宙ビジネスの過去と今、未来。可能性に満ちた世界の一方で、諸処の環境や技術の問題から壁を感じる方もいるだろう。例えば、資金調達に悩む人々に向けて岡田氏が述べた「資金調達はもはやアートの世界。8割の狂気と2割の理論が必要だが、その狂気をもっと持った方がいい」という言葉だ。自らの起業精神を奮い立たせ、冷静さだけでなく、時には突き抜けることも必要だと、改めて気づかされた。

編集後記

登壇者による講演またはパネルティスカッション形式でのセッションが終了後、夕食会で参加者同士での交流を楽しんだ後、「ナイトセッション」が開催されました。

ナイトセッションとは、各界のリーダーや著名人、講師たちとインフォーマルな雰囲気の中、少人数でテーブルを囲み、議論し語り合える時間です。普段の講演会やクラス等では知ることができない、登壇者の今の関心や熱い想い、これから成し遂げようとしている事など、この場でしか聞くことができない話をしていただきました。

当日の様子を写真で紹介いたしますので、ぜひご覧ください!

「あすか会議」は、グロービス経営大学院の教育理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を、在校生・卒業生に継続的に提供することを目的として、各界で活躍する経営者や政治家、学者および教員などを招待して開催するビジネスカンファレンスです。

モデレーター

石田 真康氏A.T.カーニー株式会社 プリンシパル、一般社団法人SPACETIDE 代表理事

パネリスト

岡田 光信氏アストロスケール 創業者兼CEO

白坂 成功氏慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授

中村 友哉氏株式会社アクセルスペース 代表取締役CEO

(※肩書は登壇時のものになります。)

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