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「仕事を通じて社会貢献したい!」を叶える公益経営とは?

2018年10月23日

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佐々木 希世 グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)研究員

「社会貢献」「CSR」「サステイナビリティ」といった言葉が日本のビジネスシーンに登場してから久しく、企業も社会の一員として責任を果たしていくという考え方は企業経営において一般的になってきたといえます。

一方、近年では「本業で社会貢献」「CSV(Creating Shared Value)」という概念も登場し、特に自分の仕事を通じて世の中の役に立ちたいという気持ちの強いミレニアル世代以降の社会人の後押しを受けています。

しかし実際のところはどうでしょう。「一会社員である自分に何ができるのだろう?多額の寄付はできないし、会社のCSR活動でボランティアに行く時間もない。本業で社会貢献と言われても何のことだかイメージがわかないし、いっそのこと社会貢献を本業にするべくNPOに転職するかと思っても給与は低そうだし・・・」と、こんなところで考えは行き詰まってしまうのではないでしょうか。

この連載では、公益経営(筆者の造語です)、すなわち企業がその本業を通じて、利益創出と社会貢献を同時に追求するとはどういうことなのか、実際の企業例を見ながら皆さんと考えていきたいと思います。

「公益経営」とは?

まずは、企業事例を1つご紹介しましょう。


LIXIL(リクシル)という会社があります。複数企業が合併してできた会社ですが、その前身だった企業の1つがINAX、トイレを製造する企業です。


日本のトイレは世界に誇れる製品ですが、お尻を洗ってくれるものばかりが最先端のトイレではないとばかりに、今、LIXILの製品で売上を伸ばしている製品の1つが、開発途上国向けの水をほとんど使わないトイレです。途上国では水道などのインフラが整備されている場所は少なく、当たり前ですが水は貴重な資源。ですからLIXILの開発した、少ない水で機能するトイレは諸手をあげて歓迎されているのです。


もちろんこれは慈善事業ではありません。先進国とは異なる環境で、より廉価に提供すべく知恵を絞って商品開発をし、途上国で販売しているのです。それがLIXILのノウハウになり、新たな商品開発のネタになる。儲けと、ノウハウと、高い顧客満足度。これらは、LIXILが普通に目指しているビジネスの目標であり、この事業活動はいわゆる「本業で利益をあげている」状態でもあります。


本業で利益を上げることが、いつの間にか社会貢献にもなっている。これを単なる偶然でなく意図的に作り出そうというのが、端的に言えば「公益経営」なのです。

「公益経営」は再発見された「三方良し」

公益経営やCSVというと、いかにも海外から入ってきた概念のようですが、意外にも日本人に馴染みの深いコンセプト。最近よく聞く「三方良し」が、それです。


ご存知の通り「三方良し」は昔から伝わる近江商人の心得で、三方とは「売り手」「買い手」「世間」のことを指します。この三者が全て「良し」となる、言い換えれば満足するように、良くなるように商売するのが良い商人というわけです。


最近は大企業の不祥事が相次ぎ、「世間良し」を実現している企業のイメージは想像しにくいかもしれません。しかし、ベストセラー『日本で一番大切にしたい会社』で紹介されるような、地域に根付いた中小企業でならイメージしやすいのではないでしょうか。


そして、これをちょっと硬い言い方に変えたのが、前述の「公益経営」なのです。本業をやりながらお客さん以外の人もハッピーにし、世の中における自社の役割を定義し、それを全うしている。LIXILの例で、「偶然ではなく意図的に」という話をしましたが、まさに社会貢献を本業に組み込んで考えていこうという事業経営のあり方なのです。

日本の「企業による社会貢献」のこれまで

ところが、上場企業のような大きい会社だと「世間良し」、すなわち公益経営はなかなか浸透しづらい面もあります。特に戦後から高度成長期を経て、バブル時代をピークに、日本は経済成長と金銭的報酬を企業と個人の目標に置いてきました。その結果誕生した現在の大企業では、「稼ぐ」ことが至上命題とも思えるほどです。


しかし今、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。開発途上国の貧困問題や食糧危機、地球温暖化や環境問題が明らかになるにつれて、利益至上主義で走ってきた大企業に冷たい視線が向けられるようになっていったからです。結果生まれたのがCSR、サステイナビリティへの流れでした。


とはいえ、これまでの企業のCSR活動は、よく見ればその本業とは関係ないことがほとんど。関係者は社内でも白眼視されたり、「ボランティアもいいけどしっかり稼げ!」という上司の一言の元に活動に参加しづらくなったり・・・と形骸化していくことも多かったようです。


しかし、CSR活動を目にする中で多くの社会人の心の中には「誰かのために役に立ちたい」という思いは確実に目覚め始めたのかもしれません。実際、内閣府の「社会意識に関する世論調査」(平成29年度)を見ると、「自分の仕事を通じて社会貢献をしたい」と考える人の割合は調査を始めた平成10年から増え続けており、全体では25.4%、中でも18~29歳(35.7%)、30~39歳(37.9%)、40~49歳(36.3%)の社会人の大半を占める層で割合が高くなっています。


この流れの中で生まれてきたのが、おざなりにされていた「世間良し」をもう一度復活させようじゃないかという動きです。これが公益経営。だから公益経営、本業で社会貢献は「三方良し」の再発見なのです。

だから公益経営はやる価値がある

最後に、「公益経営」のメリットをおさらいします。


まず1番のメリットは、企業経営の肝ともいえる「儲け」も出しながら社会に貢献し、社会問題を解決する手助けができること。加えて、社会の問題を解決する手助けをすることで、その地域に住む人たちから感謝されることもあります。そして、その感謝を目に、耳にすれば、会社で働く人たちも自分の仕事に誇りと愛着を持つようになる。「いい会社じゃない!」と株主も増え、資金調達も容易になるかもしれません。そして顧客だけでなく、日本の、世界の人たちの中にも、「あの会社、いいことやってるね」とファンを増やすことにもつながります。


社内外に会社のファンを増やすこと、これが公益経営のメリット、大きな2つ目です。顧客からも、従業員からも、世間一般からも愛され・支援される企業になれる。そうすれば評判は上がり、顧客や株主も増え、尊敬される企業になるでしょう。自然と競争力もつき、企業の永続を可能にするのです。


「情けは人の為ならず」ではありませんが、世のため人のために良いことをすれば、それは回り回って自分にも良いことになって帰ってくる。そんな、とっても日本的な考え方が公益経営とも言えるでしょう。

佐々木 希世グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)研究員

10代半ばからの約10年を米国で過ごす。帰国後、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社に勤務。その後 米系ヘッドハンターを経て、株式会社グロービスに入社。ビジネスパーソンのより良いキャリア形成や成長に携わる仕事をやりがいとしてきた。GAiMERiではAIなどのテクノロジーを使用したプログラム研究と開発、および講師業務に従事。

著書に、「『半径5メートル最適化』仕事術〜おしゃべりな職場は生産性が高い」がある。

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