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意識変革を促しながらオペレーションの課題を解決する――豊田通商の挑戦 

2018年06月07日

  • 組織行動
  • 創造
  • 変革
  • リーダーシップ
  • 実践的
  • 先進事例
板倉 義彦 グロービス・コーポレート・エデュケーション ディレクター

豊田通商はトヨタグループの総合商社である。同社が取り扱う商品は、エネルギーから食品まで多岐に渡っているが、同社の「グローバル部品・ロジスティクス本部 グローバル部品SBU(Strategic Business Unitの略称)」では、主に自動車部品を取り扱っている。世界の34カ国に158の拠点を展開し、世界各地の自動車メーカーなどに部品を供給、その物流も担っている。


グロービスは同SBUの組織改革プロジェクト(nextプロジェクト)に参加し、現実に生じている課題の解決と育成を通じた再現性を同時に目指す「On the Project Training」を実施した。2016年9月から始められたこのプロジェクトは、どのように進められ、どのような成果を生み出したのか。安達氏と課長補 伊藤勇紀氏にお話をうかがった。

1枚の提案書からプロジェクトがスタート

板倉:まずはnextプロジェクトが始まった経緯から教えてください。


安達:当時、私は上海に駐在しており、日本に帰国するタイミングでした。しかし、海外から日本を見ていると、日本でやっているオペレーション(部品の受発注などの業務)の競争力が低下しているという危機意識がありました。


また、グローバル部品のビジネスユニットが今後どういう方向に向かっていくのか、不透明だとも思っていました。


そこで、そうした問題意識を1枚の紙にまとめて上長に提出したのです。すると、当時のビジネスユニットのトップが、まずは非公式にプロジェクトを始めてみなさいと言ってくれました。


板倉:そのプロジェクトにはどんなメンバーが参加され、どんな内容のものでしたか?


安達:メンバーは、部長級の方にもアドバイザーに入ってもらい、私たち2人を含めて全体で8名ほどでした。最初は、現行オペレーションに関する問題点の提起が中心でしたが、テーマはどんどん変わっていきましたね。


グロービスは、このnextプロジェクトへの支援を依頼されたところから関与をし始めた。支援といっても、戦略コンサルティング会社のように自ら課題の分析を行って解決策を提案するのではなく、また通常グロービスが行っている企業研修のように、企業戦略やリーダーシップについてのクラスを実施したのでもなかった。2週間に1度、3時間の打ち合わせに参加して、その都度、プロジェクトに関して議論すべき論点を提示し、議論を導いていったのだ。プロジェクトメンバーが通常議論していたのは同部門のオペレーションに関してであったが、グロービスが参加してからは「そもそも、この事業が提供している価値は何か」「戦略はどうあるべきか」という観点から考えるよう促していった。


安達:「あなたたちの事業は何ですか?」という議論を、最初の頃ずっとしていたように思います。利益が大きいのは事業のどの部分か。何が強みで、なぜお客さまに使ってもらえているのか。お客さまとバリューチェーンの分析などに3カ月くらいかけて取り組んだと思います。一度ぐっと(視点を)上にあげて、そのあと下に戻して考えていった感じでした。


板倉:そのような議論をしてみて、どのような感想を持たれましたか?


伊藤:最初は半信半疑でやっていました。その先にどんなステップがあるのか分かっておらず、現在の課題に戦略がどう結びついているかも分かっていませんでしたから。何のためにやっているんだろうと思っていました。

あるべき戦略を定義し、組織改革案を提示

安達:私も最初は遠回りをしている感じがありました。オペレーションの問題を解決するための論点はもっと近くにあると思っていたので、戦略など考えるのはなぜだろうと。


しかし、そうした議論を通じて、戦略や自社の強みなどについて、皆が共通の理解を持てるようになったと思います。結局、自分たちは売り手や買い手の企業の中で、「議長」的な役割を果たしているという、皆が納得のいく認識にも到達することができました。


そうした認識をベースに、あるべき戦略を定義し、その戦略を実現するための人材を定義して、課題であったオペレーションを改革するための組織改革案をビジネスユニットのトップへ提案することもできました。

伊藤:経営幹部との話し合いの前には、(グロービスに仮説をぶつけることで)テニスの壁打ちをさせてもらっているような感じがありました。


2017年3月に組織改革案をまとめたところで、プロジェクトは次のフェーズに入った。安達氏と伊藤氏が「組織開発グループ」という新しいチームの専任となったのだ。2人は、1.次の収益の柱となる領域を探す、2.現在の営業の改革、3.オペレーションの改革の3点において、小さな成功を積み重ねていくことを目指した。そして、これら3つの活動に、ビジネスユニットの中からメンバーをアサインして取り組んだため、そうしたメンバーの巻き込みが大きな課題となった。グロービスはそれ以前と同様の形で議論に加わったが、このフェーズでは他のメンバーをどう巻き込むかも中心テーマとして議論した。


板倉:メンバーも増えましたね。各チーム10名前後だったでしょうか。このフェーズではどんなところが難しかったですか?


安達:メンバーに、プロジェクトを実施する意義を感じてもらい、主体的に動けるようになってもらうことですね。新たに加わったメンバーは通常の業務と兼務で、また自らの意思で参加したのではなく、アサインされたメンバーが多かった。変わっていくことに抵抗がある人も多かったので、多くのコミュニケーションが必要でした。


板倉:具体的には何をやりましたか?


安達:まず、当ビジネスユニットの目指すところや考え方をまとめた「SBUウェイ」を作りました。そして、なぜこれを作って、どういうつもりで書いたのか、僕たちはどう変わっていく必要があるのかを、全グループの全担当者にかなり思いを込めて話しました。


それから、プロジェクトを加速するために、主体的に動いてもらうコアメンバーも作りました。オペレーションについては、自分たちよりも現場の担当者のほうがずっと詳しいので、彼女/彼たちに自ら動いてもらう必要があったのです。コアメンバーとも徹底的に話をしました。


板倉:効果はありましたか?


安達:今では彼女/彼たちの口から出てくる言葉は、最初の頃とは全然違います。


伊藤:たとえば、SBUウェイには「定型業務をやっている人も新たな階層にチャレンジしましょう」などの記述があるのですが、コアメンバーが自ら、その際の評価項目として「本気の学び」や「成長」などを提案し始めたりしました。また、顧客にとっても、社内・社外にとっても「良い」業務だけを目指そうと言うようにもなりました。最初の数カ月で大きく変わったと思います。


グロービスサイドから見ても、メンバーの「前のめり感」は大きく違ってきた。最初はプロジェクトへの抵抗感すら滲ませていたメンバーが、改革に必要な工数の測定などに、積極的に協力してくれるようにもなったのだ。nextプロジェクトは、2017年9月にいったん報告を出し、現在も継続されている。

プロジェクトは行動への落とし込みフェーズに

板倉:プロジェクト全体として、現在の進み具合はいかがですか?


安達:未来に向けた領域に関しては、すでに具体的な行動を始めるところまで来ました。オペレーションに関しても、良い業務を通じて効率化し、お客さまの競争力拡大に貢献するということに関して、トップからも来期大きく飛躍させようと同意を得ています。やりたかったことを、個人の行動レベルにまで落とし込めているという実感があります。


板倉:これまでグロービスがプロジェクトに参加させていただきましたが、グロービスの関与がどう影響したのか、お話いただけますか?


安達:議論の中で、経営者が意思決定する上でのプロセスや論点、経営陣の思考回路をぶつけてもらったことが一番大きかったと思います。最初はその辺の立ち位置がよく分からずに、何の資料も作ってくれないし、どういうことだろう…と思っていました(笑)。


しかし、結局、自分たちのことは自分たちにしかわからない。どれだけ詳しく説明したとしても、部門のみんなの顔が見えていて、みんなの考えていることや力が分かっている我々でなければ、本当に実行できる、地に足のついた戦略は作れなかったと思います。そのためには、経営者目線で論点をぶつけてもらって、自分たちで考えるプロセスが自分たちに合っていました。最初から解決策を作ってもらっていたら、ここまでは来られなかったと思います。


伊藤:論点を投げかけられて、自分の力だけでは解を出せないので、いろいろな人に話を聞きに行ったり、いろいろな情報を集めに行ったりました。その結果、自分だけでは1しかなかったインプットを10にできた。インプットが増えたことによりアウトプットも向上し、志も高まりました。


板倉:今後お2人は何を目指していかれますか?


安達:まずはこのプロジェクトをやり切ることですね。そして、数年後にはこのビジネスが格段に飛躍している、その日を夢見ています。その時にはその中心にいたいですね。


伊藤:4月にアメリカに赴任することが決まっています。ですので、今回やったことが日本以外の場所でもできるのか、自分で試してみたいと思っています。


※文中の役職等は取材当時のものです

板倉 義彦グロービス・コーポレート・エデュケーション ディレクター

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