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投稿日:2024年12月11日
投稿日:2024年12月11日
【教員×学生鼎談】価値創造の最前線へ―「デジタル・プロトタイピング」で磨く実践力
スピーカー
- 山崎 麻里子さん
- 在校生(東京校・2023年入学)
- 小林 匠さん
- 卒業生(オンライン校・2022年入学)
モデレーター
- 難波 美帆
- グロービス経営大学院 教員
近年、テクノロジーの進化やビジネスの加速に伴い、デジタルツールやプロトタイピング技術を活用し、アイデアを具体化するスピードと精度がこれまで以上に求められています。ビジネスリーダーにとって、アイデアを具現化し、迅速に実行へ移す力は、競争の激しい現代において欠かせないスキルです。
グロービス経営大学院では、2024年7月に新科目「デジタル・プロトタイピング」を開講しました。本科目は、実際のデザインツール(FIgma※)を使用してデジタルデザインの基礎とプロトタイピングを学びます。共通のビジネス課題に対するアイデアを提案し、グループでプロトタイプを作成する実践型の授業です。最終的には各グループで完成させたプロトタイプをプレゼンテーションし、実務のプロジェクトへの応用能力を高めることを目指します。
本記事では、グロービス経営大学院の教員と実際に「デジタル・プロトタイピング」を受講された学生の鼎談インタビューを通して、この授業を受講したきっかけや学びが実務にどのように活かされるのかを詳しくご紹介します。プロトタイピングを通じて新たな価値を生み出すヒントを、ぜひご覧ください。
※Figma…UI/UXデザインに特化したクラウド型のデザインツール。リアルタイムでの共同作業が可能で、デザイナーだけでなく非デザイナーにも扱いやすい操作性が特徴。
アイデアを具現化する力が、これからの武器になる
難波美帆:近年、デジタルツールの発展により、デザイナーでなくてもアイデアを具体的な形にできるようになってきました。ビジネスリーダーにとって、アイデアを具現化できる力は大きな強みとなります。本科目は、デザインの視点から企業変革をサポートしてきた実績を持つグッドパッチ社との共同開発により実現しました。
授業では、実務に近い形でさまざまな課題に取り組んでいただきます。授業やグループワークで使用するデジタルツールは、プロのデザイナーから高い評価を得ながらも、デザインの実務経験がない方にとっても扱いやすいものです。グッドパッチ社のデザイナーが教員として授業に参加し、実践的なツールの活用方法を手元で学びながら体験できます。
すでに実務経験をお持ちの方にとっても、プロフェッショナルなデザイン会社のプロトタイピング手法を学べる貴重な機会となるのではないでしょうか。この授業を通じて、デザインの視点で仕事がどのように変わるのか、そしてプロトタイピングがコミュニケーションツールとしていかに効果的であるかを実感していただければと考えています。
難波:本日は、グロービス経営大学院で2024年7月に開講された「デジタル・プロトタイピング」の授業にご参加いただいた学生の方をお招きしています。開講したばかりの新しい科目を、お二人はどのような理由で受講しようと考えたのでしょうか。
山崎 麻里子さん(以下、敬称略):私の場合は、リユース事業の新プロジェクトにアサインされたことがきっかけです。サービス業のお客さまと一緒に、ユーザーの方との接点となるWebアプリを活用したサービスを開発することになったのです。しかし、デジタル領域のビジネスは私にとって初めての経験でした。開発会社との打ち合わせや、アプリ開発自体が初めての経験だったため、プロトタイプを通じた効果的なコミュニケーション方法を学びたいと考えていました。
小林 匠さん(以下、敬称略):これまではビジネス寄りのプロダクトマネジメントが中心で、デジタルサービス開発との関わりは限定的でした。開発をマネジメントする立場になったときに、どのような点に気をつけるべきか、課題や改善案をどのように伝えればよいのか、その方法を学びたいと考えました。
また、現在担当しているビジネスマッチング業務では、法人のお客さまから新規事業や新製品開発のお悩みや課題について、さまざまなご相談を受けています。単にお客さま同士をマッチングして終わりではなく、プロダクト開発や新規事業のアイデアに対する具体的な提案を通して、新たな価値を提供できるようになるための糸口を見つけたいと考えました。
難波:受講する前は、本科目に対してどのような期待をお持ちでしたか?お二人ともコミュニケーションに課題を感じていたように思いますが、いかがでしょうか。
山崎:主に2つの期待がありました。ひとつは、お客さまとの対話の中で、悩みや目指したいものをどのように引き出すか。もうひとつは、そのニーズを開発側にどう的確に伝えていくか、という点です。そういったコミュニケーションの方法が学べるのではないかと思い、受講を決めました。
難波:小林さんは、関わるプロダクトの幅が広がったときに、それぞれのお客さまとどのようにコミュニケーションを取ればよいのか、という課題を感じていたようですね。
小林:はい、おっしゃる通りです。また、私は金融機関で営業として、主にアカウンティングやファイナンスの領域に携わってきました。これからの銀行は、デジタルの知見を活かして効率的に業務を進めていく必要があります。そのため、「デジタル」という名を冠したこの科目に関心を持ちました。
さらに、普段の業務では触れる機会が少ないアプリ開発を実際に体験できる点も、この授業の大きな魅力でした。業務で突然アプリ開発を任された場合、プレッシャーを感じるだけでなく、初めから完璧を目指してしまい、結果として手戻りや失敗が多くなるリスクがあります。しかし、この科目を通じてそうしたリスクに気付き、対処する方法を学ぶことができました。振り返ると、期待していた以上の学びが得られたと実感しています。
実務に直結する「本質を見極める力」
難波:実際に受講してみて、ご自身の実務でどのように役立ったか、具体的なエピソードがあれば教えていただけますか。
山崎:1つ目は、授業で学んだ「オブジェクト指向※」という考え方です。当時、私たちのプロジェクトではすでにプロトタイプが完成していましたが、この視点で見直すと、多くの改善点が見つかりました。ユーザーが本当に求める価値は何か、それを効率的に提供するにはどうすればよいのかという観点で再評価した結果、アプリの設計だけでなく、実店舗の運営プロセスでも無駄を削減することができました。
2つ目は、「物語の重要性」です。私たちのサービスは環境をテーマにしており、情緒的な価値を伝えることがとても重要です。デザイン会社にアプリの世界観やロゴの設計を依頼する際、授業で繰り返し練習したストーリーボード作成のプロセスが大いに役立ちました。ユーザーがどのような体験をし、どのような気持ちになるのかを具体的に伝えることで、理想的なデザインを実現することができました。
小林:以前は営業担当として、販路拡大や取引先の紹介といったシンプルな提案が中心でした。しかし、この科目の学びを通じて、お客さまと「このプロダクトを通じて、何を実現したいのか」といった対話ができるようになりました。
とくに印象に残っているのは、本質を見極める作業の難しさです。山崎さんもおっしゃっていたオブジェクト指向で考え、核となる要素を特定し、それをお客さまとのコミュニケーションに活かすプロセスがとても重要でした。これによって、より深いレベルでお客さまのニーズを理解し、それに応える提案ができるようになりました。
※オブジェクト指向…物事を「役割」や「目的」に基づいて分解し、それぞれの要素(オブジェクト)を明確に定義する考え方。このアプローチを用いると、全体の複雑さを整理しながら、どの部分に改善が必要かを効率よく見つけ出すことができる。
難波「この科目は、いくつかのチームに分かれてグループワークを中心に進めていきます。クラスメートと一緒に学ぶ中で得られたものについて教えていただけますか」
山崎:ひとつは、クイックに最後までやり切るという考え方です。どのチームも最終日に素晴らしいプレゼンをしていましたが、とくに早い段階で方向性を定め、改善を重ねたチームの完成度は際立っていました。実務においても、自社やパートナー企業と協力する際には、限られた時間内で迅速に意思決定し、進めていくことが重要です。その点で、このチームの進め方から学ぶことは非常に多かったと感じています。
もうひとつは、グループワークでのリーダー経験です。とくにタイムマネジメントには苦労しました。次回の授業までにメンバーのスケジュールを事前に確認し、それぞれの状況に応じた役割分担を考え、強みや個性が発揮される形で進めることを心がけました。異なるバックグラウンドを持つ学生と適度な緊張感を持って協働する中で、普段の仕事の進め方や自身のリーダーシップを見直すことにもつながりました。
小林:メンバーそれぞれの時間的な余裕の違いや関わり方の違いがある中で、それぞれの熱量や状況を見ながら進めていくという、まさに実務さながらの経験ができたと思います。とくに印象的だったのは中間発表です。ひとつのビジネス課題に対して各チームが取り組む中で、徐々に本来の課題解決という目的を離れ、プロダクトの改善自体が目的化されていく様子が見られました。その結果、ゲームなど多様な面白い提案が出てきたものの、教員の方の「これは本当に課題解決につながるのか」という指摘で、大きな気付きを得ました。
難波:皆さん、最初はお客さまの課題に向き合っているのですが、次第に自分たちが作るプロダクトの改善に夢中になっていきます。その手段の目的化に中間発表で気付くという貴重な経験ができましたね。
次世代リーダーに求められる学びを身に付けよう
難波:この科目を受講するか迷っている方に、アドバイスをお願いします。
山崎:テクノベート科目というと、実務経験がないと置いていかれるのではないかと不安に感じる方もいらっしゃると思います。私自身、受講前はFigmaというツールすら詳しく知りませんでした。しかし、実務でツールを直接使わなくても、日々のビジネスコミュニケーションに活かせるエッセンスが数多く学べます。少しでも興味をお持ちでしたら、ぜひ一歩を踏み出してみてください。きっと新しい視点で世界を見ることができるようになると思います。
小林:とくに、デジタル分野に関わったことのない方にこそ受講をおすすめしたいです。デジタルに携わっていなくても、新たな気づきや視点が必ず得られます。今回はアプリ開発がテーマでしたが、得られた学びは既存のサービスや製品にも活かせます。
今の時代、新しいものを生み出すことが求められていますが、その中で「どのように物事を進めるのか」「プロトタイプを作り事業化していくのか」といった0から1を生み出すプロセスを学べるのは、とても貴重な機会になると思います。
編集後記
――アイデアを形にする力は、これからのビジネスを加速させる鍵です。「デジタル・プロトタイピング」は、ユーザー中心の視点からビジネスコンセプトを迅速に具現化し、その本質的な価値を見極めるプロセスを学べる科目です。限られたリソースで事業アイデアを磨き上げ、顧客やステークホルダーの心を動かすプロトタイプを作り上げるスキルを身に付けることができます。テクノロジーを活用し、次世代をリードする未来の自分を描きながら、この学びの一歩を踏み出してみませんか。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。
STEP.3日程をお選びください
体験クラス&説明会とは
体験クラス
約60分
ディスカッション形式の
授業を体験
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスならではの授業を体験いただけます。また、学べる内容、各種制度、単科生制度などについても詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスの特徴や学べる内容、各種制度、単科生制度などについて詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。なお、体験クラスをご希望の場合は「体験クラス&説明会」にご参加ください。
オープンキャンパスとは
MBA・入試説明
+体験クラス
大学院の概要および入試内容の
確認やディスカッション形式の
授業を体験
卒業生
パネルディスカッション
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※個別に質問できる時間もあります。
該当する体験クラス&説明会はありませんでした。
※参加費は無料。
※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。
※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。
※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。
スピーカー
山崎 麻里子さん
在校生(東京校・2023年入学)
新卒で専門商社に入社後、新規事業開発部で資源循環に関するビジネスを担当。大手スーパーと協働したリサイクルプロジェクトでは、プロジェクトリーダーとして川上から川下までのステークホルダーを巻き込みながら新たな仕組みづくりに取り組む。また、リユース事業の新プロジェクトにもアサインされ、2つの事業を推進中。資源循環の現場に根ざした実務経験を活かし、環境課題解決に向けた新たなビジネスモデルの構築を目指している。
小林 匠さん
卒業生(オンライン校・2022年入学)
新卒で銀行に入行後、法人営業や融資業務を通じて法人顧客向けの金融ソリューションを提案。その後、本部へ異動し、非金融ビジネスの推進やプロダクトマネジメントに携わる。2024年4月からはビジネスマッチングの領域を担当。金融グループでは解決できない顧客課題に対し、顧客間の連携による解決策を提案し、事業発展を支援する取り組みを進めている。
モデレーター
難波 美帆
グロービス経営大学院 教員
大学卒業後、講談社に入社し若者向けエンターテインメント小説の編集者を務める。その後、フリーランスとなり主に科学や医療の書籍や雑誌の編集・記事執筆を行う。2005年より北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット特任准教授、早稲田大学大学院政治学研究科准教授、北海道大学URAステーション特任准教授、同高等教育推進機構大学院教育部特任准教授を経て、2016年よりグロービス経営大学院。この間、日本医療政策機構、国立開発研究法人科学技術振興機構、サイエンス・メディア・センターなど、大学やNPO、研究機関関係の非営利セクターの新規事業の立ち上げを継続的に取り組んでいる。科学技術コミュニケーション、対話によるイノベーション創発のデザインを研究・実践している。