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投稿日:2024年06月12日
投稿日:2024年06月12日
Waris・田中美和氏と考える人的資本経営のリアル―自分らしいキャリアのつくり方
昨今、AIやテクノロジーの進化など社会変動は過去に例を見ないほど激しくなっています。この激動の「テクノベート*時代」を、私たちビジネスパーソンはどのように捉え、何を学び行動していく必要があるのでしょうか。
「テクノベートセミナー」では、第一線で活躍し次代を築いているビジネスリーダーをお招きし、テクノベート時代を生き抜くための様々な知見をお伺いします。ビジネスパーソンとして必要なスキルとは何か、テクノロジーを活用し社会にイノベーションを起こすにはどう行動することが望ましいのか。これからの学びやキャリアに関わるヒントをお届けしていきます。
第3回のテクノベートセミナー「自分らしいキャリアの作り方 -人的資本経営における"働く個人と企業"のリアル-」には、田中 美和氏(株式会社Waris)をお招きしました。DE&Iの最新事例から見える「企業」としての向き合い方や、「働く個人」として自分らしいキャリアを作るためのヒントについても詳しくお聞きしました。
本記事は当日の書き起こしです。動画版はこちらよりご覧ください。
*テクノベート:テクノロジー(Technology)とイノベーション(Innovation)を組み合わせたグロービスの造語。詳しくはこちらをご覧ください。
田中 美和氏(株式会社Waris共同代表)
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 理事。国家資格キャリアコンサルタント。
日経BPにて雑誌「日経ウーマン」の編集記者として女性のライフキャリアを多数取材。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うために独立し、フリーランスのライター・編集・キャリアカウンセラーとしての活動を経て、2013年多様な生き方・働き方を実現する人材サービス企業 株式会社Warisを創業し共同代表に。フリーランス女性と企業との仕事のマッチングやリスキリングによる女性のキャリア支援に取り組む。最近では女性役員紹介事業を通じて意思決定層の多様性推進にも尽力。創業10年でベネッセグループ入り。キャリア/ダイバーシティ/フリーランス/起業などをテーマに講演・執筆も。近著に『自分らしく働くための39のヒント』。5歳女の子のママ。
林 恭子(グロービス経営大学院 教員)
米系電子機器メーカーのモトローラで、半導体、携帯電話のB2B事業に携わった後、ボストン・コンサルティング・グループへ。HRマネジャーとしてプロフェッショナル・スタッフの採用、能力開発、リテンション・プログラム開発、ウィメンズ・イニシアチブ・コミッティ等、幅広く人材マネジメントを担当。グロービスではマネージングディレクターとして人事を含む管理部門全体を統括し、働きがいのある企業としての各賞の受賞へ。現在は、組織・人事研究グループのリーダーとして教育プログラム開発や、研究・執筆、リーダーシップ、ダイバーシティ、パワーと影響力、キャリア開発、パーパス経営等の領域を中心にグロービス経営大学院での講義、企業研修、講演などを多数務める。
イートアンドホールディングス、萩原電気ホールディングス、及びコーア商事ホールディングズ(何れもプライム上場)社外取締役。学校法人柳心学園 理事。公益財団法人首藤奨学財団 評議員。経済同友会会員。国際戦略経営研究学会 理事。組織学会、産業・組織心理学会、経営行動科学学会員。
林恭子:御社がプロフェッショナル女性と企業とのマッチングサービス「Warisプロフェッショナル」を立ち上げて10年ほど経ちました。その間、女性の働き方やジェンダーギャップに関して、どんな環境変化があったと感じていますか?
田中美和氏(以下、敬称略):この10年で本当に大きく変化して、女性が圧倒的に働き続けやすくなったと感じます。2013年の創業当時は4割以上の女性が第一子出産を機に仕事をお辞めになる状況で、ライフとキャリアの両立が難しく、働く選択肢も限られていました。そこで私たちは、働く時間や場所、働き方について、「もっと多様な選択肢をつくりたい」という思いでWarisを立ち上げ、まずはフリーランスで働きたい女性と企業とのマッチングをはじめました。
当時は働く女性の数が30代で一気に減ってしまう状況で、世代別労働人口グラフの形から「M字カーブ」と呼ばれていましたが、それも今はほぼ解消されつつあります。それほど、時短勤務やテレワークなどの環境が整い、人的資本経営の考え方も広がり、女性活躍推進法や働き方改革関連法案といった法整備も進んだわけですね。多様な個人が能力発揮しやすい環境が整ってきたという意味で、躍進した10年だったと感じます。
林:ここ10年で目標値の明確化や情報開示も進みました。
田中:昨年は上場企業を対象に人的資本情報の開示も義務化されましたね。女性管理職の比率、男女の賃金格差といった情報の開示によって、上場企業または上場を目指すスタートアップ企業の経営層が今は本気になっていると感じます。
コロナ禍のテレワーク拡大で管理職への意欲を高める女性も
林:2019年末ごろからのコロナ禍は、働き方、または個人と企業の関係にどんな影響をもたらしたとお考えでしょうか。
田中:企業にも個人にも大きな変化があったと思います。企業では緊急事態宣言などをうけてテレワークが拡大し、一般的になりました。今は若干揺り戻しが起きているとの声もありますが、直近の東京都発表でも都内企業は4割強が週3日以上テレワークを実施しているとのデータがあります。一昔前は テレワークを交えて働きたいとなればフリーランスしか選択肢がない状況でしたが、今は中小企業から大企業までテレワークが珍しくなくなっています。
個人のほうも、テレワークで往復の通勤時間がカットされ、使える時間が増えたことで、「あ、こういうことなら」と、意識が変わって副業やフリーランスといった働き方に興味を持つ方が増えました。個人も企業も互いに自律性を高めた働き方へ変化してきたと感じます。
女性活躍という意味でもプラスでした。是非はさておき、実態として家事・育児を主体的に担う女性は多いですが、そうした方々もテレワークの活用でライフとキャリアの両立がしやすくなった、と。ある企業さんではコロナ禍にテレワークを導入したことで、「管理職になりたい」と手を挙げる女性が増えたという話を聞いたこともあります。
林:人的資本経営の重要性が高まっている今、個人の力や価値を引き出すため、組織には何が求められているとお考えでしょうか。
田中:まずはフレックスタイムやテレワークによって働く時間と場所の自由度を高め、多様な個人が能力発揮しやすい環境をつくること。そのためには組織文化にまつわる一人一人の意識も大事です。その意識にアプローチすべく、ダイバーシティーやアンコンシャスバイアスに関する研修などを取り入れる企業さんも今は増えてきました。
また、今は社員一人一人の自律性というか、「キャリア自律」「キャリアオーナーシップ」を高める研修やトレーニングを行う企業も増えています。さらに言えば、多様性という意味ではジェンダー以外に年齢や地域の差もあります。例えば地方に住む人材と首都圏企業とのマッチングもあれば、逆に首都圏人材を地方の企業がリモートで活用する事例も増えてきました。
林:今後は人材市場が売り手市場となっていく中、企業は個人に選ばれる職場にならなければいけなくなってきたと感じます。
田中:現在の出生数は年間およそ75万人。我々の親世代の半分以下です。今は限られた人材を各社が奪い合う圧倒的売り手市場であり、個人が企業を選ぶ時代。企業はいかに個人から選ばれる存在になれるかが勝負どころとなります。今は世代間の差も大きいですよね。私は今40代ですが、我々世代の価値観やキャリア観と、今の20代のそれにも大きな差があると感じます。
林:2021年に女性役員の人材紹介サービス「Warisエグゼクティブ」をスタートされた背景や、これからの組織に求められるエクゼクティブ人材についてもお伺いできればと思います。
田中: 2020年ごろから、「女性の社外取締役を探しています」「女性で監査役や役員ができる方はいませんか」といったお問合せを頻繁にいただくようになってきたという背景があります。コーポレートガバナンスコードが2018年に改訂され、取締役会についてジェンダーや国籍でも多様性を考慮すべきといった内容が記載されるようになったあたりから、企業意識も変わってきたと感じますね。
また、私たちの想いもありました。近年は働き方が多様化してきたものの、女性管理職比率は昨年時点で 12%台。10年で3%程度しか伸びていません。これは社会のどこかにまだ偏りがあるのではないか、と。そこで、もっと自然な形になるように 意思決定層に多様性が必要だと考え、そのお手伝いとして女性役員紹介サービスをはじめました。
エグゼクティブを目指す方々には、経営経験か専門性、もしくはその両方を意識していただきたいと思っています。具体的には、ある程度の規模の会社で執行役員以上のご経験を持つこと。経営に対し監督や助言をなさる立場ですから、経営者ないし経営に近い立場で経験を積むということをしていただけるとよいのではないかと考えています。
あとはコアスキルや専門性ですね。財務ですとか、ダイバーシティーに関するノウハウですとか、資格の有無にとどまりません。ご自身の核となるスキルが何かを意識してキャリアを積んでいただきたいと考えています。
意思決定層に女性が増えれば管理職比率も変化する
林:女性管理職比率がなかなか上がらない理由として、「意思決定層に女性が増えないので大きな地殻変動が起きないのでは」という声もあります。
田中:意思決定ボードに女性が入る効果は非常に大きいと思いますね。社内の女性に対する大きなメッセージになります。弊社がお手伝いをして意思決定ボードに女性が入った企業では、女性従業員の方々から、「『ひょっとしたら自分たちも意思決定の立場に行けるのかも』と、すごく勇気付けられた」といった声をいただきました。
逆に、そこがアンバランスですと、機関投資家の方々に「組織や会社に歪みがあり、企業パフォーマンスにも悪影響が出るのでは」といった見方をされることもあります。ですから、最近は上場企業、または上場を目指すスタートアップ企業も、ジェンダーイクオリティやダイバ-シティを重要な指標にするケースが増えてきました。
林:ジェンダーに限らず多様な人々がよりよいキャリア、働き方、生き方を実現するために必要なポイントについて、管理職や経営者の立場で考えるべきことと併せて伺いたいと思います。
田中:まず、年金受給開始年齢引き上げや企業の定年廃止といった動きもあり、個人としては70歳ぐらいまで働く心づもりでいたほうがよいのかな、と。となると、20歳前後で働きはじめてから50年ほど。50年を1社で勤めあげるというのは今後難しくなると思います。では、その50年をどう生き抜くのか。私は「自分のキャリアの主導権を自分で握る」という表現をしていますが、キャリアをご自身でデザインする意識を一人一人が持つことが重要だと感じています。
そのためには自分を知ることが大切です。自分の強みや価値観は何か、仕事に何を求め、何をしているときに自分は充実感を得るのか。それらを知った上で、自分がワクワクできる状態を実現していくことが、50年にわたる職業人生をよりよいものにしていくのではないでしょうか。
一方、管理者や経営者の立場ではどうか。今は個人が企業を選ぶ売り手市場で、かつジェンダーや世代でも語り尽くせないほど個人の価値観が多様化しています。ですから、目の前にいる個人が何を望んでいるか、丁寧に把握する意識を持つなどして、一人一人が能力発揮しやすい環境をつくること。制度を含め、多様な個人の考えを吸い上げやすいコミュニケーションの仕組みをつくり評価を行うなど、多様性を念頭に置いた組織づくりが重要になると感じます。
すぐに実現できることではないので、中長期で組織風土や文化を変えるためにも、多様性を力に変えるというメッセージをトップが打ち出したり、人事制度を変えたりすることも必要だと思います。また、コミュニケーション手法として、例えば1on1だったり、組織のタテ・ヨコ・ナナメの関係性を豊かにしていくことも鍵になるのかなと、私自身も組織を運営していて日々感じます。
林:今は人生100年時代、大介護時代もやってくる中、働き方の柔軟性や多様性はシニア世代にとっても重要になると感じます。
田中:実際、介護と仕事との両立で悩んで、私どもにご相談にいらっしゃる40代や50代の方は数多くおられます。とくに40代や50代は企業でも中核として経営に近いポジション、または管理職になっている年代ですので。
林:テクノロジーの発達で働き方が大きく変わると予想される今後、個人にはどんな学びが必要になるとお考えですか?
田中:慶應義塾大学で教鞭を執っておられた高橋俊介先生は数年前、「スキルというものは10年ほどで陳腐化する。テクノロジーの進化で、その傾向はさらに強くなると思う」とおっしゃっていました。今まさにその状態ではないかと感じます。だからこそ今は自身のスキルや知識を次々アップデートする必要があるのだと思います。
キャリアに活かす上では、ご自身が「こうありたい」と考えるキャリアから逆算して学びを選ぶことが重要だと考えています。「今はマーケティングの仕事をしているが、データサイエンティストになりたい」という方でしたら、マーケティングのお仕事をしながらデータサイエンス領域を学び、実務で取り入れていくということが求められるのではないでしょうか。
林:田中さんは昨年、著書『Live My Life 自分らしく働くための 39のヒント』を出されました。まさに「自分の人生のオーナーになる」ということなんですね。
田中:自分を誰よりも知っているのは自分ですから、自身でどんなキャリアを歩みたいのか考え、実践していただくことが大事なのだと思います。そのためにどのような行動をすべきか。その考え方やヒントを本にまとめさせていただきました。自分らしい人生は、どなたでも、今この瞬間からつくることができます。「『自分を知る』『自分のことを考える』というのは怖いし大変な気がします」という方もいますが、とてもワクワクすることなので、ぜひ前向きに、自分がどうなりたいかを考えていただきたいと思っています。
林:自分の限界を決めず常にアップデートして、変わり続け、成長し続けることができると信じられるのは素敵なことですよね。
田中:そうですね。弊社はデジタルスキルを学んで転職する方の支援も行っていますが、皆さま、「学び続けることが自分の自信になる」とおっしゃいます。学んでいるということは、少しでも前進していて、昨日の自分より成長しているということですから。
前職の雑誌記者を含めて20年以上キャリアにまつわる仕事をしてきた中で私が感じたのは、キャリアまたは自分に自信がないという方が圧倒的に多いということ。体感値で6~7割の方が「自分には取り柄や強みがないのでは」と思っているんですね。ただ、そこで同時に感じるのは自分のことを知らないケースもあるという点です。だからこそ、学び続けることでそこを突破していけるのではないか、と。学びによって自分を知り、前進し続けることが自信や自己肯定感、そして幸福や充実感にもつながるのではないかと考えています。
視聴者:出産を経て妻が会社を辞めました。家族との時間を保ちながら収入を得る方法を模索している妻に、何か助言をいただければと思います。
田中:今は正社員でもリモートワークを交えて就労できる企業も増えていますし、フリーランス、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど、雇用の選択肢も多様化してきました。ですから、ゼロベースで何をしたいのかを考えて、ご自身に最適な働き方を選んでいただきたいですね。そこで選んだ働き方をずっと続ける必要もありません。一昔前は「一度フリーランスになると会社員に戻れないのでは」という心配もあったと思いますが、今はフリーランスを経て組織に戻る方も多いです。
視聴者:ジェンダーに限らず、どんな属性の方でもいきいき働くためのヒントをいただきたいです。
田中:ダイバーシティー=ジェンダーではありませんが、現状はどうしても、とくに日本では賃金格差などのジェンダーギャップが如実に表れています。ですから、まずはその課題解決に取り組む企業が多いのかなと思います。その上で、例えば今は男性の育休にも関心が高まっていますし、男性の方を含めて育休とキャリアの両立などについて考えるセミナーや勉強会、あるいは社内コミュニティを立ち上げる企業は増えてきました。外国籍の方を含め、多様なニーズに応じてやっていっていただけるといいのかなと思います。
視聴者:自分自身を知るための内省はどのように行えば良いのでしょうか。
田中:先ほどご紹介した著書でも具体的方法を紹介していますが、ご自身の強みを明らかにするような診断ツールは有料無料に関わらず世の中にいろいろあります。ご自身の強みを見える化する「クリフトンストレングス」という診断テストや、大学や企業の研修で使われる「ライフラインチャート」等々。後者は、ご自身の人生について、横軸に年齢を、縦軸にそのときの充実度を取って、振り返っていただくという簡単な自己分析で、紙とペンがあればどなたでもできます。そうしたツールも使いつつ、自身を振り返る機会や時間を意識的に持つことが大事だと思います。
あと、内省には他者の目線を入れることも大切です。私が開催するキャリアに関するワークショップ等では、グループワークを行って皆で振り返りを共有しつつ、「田中さんの強みってこういうところでは?」と、互いに指摘し合う時間もつくります。そうすると皆さん、「あ、私の強みってこういうことかもしれない」となったりするので。オンラインで手軽に受けられるコーチングやキャリアカウンセリングのサービスを活用するという考えもありますね。
視聴者:人的資本経営について、社内制度や採用制度の変化等、情報開示以外に何か具体的施策の事例がありましたら伺いたいと思っています。
田中:最近は、女性向けのリーダーシップに関するトレーニング、または女性役員の登用や採用についてご相談をいただく機会が増えてきました。女性管理職ないし管理職候補を社外から積極採用したいという企業も増えています。そこで、企業と管理職候補女性とのミートアップの場をつくり好評をいただいたこともあります。そう考えると、この10年で3%増にとどまっていた女性管理職比率は、今後5~10年でかなり大きく変化するのではないかと期待しています。
視聴者:妻が仕事に復帰したいと考えたとき、夫はどのようにサポートすれば良いでしょうか。
田中:まずは育児・家事について、手伝うのでなくシェアするという我が事意識を持つことが力強いサポートにつながると思います。あと、ご家庭の中だけで全て解決するのも難しいので、ご親族または家事育児関連サービスのサポートもご活用いただくのがよいと感じますね。
人材紹介の仕事をしていますと、「嫁ブロック」「夫ブロック」という言葉をよく聞きます。転職や独立を目指す段階でパートナーの方に「そんなことやめときなよ」とブロックされてしまう、と。やはり心配なんですね。転職や独立といった話を突然されると「いや、ちょっと待って」となってしまう。ですから、ぜひパートナーの方とは日常的にキャリアのお話をしていただきたいと感じます。
同じ志を持つ仲間とともに学びを深めよう
企業の意識改革にはトップのコミットメントが不可欠
視聴者:多様な個人の力を引き出すための意識変革で壁になり得る点を、それを乗り越えるためのポイントと併せて伺いたいと思っています。
田中:まずは会社として本気で取り組むというトップのコミットメントが重要になると考えています。もちろん、現場で従業員の方々をマネジメントしている中間の管理職の方々にも本気で取り組む意識を持っていただく必要があります。そのうえで、一人一人のメンバークラスの方々も含め、どこから意識改革するのか。メンバークラスや管理職層から着手するのか、それとも同時にやっていくのか。企業の規模感やスケジュール、予算などに応じて進める形になると思います。
いずれにせよトップのコミットメントが重要な鍵なので、経営者層がそこに大きな関心を持っていない場合、どうやって巻き込むかというところから考える必要があると感じます。例えばトップの方が興味を持ちそうな外部有識者の方に幹部向けの講演をしていただくなど、外部からインプットするのもひとつの手ですね。あるいは競合他社の例を示し、「採用ブランディングという意味でも多様性への配慮が重要です」とお伝えすることで、「じゃあ、うちも」となることもあると思いますし。
視聴者:40代や50代の育成側が自分たちの「当たり前」を押しつけず、20代の方々の感覚を生かしつつも学んでいってもらうために、どのような考え方をすべきでしょうか。
田中:組織で自分らしく働いてもらうためにどうすべきかというお話であるとも思いますが、まず個人には個人のウィルや意思があり、企業には企業で個人に期待することがありますよね。私としては、その 2つが重なる 面積を広げることが大切だと思っています。
ですから、マネジメント側は「会社はあなたにこういう役割を期待している」と明確に伝える一方、個人のウィルや意思もきちんと拾いあげていく。1on1などのコミュニケーションから非公式のランチや飲み会といった機会まで活用し、彼ら彼女らの意思を活かす形で業務をアサインすることが重要ではないでしょうか。逆に、個人の側もウィルや意思を自分の中にとどめず、「こういうことに興味・関心があります」「この会社でこういうことしたいです」と、発信する必要があると思います。
今は従業員のリスキリングに取り組む企業も多いと思いますが、個人の方にいろいろ伺うと、「リスキリングしろと会社に言われるけど、やる意味が分からない」と言う方もいて、「もったいないな」と。お金と時間をかけても期待値が伝わらず、ご本人のフラストレーションになってしまうこともあるので、そこは個人側もマネジメント側も意識してコミュニケーションを密にしていただきたいです。
視聴者:もしデジタル系のスキルに興味を持てないという方がいた場合、どのように学んでいただけばよいでしょうか。
田中:スキルの内容にもよりますが、デジタル系のリスキリングには効率化やスピードアップなど、現在の業務にプラスになる学びが多いと感じます。ですから、学び自体に興味がなくても、その活用によって成し遂げられることや実現できることに興味・関心を見いだしていただけると、学ぶ意義も感じられるのではないでしょうか。
林:グロービス経営大学院ではエグゼクティブMBAを2025年に開始します。本プログラム、またはエグゼクティブMBA人材に期待する点がありましたら教えていただければと思います。
田中:変化が激しく、新しいテクノロジーが次々出てくる時代にあって、グロービスは本当に重要な学びの場になると感じます。学ぶというのは孤独な作業ですし、ひとりでは学び続けられず挫折してしまう方がいるかもしれません。その点、仲間の存在は学びを継続し、成果につなげる上で大変重要ではないかな、と。同じ志を持つ仲間とともに学ぶグロービスのような場所で、横の関係が精神的にも支えとなり、学ぶことに意識が向いて、さらには仲間からも学んでいくというか。仲間に質問したり、教えたり教えられたりする関係も生まれ、そのなかで学びがさらに深まっていくと思うんですね。志高い仲間との出会いがあるという点も、グロービスのエグゼクティブMBAが持つ魅力のひとつになるのではないでしょうか。
林:最後に、自分らしいキャリアを築くために学ぼうと思っている、あるいはすでに学びはじめているビジネスパーソンの皆さんに、田中さんからアドバイスをお願いできればと思います。
田中:アジアの中で日本は最も「大人が学んでいない」というデータもあるほど、学び続けている方が少ないという状況があります。しかし、学びは、自身の市場価値を高める上でも有益なこと。学ぶことが、よりよいキャリアづくりにも、自分らしく生きることにもつながるのではないかと考えていますし、その意味では私自身も学び続けていきたいと思っています。
執筆:山本 兼司
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