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投稿日:2024年01月26日  更新日:2024年04月18日

投稿日:2024年01月26日
更新日:2024年04月18日

管理会計とは?財務会計との違いとその目的を解説

大島 一樹
株式会社グロービス
ブランディング&マーケティング・コミュニケーション本部
書籍・GLOBIS学び放題×知見録編集部 マネジャー
管理会計とは、社内の経営管理に使う会計のことを指す総称です。さまざまな形の管理会計手法(ツール)があり、企業の規模、業種等によって使われる頻度や場面は異なります。

財務会計についてある程度習得したら、次のステップとして身に付けたいのが「管理会計」です。トップから現場のリーダーに至るまで、ビジネスで行われる大小さまざまな意思決定の背後には管理会計があります。一従業員の立場から見れば、管理会計に詳しくなることで「なぜ自分の会社ではこうしているのか」について、より深く理解することができるのです。

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財務会計とは?管理会計との違いや目的を詳しく解説

管理会計とは何か?

管理会計とは、その名の示すとおり、社内の経営管理に使う会計のことを指す総称です。後述のようにさまざまな形の管理会計手法(ツール)があり、企業の規模、業種などによって使われる頻度や場面は異なります。企業の「何を」管理するかについては、多くは「費用」を管理しますが、活動そのもの、部門(社員)の貢献度などを対象とすることもあります。

管理会計の狙い・目的

管理会計の目的は、究極的には売上や利益の成長を通じて企業価値を高めることです。もう少し分解すると、より正確で迅速な意思決定、計画・実態把握・効果測定を通じた経常的な業務管理、組織に対して戦略を的確に実行するよう仕向ける動機付けなどが挙げられます。それぞれの狙い・目的に応じた管理会計手法がありますので、解決したい経営課題に沿って適切な手法を用いていくことが重要です。

管理会計の業務

①予算の管理

「予算」は、多くのビジネスパーソンになじみのある管理会計手法でしょう。企業が経営ビジョンや戦略に基づき、売上や利益等の財務数値の目標を設定するものです。全社-部門、中長期-短期(月次など)とさまざまなレイヤーの予算があります。

予算策定の過程を通じて必要な資源がわかる、期間中の進捗・達成状況が分かり日常業務の優先順位をつけやすくなる、従業員間のコミュニケーションのベースになる、実績と予算との差異を分析して問題点の発見・解決につながる、といった効果が期待できます。

②原価の管理

自社の製品やサービスを一単位生み出すのにいくら費用がかかっているのか把握・管理することを、原価計算、原価管理と呼びます。製品・サービスがある程度安定して売れ続けている状況下では、原価を望ましい水準に管理することが中心的な経営課題と言えます。製造業で伝統的に発展してきましたが、サービス業でも考え方は同様です。

原価管理においては、対象製品の売上や操業度に比例して費用がかかるか否か(変動費と固定費)、製造過程にかかる費用と判定できるか否か(直接費と間接費)で費用を分類することが大きな論点となります。

③資金繰りの管理

経常業務を円滑に進めるために重要なのが、資金繰りの管理です。キャッシュの収支について、月次や日次といった頻度で金額とタイミングを把握し不足が起きないようにします。多額の投資があれば、それに先立って調達を計画する必要が生じますし、逆に一定以上のキャッシュが余るようであれば、何らかの運用を考えるべきと言えます。

④経営の分析・意思決定

上記のほかにもさまざまな経営課題について分析・意思決定するための手法が存在します。たとえば、「損益分岐点」は変動費・固定費の区別に基づいて「いくら以上の売上ならば黒字になるか」を把握するものです。

また、企業全体の費用を部門に配賦するなどして部門ごとの損益を見る手法は、複数のビジネスを進める企業で部門ごとの目標管理や業績評価のためによく用いられます。必ずしも財務数値に限らず、顧客満足度や解約率、離職率など経営に役立つ指標(こうした指標をKPI:Key Performance Indicators と呼びます)を設けて管理していくのも、広い意味での管理会計と言えます。

管理会計と財務会計の違いとは?

財務会計は、自社の経営状態を数値化し、投資家や銀行など外部に向けて報告するのが目的であり、報告には各国の会計基準に従うことが求められます。管理会計の考え方のベースには、たとえば製造原価や販売費・一般管理費のように、財務会計の用語や概念が用いられていることが多く、管理会計をよく理解するには、まずは財務会計について一通りの知識を得る必要があります。

そもそも財務会計とは?

管理会計と対になる用語として財務会計があります。財務会計は、自社の経営状態を数値化し、投資家や銀行など外部に向けて報告するのが目的であり、報告には各国の会計基準に従うことが求められます。

管理会計の考え方のベースには、たとえば製造原価や販売費・一般管理費のように、財務会計の用語や概念が用いられていることが多く、管理会計をよく理解するには、まずは財務会計について一通りの知識を得る必要があります。

管理会計は義務ではない

財務会計は、そもそも決算書類を作成し対外的に報告すること自体が法律で義務付けられている上、その様式や処理方法にも細かくルールが定められています。これに対して管理会計は、自社の経営をうまく行っていくために任意で設けるものです。手法それぞれにつき一般的なセオリーはありますが、それを自社の業務に合わせて役立つやり方にアレンジしていくことが重要となります。

管理会計の対象は自由

たとえば、製品を作る費用を管理するために、ある企業では伝統的な原価計算の手法が効果的な一方、ある企業では間接費が大きな割合を占めるためABC(活動基準原価計算)的な手法の方がフィットする、というように自社の特徴によって効果的な管理会計手法は異なります

企業によっては、費用に管理の手間を投下するよりも売上を伸ばすための活動を細かく見る方が適しているかもしれません。このように、業務のうちのどの部分を、どの程度の頻度や厳密さをもって管理していくのか、経営者の腕の見せ所と言えます。

管理会計のメリット

自社のビジネスの肝と言えるKPIを見極め、それを的確に管理する手法を開発すると、従業員の意識が部署や階層を越えて集中し、PDCAのサイクルがきれいに回って益々経営が効率化されるという好循環が生まれます。管理会計は全社的に適用される場合が多いだけに、効果的に運用されるときのメリットが大きいのです。

管理会計のデメリット

上記のメリットは裏返すと、自社の実情にそぐわない管理会計手法が漫然と運用されたときのデメリットも大きいことを意味します。たとえば、かなりの手間をかけて毎期予算を作成するのに期末には未達なのが常態化してしまう、改善効果の小さい項目に過度に管理の手間をかけてしまう、大きなブレの出やすい項目があるのに管理会計で捕捉されていない、といった事態に陥らないよう、注意が必要です。

「グロービス経営大学院」でビジネスに必要なスキルを身に付けよう

上記のとおり、企業経営における管理会計の基礎知識を見てきました。ビジネスリーダーを志す人にとって、管理会計の重要性が理解できたことと思います。

では、どのように学べば、効率よく管理会計の知識や思考が身に付くでしょうか。主に3つの習得方法があります。

①書籍で学ぶ
書店には、初学者にとって手に取りやすいさまざまな種類の書籍が並んでいますので、まずは興味に沿ったものを読んでみましょう。例えば、『改訂4版 グロービスMBAアカウンティング』など、実践に役立つよう、事例を交えた解説が豊富な書籍がおすすめです。

②動画で学ぶ
最近は、無料や安価でビジネススキルについて解説する動画も増え、映像を通じて学ぶビジネスパーソンが増えています。効率的に知識をインプットできる一方で、書籍と同様に基本的に受動的な学びのため、知識を定着させるには繰り返し反復して学ぶ努力が必要なのですが、それを行わずに「学んだつもり」になってしまうこともあります。

③ビジネススクールでケースをもとにディスカッションをして学ぶ
管理会計を集中して学べる講座を受けるのも方法のひとつです。「使える」学びを手に入れたいのであれば、より現実に近い設定の演習課題や、経営判断の論点を抽出したケースを元に、実際に手を動かして計算し、その解釈や判断について、他者とディスカッションする形式の講座を選ぶのがよいでしょう。ビジネスで成果を出すためには、以下の4つのポイントを押さえなくては、効率的に仕事で活かせる学びになりません。

①知識をインプットする
②知識をつかいアウトプットする
③アウトプットに対し他者からフィードバックを受ける
④フィードバックを踏まえて、自分の思考を改善する

グロービス経営大学院でも、さまざまな人とディスカッション形式で学べる管理会計に関連する講座を用意しています。こちらの講座では、基本的な役割、準備、現場で意識すべきことなど再現性のある実践的な考え方やスキルを学ぶことができます。

詳しくはこちら:アカウンティングII(管理会計) 講座詳細

<こんな方におすすめです>
会計データに裏付けられた意思決定と組織運営能力を身に付けたい方、ビジネスリーダーを志す方

まとめ

管理会計を適切に行っていくことは、日々の業務の管理でもあり、企業の戦略的な舵取りでもあり、まさしく経営そのものと言えるでしょう。現在マネジメントに携わる、また将来マネジメントを目指すビジネスパーソンにとって、必須の知識なのです。ぜひ学び、そして実践の中で使いこなしていきましょう。

グロービス経営大学院の「アカウンティングII(管理会計)」に興味を持たれた方は、ぜひ「体験クラス&説明会」にご参加ください。グロービス経営大学院の授業の特徴や提供科目の内容、キャンパスライフなどについて詳しくご案内しています。

体験クラス&説明会日程

体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。

「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。

STEP.1参加方法をお選びください

ご希望の受講形式と同じ形式での参加をおすすめしています。

STEP.2参加を希望されるキャンパスをお選びください

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絞り込み条件:

  • 11/21(木) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

  • 11/30(土) 13:00~16:00

    オープンキャンパス

    開催:オンライン(Zoom開催) ※体験クラス・卒業生スピーチあり
    本科(MBA)への進学や入試への出願を検討している方向け

  • 12/5(木) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

該当する体験クラス&説明会はありませんでした。

※参加費は無料。

※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。

※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。

※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。

大島 一樹

株式会社グロービス
ブランディング&マーケティング・コミュニケーション本部
書籍・GLOBIS学び放題×知見録編集部 マネジャー

東京大学法学部卒業後、金融機関を経てグロービスへ入社し、思考系科目の教材開発、講師などに従事。現在はブランディング&マーケティング・コミュニケーション本部にて、書籍・GLOBIS学び放題×知見録・グロービス経営大学院のオウンドメディアの企画、執筆、編集を担当する。共著書に『MBA定量分析と意思決定』、『改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング』、『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』(以上ダイヤモンド社)など。公式X:https://x.com/kazu_ct