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投稿日:2023年10月24日
投稿日:2023年10月24日
ステークホルダーたちとGLOBIS「らしさ」で決めたロゴ 次の30年へ――Takram×GLOBIS ブランドプロジェクト座談会
- 田川 欣哉
- Takram Japan株式会社 代表取締役/ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 名誉フェロー
- 山口 幸太郎
- Takram Japan株式会社 アートディレクター, デザイナー, ディレクター
- 清水 万里合
- Takram Japan株式会社 アートディレクター, グラフィックデザイナー
- 井上 陽介
- 株式会社グロービス マネジング・ディレクター
- グロービス・ブランド・プロジェクト メンバー
GLOBISは10月24日(火)、創業以来使用されてきたコーポレートロゴの刷新を発表した。これを記念し今回は、プロジェクトを共同で進めたデザイン・イノベーション・ファームTakram(以下Takram)の方々を招き実施された座談会の模様をお伝えする。
前編では、ロゴ刷新に至った理由、社会や企業の転換期とブランドの関連について整理した。後編ではプロジェクトのプロセスを振りかえり、GLOBISの各事業から集まったプロジェクトメンバーが各場面で抱いていた率直な想い、そして今後の展望について語る。(聞き手:GLOBIS広報 土橋涼)
編集部作成
Takram社作成の図を用い、編集部作成
吉崎(GLOBIS デザイナー):文字もカラーもスペースも、すべての要素について議論しました。GLOBISはサービスやプロダクトが多いので、それぞれに展開した時にどうなるのかの検証には特に時間がかかったと思います。
非常に面白かったのは、多くの観点で議論する中で、最初は意見が異なっても上手くチューニングされ、最後は揃っていく感覚があったことです。普通はデザイナー同士、違う意見の人がいればバチバチにやり合ってもおかしくない。
ですが柔軟に対話し、まとめ上げていくことができたのは、はじめにコアとなるものが決まっていたからこそだと思います。こうした成功はTakramさんと組んだからこそで、デザイン面のみならず進め方についても学びの多い経験でした。
――その後、「最終的にステークホルダーによる投票で決定する」というプロセスがあったことは、本プロジェクトのユニークさのひとつではないでしょうか。
田川:以前、とあるスポーツのクラブのリブランディングに関わった際には、10万人のファンの意見を聞かずにクラブのスタッフだけで軽々しく変えてはならないという議論をし、ファンの皆さんからパブリックコメントを2回ほど集めました。これはいいプロセスだったと振り返っているのですが、GLOBISも学生の方々をはじめ、近いものがあるでしょう。
「GLOBISブランドは社員だけのものではない」からこそ「何かしらエンゲージするプロセスを入れたほうがいい」という話は、井上さんや西岡さんともずいぶん前からしていたんです。
井上:投票で決定することは、経営者である堀の意思でもありました。「みんなで決めたい」というのはある種、グロービスがそれだけ多くのお客様や社会から愛される存在だったからこその選択だと思いますし、おっしゃるように非常にユニークなプロセスだったと思います。
――投票は特設サイトを通じ募集しました。サイトの作り込みに対して感嘆の声も届きましたね。
田川:それまでもかなり自走していたGLOBISのプロジェクトメンバーの皆さんですが、この制作は凄まじい勢いで詰め切っていて、改めてすごいなと思いましたね。
西岡:大学院の在校生・卒業生の方、講師や法人顧客、ユーザーの皆さまなど、GLOBISを誇り、旧ロゴに愛着を持ってくださっている方はたくさんいらっしゃいます。そういった方々に、これまでの30年を支えてきてくれたロゴをなぜ変えるか、変えたらどうなるかを丁寧に説明しないといけないと思ったんです。サイト制作の中心は川下さんでしたね。
川下(GLOBIS デザイナー):僕自身はデザイナーとして、投票で決めてもらいたいとは思わなかったのが本音です。デザインはデザイナーこそが決めるものだと思うからです。ですが「やろう」となったからには、できるだけ制作陣のメッセージが伝わるいいものにしたいと思い制作しました。
相原(GLOBIS デザイナー):サイトは英語版や中国語版も制作しました。作業量は膨大でしたが、それだけ「あらゆるステークホルダーへきちんと伝えたい」という熱意が全員強かったんです。結果、初日だけで900票ほどいただき、GLOBISへ向けられている熱量を改めて感じる機会でした。
――「投票制が嬉しかった」「ちゃんと私たちに聞いてくれてありがとう」といった声もありましたね。また、この投票自体を「GLOBISらしい」とおっしゃる方も多かったように思います。
田川:リーダーシップのかたちは会社によっていろいろですが、「これがGLOBISのリーダーシップなんだ」と思いました。
川下さんがおっしゃったように、通常は経営者とプロが議論して最終案を決めます。投票を用いることはあまりありません。ただそれはHOWの話なんですよね。根本のWHYに立ち戻ると、組織やステークホルダーの結束を醸成できるのであれば「全員で投票」も十分に納得できる手法です。その意味で、今回は僕自身も勉強になりました。
山口(Takramアートディレクター、デザイナー、ディレクター):先ほど清水がお話した2つに加え実施したワークショップが、ブランドスライダーです。例えば「ビジョナリーとボトムアップ」「冷静と情熱」、といったさまざまな選択肢のどちらがよりブランドに近いと感じるか、スライダー式で回答していただきます。
特徴的だったのは、「正統と革新」の質問には皆さん「革新」寄りを選ばれたこと。新ロゴとして決定したデザイン案は3つの中で最も革新的な案でもあったので、そういった皆さんの意識が表現されてもいると思います。投票に残った3案のうち、最初にご相談頂いた課題感を最も解決しているのも今回採用されたロゴでした。
清水:デザインコンセプトとなった「GLOBIS Blue Flame」のもとになったのが、ステークホルダーインタビューなど一連のリサーチから浮かび上がった「知性と情熱」というワードでした。リサーチをすればするほど、このGLOBISの持つ先進的でアカデミックな知性と、「志」という言葉で語られる情熱のコンビネーションの素晴らしさが、どんどん浮き彫りになっていったんです。
この一見相反するような2つの要素を意匠の細かな部分にまで取り入れて表現できたことは嬉しかったですし、個人的にも非常に思い入れのあるプロジェクトになりました。
――意匠面でのポイントもぜひ教えてください。
山口:意匠としてはオリジナルの書体で作っていて、書体の一文字一文字にGLOBISらしさを込めています。例えば、スピード感や意志の強さを上向きの角度に込めるなどです。それでいて、ロゴ表現としてはモダンさがあるようにしました。「現ロゴの遺伝子と志の表現」として、投票サイトでも解説した点になります。
投票特設サイトより引用
清水:リサーチの中から上がってきたステークホルダーの方々からの意見の中にも、これから目指したいイメージとして「もっとモダンに」「もっと開かれたイメージで」といった言葉が多く並んでいました。
皆さんGLOBISと深く関わる中で体感している先進性やオープンさと、ロゴなどの外見から受ける印象の間に乖離があったということです。このギャップを埋めるために、旧ロゴの良さをリスペクトし継承しながら、一方でモダンでグローバルで、オープンさや遊びもある意匠をどう強く表現するか、徹底的に考えました。
「作って終わり」ではない、これからのプロジェクト
――まとめとして、本プロジェクトを通じ今後へ思うことについて伺えればと思います。
西岡:ようやくロゴが決定しましたが、ここから先、ガイドラインを作成し、運用や理解の促進、そしてサポートが必要となってきます。大変だろうとは思うのですが「作って終わり」にしないという気持ちで取り組んでいきたいです。
吉崎:GLOBISは言語化が得意な反面、非言語のビジュアルアイデンティティやビジュアルコミュニケーションにはブレが生じることも今まではあったのだと思います。ですが今回のプロジェクトを通じ、この面が定まってきたわけです。
これからの時代、言語と非言語のコミュニケーションを兼ね備えることは武器になると思います。この新たな武器を手に入れたことが、GLOBISが更なる挑戦に向かう機会になればいいですね。
相原:GLOBISには、GLOBISや社員としてあるべき姿が言語化された「スタッフブック」を全員で読み合わせする文化があります。
その読み合わせで確認される社員としてのマインドと、今回新しく決まったロゴやブランドがうまく組み合わさることで、「やっぱりGLOBISっていい会社だな」とまず社員の人たちに愛着を持ってほしい。
インナーブランディングも頑張っていきたいですし、それが社外にも浸透して、もっともっと「かっこいい、先進的、ワクワクする」存在としてGLOBISの認知が高まっていければと思います。
川下:今まで以上に社内デザイナーが頑張らなければなけないという危機感があります。社外の皆さんがあっと驚くぐらいのものを作り続けていきたいですね。
田川:今回は30年間お世話になってきたロゴに感謝して、そのスピリットをモダンな形で抽出し、次の30年やこれからの事業展開にふさわしいものにするという取り組みでした。
これは僕らが生き物として、親から子へ世代交代していくこととほとんど一緒なんです。ここまでつないできてくれた存在に感謝してるからといって、未来永劫それでいいわけではない。「時が来た」ときは、次に移行していく。
ここで参考になるのが、ヨーロッパのサッカークラブの姿勢です。彼らはシンボルマークを数年ごとに変えるのですが、歴代すべてクラブハウスの廊下に飾っているんです。これは、自分たちのレガシーは一枚一枚レイヤーを積み重ねて成立していくという意識があるからこそです。
新ロゴに皆さんが愛着を持ってくれるといいなと思う一方、同じぐらい旧ロゴのことも、感謝して覚えておくものにしていただけるといいなと思います。
清水:田川さんの話に通じるところですが、旧ロゴのもとで醸成されてきたグロービス・ウェイの情熱に、少しでも新ロゴが感化して、より高みを目指していただけるといいなと思います。
更に言えば、デザインというものの良さや素晴らしさ、ロゴがかっこよくなることでより企業が前向きになっていくことも伝わればいいですね。
井上:「投票で決める」というのはどれに決まるのか本当にドキドキだったのですが、振り返るとGLOBISらしいプロセスだなとも思ったんですよね。
私たちが事業を展開し、サービスを提供する中で、顧客・ユーザーを「お客さま」というより「仲間」と感じることが頻繁にあるんです。GLOBISのビジョンは「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ですが、この生態系のなかで仲間をどう巻き込めるのかが重要です。そういう意味では、投票はまさに仲間の巻き込みが実現されたプロセスでした。
今回のプロジェクトを通じ、ブランドのコアやストーリーが言語化されました。これによって、強固な「仲間」づくり、そしてよりGLOBISに愛着を持っていただけるようになると思います。ますます盛り上がるコミュニティの中で、更なる挑戦をしていきたいですね。
――今回はただロゴのデザインが変わるというわけではなく、さらに飛躍するためのスタートなんですね。
代表の堀は、経営理念の根幹である「ビジネスを通した社会貢献」を更に推進するべく、30周年を機にグロービスの存在を「社会貢献本業カンパニー」と改めて位置付けました。広報としても、すべての事業を通じ、グロービスの社会的存在価値を更に発信できるようにしていければと思います。本日はありがとうございました。
田川 欣哉
Takram Japan株式会社 代表取締役/ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 名誉フェロー
山口 幸太郎
Takram Japan株式会社 アートディレクター, デザイナー, ディレクター
清水 万里合
Takram Japan株式会社 アートディレクター, グラフィックデザイナー
井上 陽介
株式会社グロービス マネジング・ディレクター
グロービス・ブランド・プロジェクト メンバー