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投稿日:2023年04月19日

投稿日:2023年04月19日

コミュニティの種類によって、得られるものは違うのか?ーコミュニティの力とは Vol.3

研究プロジェクトメンバー

植松 絵里
大内 鉄平
古仲 研一
僧野 大介
多田 歩美

教員

田久保 善彦
グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長

Vol.1では、幸福に関与する非地位財と内面的幸福を測定する前野氏の研究を紹介しました。Vol.2では、コミュニティへの参加がもたらす幸せとその要因の調査結果を紹介してきました。

本稿では、コミュニティ参加によって幸せになっている人は、どのような分類のコミュニティに参加しているか、コミュニティ分類毎に得られる要素の違いについて述べていきます。

コミュニティの運営目的と、参加者の役割で違いが出る

コミュニティと一言でいっても、コミュニティの目的や運営体制は多種多様です。コミュニティ参加を通じて幸せになっている人たちがどのようなコミュニティに参加しているのでしょうか?私たちは、アンケートやインタビューをもとに調査し、下記の4分類のコミュニティにわけました。

図1:コミュニティの4分類 

■4分類に分けたコミュニティ

A: 参加者間の「交流・親睦」が目的であり、幹事・主催者の役割が「明確化」されているコミュニティ

B:参加者間の「交流・親睦」が目的であり、参加者内の役割は「自由型」で運営されているコミュニティ

C:「目標達成」を目的としており、幹事・主催者の役割が「明確化」されているコミュニティ

D:「目標達成」を目的としており、参加者内の役割は「自由型」で運営されているコミュニティ

この4分類のコミュニティ参加者にインタビューを行ったところ、コミュニティの性格を特徴づけるのは、「交流・親睦」か、「課題解決・目標達成」かといったコミュニティ運営目的と、「参加者の役割が明確」か「代わる代わる自由にアサインされている」か、といった2軸であることがわかりました。

次に、上記仮説を検証するために、アンケートを実施しました。301人から回答を得ました。

どのコミュニティでも「やってみよう因子」「ありがとう因子」は高められる

アンケート結果からは、どの分類のコミュニティに参加しても「やってみよう因子」(自己肯定感が強く、主体的に仕事に取り組む)と「ありがとう因子」(周囲に感謝し、利他的に振舞う)は共通して高められることがわかりました。

交流・親睦型(分類A・B)コミュニティへの参加は「ありがとう因子」が特に高まりやすいことがわかりました。分類A、Bに共通する「交流・親睦」の要素が、「目標達成」型のコミュニティと比較して他者との関係が親密になりやすく、参加者のありがとう因子を高めていると考えられます。

また、目標達成型(分類C・D)コミュニティへの参加は「やってみよう因子」が特に高まりやすいこともわかりました。分類C、Dに共通する「目標達成」という要素が、「交流・親睦」型のコミュニティと比較して明確な目標に向かう上で他者がとっている行動から刺激を受けることが多く、コミュニティ参加者それぞれの「やってみよう」という意識を高めていると考えられます。分類B(交流・親睦型&役割自由型)コミュニティに参加すると、他の3分類と比べて「ありのまま因子」が高められるということもわかりました。4分類の中で最も参加へのハードルが低いため、参加者が自然体で参加できることから、他分類と比較して「ありのまま因子」の割合が高められていると考えられます。

図2:コミュニティ分類毎の4因子の高まり

※追加アンケートは、前野隆司氏の幸福度テスト16項目をベースに、幸せの4つの因子の高まりに寄与する事柄に関する内容で構成し、自分が参加しているコミュニティ分類とそのコミュニティに参加することにより最も変化が起きた事柄について、一人あたり最大3項目まで回答頂きました。

あなたに合うコミュニティは、どのタイプ?

アンケート結果から、コミュニティのタイプごとに、マッチする人がいることがわかりました。みなさんも自分に合うコミュニティに参加すると、現状よりも幸せに状況を創り出すことが期待できます。自分の志向に合うコミュニティ分類を探してみてください。

分類A:交流親睦・役割明確型
向いている人· 共同作業が好きな人·自分からアウトプットすることが好きな人
· ○○担当とやることが決まっている枠の中で活動する方がやりやすいタイプの人
参加のポイント· 役割を無理なく担えると思える活動であること
· 役割で成果を出すことよりも、活動自体を他者と楽しむマインド
分類B:交流親睦・役割自由型
向いている人· 大きな役割のコミットは負担と思う人
· 明確な目標や役割が決まっているよりは、フレキシブルに活動に参加する方が
 居心地がよいと感じられる人
· 普段の生活圏以外に交流の幅を広げたいと思う人

※コミュニティ活動の経験が少ない方は、まずは4分類の中で最も参加のハードルが低い、分類Bコミュニティに参加してみることもおすすめです。
参加のポイント· 年齢、業界など、異なる背景を持つ人とニュートラルに関わるマインドを持つこと
· 自分ができるタイミングでできることをやるという積極性
分類C:目的達成・役割明確型
向いている人・自分の得意分野を見つけて伸ばしたいと思う人
・仕事の場以外で自分の力を試したいといった成長願望がある人
※○○係とやることが決まっている枠の中での活動に力を発揮できるタイプの人におすすめのコミュニティです。
参加のポイント· 成果を感じられやすい役割から始めて自信をつける
· 自信がついて、他のメンバーとも関係が築けたら、新たな役割に立候補してみる
分類D:目的達成・役割自由型
向いている人・大きな役割のコミットは負担と思う人
※フレキシブルな活動を志向するが分かりやすいゴールがあるとモチベーションが湧く人におすすめのコミュニティです。
参加のポイント· 自分が担える役割は積極性に果たすこと

次回は、4分類のコミュニティ参加者それぞれのインタビュー内容を紹介し、コミュニティのどのような要素が幸せに作用しているかについて紹介します。


Vol.4につづく

研究プロジェクトメンバー

植松 絵里

大内 鉄平

古仲 研一

僧野 大介

多田 歩美

教員

田久保 善彦

グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長