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投稿日:2019年10月08日

投稿日:2019年10月08日

企業におけるCXOの役割と育て方~田川欣哉×深津貴之

田川 欣哉
株式会社Takram 代表取締役/ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 名誉フェロー
深津 貴之
株式会社THE GUILD 代表取締役/note株式会社 CXO

本記事は、201995日にピースオブケイクで行われた『イノベーション・スキルセット』刊行記念トークイベントを書き起こしたものです。(全2回 後編)前編はこちら>>

CXO=最高体験責任者としてプロダクトサービス全てに関わる

深津:皆さん、こんにちは。ピースオブケイクでCXOをさせていただいている深津と申します。今日はよろしくお願いします。

田川:よろしくお願いします。今日は事前に質問をたくさん頂いていて、僕のほうで質問を10個くらいにまとめたので、これをガイドラインにしながら深津さんと話していきたいなと思います。

  • CXOって何だっけ!?
  • BTCスキルの磨き方・道順を教えてください!
  • BTCスキルを増やす環境・場作りのコツを教えてください!
  • 外部から支援する際の心得って何ですか?
  • デザインセンスの磨き方を教えてください!
  • 大きな組織の変革って可能なんでしょうか?
  • そもそもイノベーションって何でしたっけ?
  • BTC型の開発プロセスを教えてください!

田川:まず、そもそも「CXOって何だっけ!?」という質問ですが、深津さん、ピースオブケイクでCXOとしてどんなことをされてるのか教えていただいてよろしいですか。

深津:単語としてのCXOは最高体験責任者、ユーザー体験の最高責任者ってことで、一般的には何となく、CXOってデザインチームのトップとかUXのトップって雰囲気なんですけれども。

そうすると「サービスのユーザー体験って何だろう」ってことになってくると思うんですね。本当にユーザーエクスペリエンスをちゃんとやろうとすると、プロダクトを知る前の段階から、その後、触っている間、さらにその後に生まれるユーザーコミュニティとか全部が守備範囲になるんで。プロダクトというよりサービス全体のエコシステムをちゃんと設計するイメージかなと思います。

一応、職務上はデザイナーということになってますが、noteのサービス画面設計とかはデザインチームにお願いしていて、僕はどっちかっていうと、サービスが健全になるためにはどうすればいいんだろう、逆にどうしたら捻じ曲がるだろうみたいなことを見ていて。CTOやCEOと一緒に、それこそBTCの3人がそろって、全方向から施策とか戦略の話をしてます。

田川:何でケイクスは深津さんを招こうと思ったんですかね。きっかけは何だったんでしょうか。

深津:もともと加藤さんと他で仕事をしていて「CDOで手伝わない?」みたいな話があったんですけど、CDOだとクリエイティブに限定されちゃうんで。僕としては、メディアサービスのエコシステムそのものをよくすることにチャレンジしていきたかったんで、CXOでいいですかね、みたいな。

田川:今の話、大切なところですよね。CDOだとクリエイティブ代表みたいな形になるけど、CXOだとプロダクトサービスに関わるものなら何でもやれる。面白いなと思うのが、CXOって結構その周囲のCスイート、たとえばCMOとかCTOとかと被って仕事をしますよね。

深津:CTOとかCFOとかCMOとかの方が、エキスパートとしての能力は高くて。CXOに求められるのは、そのとんがった頂点同志をつなぐとか。割と接着剤みたいな、そういうポジション。

田川:デザインの特殊スキルだなと思うのは、ユーザーに憑依するっていうか。自分がユーザー代表みたいになっちゃう感じあるじゃないですか。

深津:そうですね。人によるとは思うんですけれども、「自分がファーストユーザーである」かつ「ヘビーユーザーでもある」し、「初心者の心も失わない」みたいな感じのとこを行ったり来たりするっていうのは多く見られるかな。

田川:なるほど。ちなみに僕自身もここ1年くらいメルカリのCXOアドバイザーをしていまして。僕が入るタイミングでCXO室というものが立ち上がり、UIUX構築、ブランド構築、デザイン組織設計と戦略の3本柱をCXOを中心に進めています。

深津:チームって何人ぐらいいらっしゃるんですか。

田川:CXO室は7人くらいかな。

深津:うらやましい。noteのデザインチーム全員より多い。

田川:メルカリは今デザイン組織が50人ぐらいなんですよ。メルカリはもう社員が1,800人ぐらいいるので、これぐらいのチームじゃないと案件が多くてさばけない感じです。

CXOに至るまでBTCを身に着ける順番は?

田川:そしたら次に、すごく多かった質問です。「BTCスキルの磨き方とか、BTCを身に着ける道順を教えてください」っていう。深津さんの場合は、どんな感じで今に至ったんですかね。

深津:もともと僕は大学で、テクノロジーで生活がどう変わるかみたいなゼミに属してから、ロンドンに留学して、椅子とか照明とかハードウェアのプロダクトデザインをやってきました。スキルセット的には、TとCを交互に学んで、独立したあとにBを学んだみたいな感じ。

田川:深津さんの場合は、中村勇吾さん率いるTHAにいらして。THAに何年いらっしゃったんでしたっけ。

深津:3年半ぐらいだと思います。

田川:巨匠の隣で、エンジニアリング的な実装と、デザインのハイブリッド的な仕事してたって感じですよね。

深津:そうですね。テック対デザインの割合が、7:3とか6:4ぐらいの割合で仕事をしてました。

田川:独立されたあとに欠かせないのが、あのカメラアプリのヒットだと思うんですけど。めちゃくちゃ売れましたよね。その過程でユーザーサポートやカスタマーサポートを学ばれた。

深津:Appleさんの規約が変わって突然アプリのアップデートが通らなくなって1,000通ぐらいの苦情がユーザーからきて、さばくことになったりとか、海外の雑誌に自分のアプリ広告を出稿してみようみたいなところから始めて。

田川:個人事業主的にto Cマーケットで勝負してみるという体験をやってみたってことですね。

深津:やってみましたね。1人株式会社として、デザインも企画も設計もカスタマーサポートも経理もやらなきゃいけなかったので。そこで一通り薄くですけど、全部を経験したって感じだと思います。

田川:なので、深津さんをロールモデルとすると、デジタルの場合はTとCの間は比較的行ったり来たりしやすい。

深津:そうですね。普段、学生さんや若い方々にお勧めしてるのは、早い段階でコミケでもデザフェスでも何でもいいんで、自分の全財産とか死なない程度の資金とかをパーンとはって自分でプロダクトをつくって、ちゃんと売り抜くとか、在庫の山を抱えるみたいのを1回やると一気に感覚が身に付くんじゃないかなとは思います。

田川:ビジネススキルもそうだし、経営者感覚。規模は小さくても、経営者がどういう心境で仕事をしてるのかっていうことが自然と見えてくる感じですか。

深津:やっぱりクライアントワークとか事業会社ワークだと、お金は人がくれるし、いざとなったら誰かが何とかしてくれるじゃないですか。どこかに属してると学べないものっていうのがいっぱい手に入るので、若いうちに。

田川:僕自身も今回このイベントがあったんで、改めて振り返ってみたら、意外に深津さんと共通点が多くてですね。

僕はもともとエンジニアリング、機械工学だったんだけど。そのあと深津さんと一緒なんですけど、イギリスでデザイン勉強して帰ってきて。深津さんの師匠が中村勇吾さんだとすると、僕の師匠は山中俊治という、プロダクトデザインの巨匠で。山中さんが発揮する超クリエイティブなアイデアをひたすらエンジニアとして実装してました。

デザイナーの言うことを理解しながら、エンジニアリングスキルでそのクオリティを落とさず、そのままインタラクティブなものに仕上げていくような仕事を5年くらいやって。それでデザインの目線みたいなのが自然と鍛えられた感じです。Bについては、Takramという会社の経営者としてやっていく中である程度身についた感じです。

TCをやってそのあとBっていうのがここの2人に共通する部分なんだけど、質問の中で、結構ビジネス系の方もいらっしゃるんですよね。ビジネス系の場合ってどうなんでしょうね。

深津:僕の周りの人を見てると、BとTをやってきた人の方が本気出せばCを学びやすい。というのもロジカルシンキングのトレーニングがある程度完成しているからで。逆に課題は、価値があるのか疑問になってCの勉強を途中で辞めちゃうみたいなところなのかな。

田川:最近それこそスタートアップの経営者とかはUXをかなり高解像度で理解してますよね。マネーフォワードの辻さんとか。delyの堀江君もそうだし。なので、ビジネス系から入ってくる人たちでも、全然大丈夫。少なくともプロダクトをつくってみれば、UXは身に付きますよね。

深津:個人的には美味しい料理をつくって人に振る舞うのをガチのデザインの代替物としてやると、割といいんじゃないかなと思ってます。

Bから入ってプロダクトつくるときの大失敗ナンバーワンは、超資金でテストしないで、すごいものをつくってコケるってのがあるんですけど。普通に料理やってるだけで味見しないで料理つくるの駄目じゃん、みたいな一瞬でわかる(笑)だから、そこを通ってから、デザインのノーマルな勉強するほうが全然やりやすい。

田川:料理メタファーってわかりやすいですね。人間って料理に対する良し悪しの解像度って、むちゃくちゃ高いじゃないですか。味についても、絶妙な配合でわかって。だけどプロダクトとかって、そういう感覚に比べると本当にざっくり捉えてて。これ本当においしい料理って自分たちが言えるのと同じぐらいプロダクト磨こうねって話なんでしょうね。

深津:何億突っ込んでマーケ費いくら使ったらユーザーいくら取れますよって、雑な解像度で仕事してるってとこありますよね。

「僕、関係ないんで」と言わせない環境をつくる

田川:そしたら次の質問。「BTCを増やす環境づくりのコツ」「会社の中で越境人材を増やすってどういうことなのか」。これ、どうですか。

深津:個人的にお勧めは、1番最初の企画の段階で、テクノロジーとかクリエイティブとかいろんな人を呼んでワークショップ的にガヤガヤ意見交換するのがいいんじゃないかな。noteの毎週のサービス改善会議も横断的なチームでやってます。そうすると「テクノロジー的に難しい」とか、そういうのがすぐ分かったりして。

田川:じゃあ、具体的にプロダクト改善とかサービス改善について議論をしながら、皆に他分野のリテラシーを学んでもらうっていうか。

深津:そう、リテラシーが身に付きやすい。他の人がどう考えてるかって、常に見えやすいほうがいいんじゃないかなと思っていて。

田川:今、深津さんがおっしゃった話ですごい本質ついてるなと思うんですけど、いいプロダクトつくるときって「これは僕の仕事じゃないし」とか思ってる人が多くなってくると絶対上手くいかないじゃないですか。

深津:放っておくと、全員、エキスパートになって、「僕今回関係ないからいいです」みたいになるんですけど。結局、自分が発言するかどうかとか、自分のパートかどうかとか関係なく、自分の外側の分野の人が、どういう思考でどういう意思決定してるかをどんだけ見たかっていうことが本当はキャリアとか成長的にはかなり役に立つはずなんで。

田川:そのワークショップ的会議って、深津さんが切り盛りしてるんですか。

深津:最初の頃は僕がファシってたんですけど、最近、デザインチームの他の方とかにファシリテーションまではいかないかもだけど司会進行はしてもらって実験中です。他の人でもできると思いますよ。

深津流、サービス設計に活かす趣味の極め方

田川:なるほどね。じゃ、次の質問ですけど「日々の鍛錬って、どうされてるんですか」っていう。

深津:鍛錬って言っていいのか分かんないですけど、できる限りやったことのない趣味とか、ものづくりの仕方を1年に1個ぐらいは学ぼうとしてます。写真を撮ったりとか、金属工芸やったりとか。

そういう他分野のもののつくり方を見ていくと、さっきの料理の話と一緒ですよね。そういうもののほうが、専門書よりも学ぶこと多いなと思ってて。全然違うもののつくり方を見て、その中から共通項を抜き出してくのが、僕のやり方ですね。

田川:じゃあ何か1個決めて極める。極めるプロセスのメタ知識化みたいな。

深津:そうです。最近、金属工芸で学んだすごい面白いことの1つが、ハンマーでカンカン叩いて、完全に丸い器とかつくってくんですけど。力いっぱい一撃で叩くと、ポコッて金属へこんじゃうんですけども、弱い力で1万回とか10万回叩くと、誤差が平均回帰っていう現象を起こして。要は誤差が均等に分散するので、弱い力でたくさん叩けば叩くほど、完全な円に近付いていくとか。そういうのっていうのは全部、サービス設計の話にフィードバックされたりしていくかな。

田川:現象としてユーザーのほうで起きてることは、すごいランダムな現象に見えるけれども、CXOの人たちってその裏側の構造を見抜く人が多い。

深津:メタ化していく感じですよね。

田川:そう。その一般化した構造に対して、何が作用するとその先の現象がコントロールできるのかっていうところをABテストとかも使いながら試すみたいな。

なので、この日々の鍛錬もそういうことを含めながら何か1個決めて極めていくみたいなものをやるとね。

深津:デザイナーさんとか美大出てる方だったら、デッサンいいですよ。デッサンとサービスのつくり方って完全に一緒なんで。

大企業でもCXOは機能するのか

田川:そしたら、深津さん。ちょっと難しい質問になるんだけど「大きな組織でこの手の活動って可能なんですか」と。「大きな組織でいいプロダクトってつくり得るのか」っていうレベルでもいいかと思うんですけどね。

深津:個人的には最低限プロダクトリーダー、できれば判子押してくれる人がBTCの組み合わせとか、プロダクトそのものに興味を持っている方ならばやりやすいと思います。プロダクトのリーダーの上に3人ぐらい判子押してくれる人がいて伝言ゲームで決裁が下りるみたいな状況だと不可能じゃないかな。

田川:なるほど。次は「日本のレガシーな大企業に今必要なスキルセット。大企業にCXOは必要か。また、必要な場合どのように機能するのか」。これ結構重い質問ですね。

この前、delyでCXOされてる坪田さんと話してたときに言ってたのが、CXOってCEOの分身的に動くことがあるのでCEOから権限をある程度担保してもらってないとなかなか難しいですよね、と。スタートアップだと組織が小っちゃいんで可能ですけど、万単位の従業員のいる企業になったときに成立し得るのかっていうのがね。

深津:そこがやっぱり1番難しいとこですよね。大企業さんだとCXO室つくっても、技術部の下か、デザイン部の中か、マーケティング部の下ぐらいの場所になっちゃうんで。それだとなかなか影響力を持てない。やっぱり創業者が大鉈を振るうくらいじゃないと難しいかもしれない。

田川:どの部門に置くのかって大事ですね。社長直轄だったとしてもなかなか権限が発生できなくて。良さげかもしれないのは経営企画。ここにCXO的ファンクションをまず置くっていう方法もあります。

あと、大企業になると事業部がいっぱいあるんで。各事業部ごとに沢山プロダクト持ってますからね。だから、事業部の中に、ヘッドオブデザインとか、ヘッドオブエクスペリエンスっていうのを置いてみる手もあります。

田川:あと5分ぐらいなんですが、フワッとした質問も最後に面白いかもしれないですね。「CXOやっていて1番、快感と思う瞬間、何ですか」。

深津:CXOになると、直接ものがつくれなくて、間接的なものづくりの仕方になってくるんですよ。だから、あらゆるものを配置して、ドミノ全部倒したらパンパンパンパンって全部倒れて上手くピタゴラスイッチが機能したぞ、みたいなときはすごい嬉しいです。

田川:なるほどね、メタ設計的なね。仕組みが動いた、みたいな瞬間ですよね。ちなみに深津さんが率いてらっしゃるGUILDのほうなんですけど。GUILDにもBTCタイプ結構いますよね。

GUILDで勉強会とかもたくさんやってらっしゃるじゃないですか。どうやってその辺りをリーダーとして教えてらっしゃるのかなって。

深津:そんな意識的に組織内でシェアとかはしてないですね。たまにノウハウ共有会とかが開催されはしますけど。フレームワーク化とかはしてないですね。

GUILDはフリーランスの集団なんですけど、その中だと、こばかなさん(@kobaka7)とかは実験的な事例で僕の直属の社員でして。1年間ぐらいずっと横に付けて、僕が言ってることとか全部まとめてもらって、分かんないことあったら全部聞いてみたいな感じで。ペアで動いて知識の継承みたいなのをやってました。

田川:一子相伝型ですね。GUILDの中でも深津さん以外に安藤剛さんがYAMAPのCXOをされてますが、キャリアパスとして、GUILD経由でどこかの企業のCXOになったりできるんですか。

深津:そういう風になってほしいなっていうのはあります。今、実際にCXOをやってるのは2人で、他に2~3件「GUILDで誰かCXOやれる人がいませんか」みたいな声が企業からかかってはいるので。

そこら辺が上手く歯車かみ合って、業界が被らない感じでGUILDの中から何人かCXOが生まれて、それぞれのCXOのノウハウの交換みたいなことが起きてくると、いいんじゃないかなと思います。

田川:Takramでも、いろんな会社のCXOを担っていこうというような動きはありますね。あと坪田さん率いるBasecampもCXOを育てていこうとされてると思います。なので、そういう既にCXOを輩出してるようなところで、数年勉強してみるっていうのもありかと思います。

ここまでサーっと見てきましたが、残り15分になったので、フロアに質問をオープンにしていこうかなと思います。

質問1、BTCの人材が成長するような環境って最終的には、カリキュラムに落とせるものなのでしょうか。

深津:できそうな気がします。ただ、作るとなるとライフワークになるんで、いろんなもん放り出さなきゃいけないなって気配がするんですけど。

田川:ちなみに、僕がしばらくいたイギリスのロイヤルカレッジオブアートにイノベーションデザインエンジニアリングってコースがあるんですけど、ここはもう30年ほどBTC人材を育てておりまして完全にカリキュラム化されてます。

そこからたくさんスタートアップが出てきてるし、BTCっぽい人たちも出てきてる。ここは参考になるかなと思います。

深津:やることは4つなのかな。MBAっぽい入門と、デザイン側のロジカルシンキングで統合デザイン学科とか多摩美がやってるような授業の入門パートと、テクノロジーの考え方の入門パート。この3方向の入門パート、プラスそれのインテグレーションの部分っていう、4つのカリキュラムで。

それぞれの分野は、もう確立されてると思うんで、インテグレーション部分だけ工夫すればカリキュラムは作れるんじゃないかなと思います。まだ自分でつくってるわけじゃないので、あくまで仮説ですが。

田川:あと、どういう状態になった人に受けてもらうかっていうのは、めちゃくちゃ大事。大学院教育はまず無理で、ロイヤルカレッジでも3年間の実務経験が入学の条件になってます。いきなりTにいこうとすると全部が浅くなっちゃって、どのプロとも会話ができない、みたいな話になっちゃう場合が多いですね。

深津:世に出てからじゃないと実感できない。例えば、テックエキスパートになったんだけどビジネスの事業で1回挫折した経験があるとか、テックエキスパートになってすごいスペックのものを作ったんだけど、使ってもらえなかった、みたいな。自分のエキスパートだけじゃ解決しない壁を1度感じた人とかが来るといいんじゃないかなとは思うんですよね。

質問2、例えばUX的にはこういう形がいいんだけどロジカル的には違うとかクリエイティブとロジカルがかち合う場合、どう解決されたのか。

田川:デザインとビジネスの間がハレーションして上手くいかなくなった時に、特にビジネスサイドとして、どうデザインチームにアプローチすればいいのかみたいな話ですね。

深津:それは目的レイヤーが共有されてないか、両者違うものを目的レイヤーにしちゃってるかってことですよね。僕はレイヤーを、大体5個とか7個ぐらいに分けて書いて、壁に貼ったりチームに見せたりするのが好きで。どんな世界観があって、そのためにはどうなっていればいいのか、そしてそれを実現するためにやるべき三本柱ぐらいまでブレイクダウンして。

そこまで共有してれば、こういう目的のためにデザインが必要なんでこうしてくださいっていう話ができるのでそこまでズレないと思うんです。逆にそういうのをやってないと、ここをアニメーションするとクールだとか、赤orピンクどっちがいいのかみたいな難しい話になっちゃうと思うんで。

最初に話せる、意見交換できる。一緒に飯食い行くみたいな。アナログなことが結構、重要なんじゃないかなって思います。

田川:なるほど。それでは、大体皆さんの質問にお答えしたところで。今日1時間半、僕もそばで深津さんと話してて面白かったんですが、終わりの時間です。みなさん、どうもありがとうございます。深津さんに拍手をお願いします。

*この深津氏と田川氏の対談は、TakramCast「イノベーション・スキルセット対談シリーズ2:深津貴之さん」の回でも視聴可能です。

*田川欣哉氏はグロービス経営大学院にて「デザイン経営」の講座をされます。ご興味のある方はこちらをご覧ください。
特設サイト:テクノロジーが導く新潮流。経営とデザインが融合する次世代マネジメント
科目案内:
デザイン経営(デザイン駆動型のイノベーションとブランディング)【Produced by Takram】

田川 欣哉

株式会社Takram 代表取締役/ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 名誉フェロー

深津 貴之

株式会社THE GUILD 代表取締役/note株式会社 CXO