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2020年12月22日

2020年12月22日

オンライン動画学習のメリットと限界

田久保 善彦
グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長

手軽な動画学習

コロナがもたらした急激な社会変化により、空いた時間が増え何か能力開発をしなければならないという不安から、動画でビジネスを学ぶという方も増えてきたように感じます。


◇メリット① 学びを習慣化できる 

ビジネス関連の知識を得たいと思うと、従来はビジネス書を読むというのが一般的でしたが、動画は超手軽でここ数年急成長しています。非常に安価なものも多いですし、本を読むのが苦手という方には、学びを習慣化するきっかけとしてはとても良いものが増えています。


◇メリット② 細切れ時間で学べる

様々なプラットフォームに、様々な言語で、数分に区切られた(多くの場合数本から20回程度のシリーズものに)わかりやすく編集された学習用の動画が、それこそ山のようにリリースされています。最近では、作りこみ方も大変に優れたものが増えてきました。

オンライン動画学習の限界

◇限界① 見ているだけになる

一方で、ものにもよりますが、ほとんどが、一方的に講師役の人が話をしている動画が流れるため、「ただ見ている」という状況になりがちです。私も久しぶりにプログラミングの勉強でもしてみようかとPythonの講座にいくつかお世話になりましたが、何度も「落ちて(寝て)」しまいました(笑)。


◇限界② 思考が深まらない

わかりやすく作りこまれたものであればあるほど、逆に見ている側の思考が止まってしまう場合もあるでしょう。私はNHKスペシャルの大ファンですが、時に完成度が高すぎて、思考する余地が奪われてしまいます。


◇限界③ 学んだ気になってしまう

チェックテストなどが付いているものも、脊髄反応で回答可能なものが多く、思考は深まらないように思います。一人だけで学ぶということは、このような状況を克服しなければならないため、実は実力向上までを視野に入れた場合、難しい営みであるとも言えます。

「学んだ気になってします」ということには、十分な注意が必要です。


◇限界④「わかる」と「できる」は違う

動画を観て、「なるほどなあ」と思っても、それをビジネスで実践できるかというとそうではありません。例えば様々な思考法について知識を得ても、できるようになるには、一定のトレーニングが必要です。なぜか。思考にはそれぞれが長年培ってきてしまった癖があり、まずは自分の思考の癖に気づかないと何を意識すればよいかも分からないためです。自分の思考の癖に気づくためには、他者から指摘される環境に身を置くことが重要です。たくさん動画を観ても、実務で使い成果を出せるようにならないと単なる時間の無駄ということになってしまいます。

学びの深さは、動画<書籍

個人的には、動画学習や短期セミナーで、すこし学ぶ意識が高まったら、次に行くべき段階が、「良書・基本書の読書」だと思います。本は動画学習に比べて、かなり能動的に自ら学ぶ姿勢が強くないと、学びが得られないという意味で、実はハードルが結構高いのです。


本は、ネットの記事などと違い、書き手も相当頭の整理をしながら体系化をして書いているものが多いので(そうでないと、まとまった文章にはならない)、何かの基礎を体系的に学ぶのには大いに役立ちます。

動画学習の次に必要なこと

様々な学び方がある中でどのような学び方が自分にとって効果的か。その答えは、学びたい分野をどれだけ深めたいか、によります。例えば基本的な知識を得たい場合、動画を観ることは効果があり、グロービス経営大学院でも基本科目の予習には動画視聴を入れています。


一方で例えば社内で上司や経営陣と議論ができるようになりたい、ということであれば、議論を実際に重ねてみる場が必要です。

人は人によって磨かれる

ビジネスは正解がない世界であるため、実力は、人と人とのコミュニケーションの中で磨かれていきます。つまり、人は人によってしか磨かれないのです。


ここまで読まれた方は、動画学習が良いのか、議論を重ねることが良いのかを比較することは、基礎体力トレーニングとサッカーや野球とどちらをやるべきかを比べるようなもので、全く意味がないということを理解いただけると思います。

一気に成長を遂げたいならMBAも

「ビジネス」というある種の競技に何十年と携わるのがビジネスパーソンなわけですが、意外とその基本的なルールや考え方を知らないまま、現在の仕事だけに邁進しているという方が多いのではないでしょうか? MBAというと、経営者になる人が学ぶものというイメージもあるかもしれませんが、もはや、そんな時代ではありません。私はこれから、ビジネスを10年以上やる方には、全員(笑)学んでいただきたいと思っています。とてもシンプルに、ビジネスのプロとしての最低限のことを抑えていただきたいからです。ルールを知らないでプロ野球の選手をやっている人はいませんよね。一度しっかり学ばない限り、いつも会議でマーケティングの話になると下を向いているなどのことが続きます。早いうちに、不得手の穴を埋めてしまいましょう。しかし、とは言いつつ、MBA取得の2年間はそれなりに長いですから、しっかりとご自身の目的を明確することが重要です。なぜ、何のために学ぶのかを明確にしないと、学びは深まりません。それから、学びを始めたら、大事なのは、徹底的にアウトプットすることです。同時にこの先の時代は、社外の多様な価値観を持った人と触れることによる刺激や気づきを得て、人間としての深さを追求していくことが何より重要です。これが、読書、動画学習などとは決定的に違うところです。また、MBAの世界で重視していただきたいのはネットワークの構築です。深く・強いネットワーク、そして弱いつながりも積極的に作っていくことにより、皆さんの人生はより豊かなものになるでしょう。

「クリティカル・シンキング」は思考力強化の第一歩

グロービス経営大学院はすべての思考力の基本となる「クリティカル・シンキング」の科目など、1科目から受講できる単科生制度があります。効率的に成長したいという方は、まずは単科でこの科目を受講してみる、というのも検討してみてはいかがでしょうか。この科目では、90日間かけて、自分の思考の癖と向き合い、正しい思考ができるようにアウトプットを繰り返しながら、徹底的にトレーニングしていきます。きっと新しい世界がぐっと広がるはずです。

まとめ

環境変化が激しい時代、時間は何より貴重です。だからこそ、効果の出ない方法で多くの時間を費やし「学んだつもり」に陥らないように、まずは「学び方」についてもしっかりと考え、貴重な時間を無駄にしないように成果に直結する学びをしていただきたいと思います。

仕事の成果につながる学びを体験しませんか?

グロービス経営大学院では、社会人に必要不可欠な論理思考力を鍛える科目「クリティカル・シンキング」の授業を実際に体験できる「体験クラス&説明会」をキャンパス・オンラインにて開催しています。

田久保 善彦

グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長

慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業、中央省庁(経済産業省、文部科学省他)、自治体などを中心に調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールにて企画・運営業務・研究等を行なう傍ら、グロービス経営大学院及び企業研修におけるリーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。経済同友会幹事、経済同友会教育問題委員会副委員長(2012年)、経済同友会教育改革委員会副委員長(2013年度)、ベンチャー企業社外取締役、顧問、NPO法人の理事等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』、『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済新報社)、『日本型「無私」の経営力』(光文社)、『21世紀日本のデザイン』(日本経済新聞社)、『MBAクリティカル・シンキングコミュニケーション編』、『日本の営業2010』『全予測環境&ビジネス』(以上ダイヤモンド社)、『東北発10人の新リーダー 復興にかける志』(河北新報出版センター)、訳書に「信念に生きる~ネルソン・マンデラの行動哲学」(英治出版)等がある。