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投稿日:2019年08月22日

投稿日:2019年08月22日

有志活動の価値と苦労とは?『変革の一歩目』を踏み出した2人の実話――グロービス経営大学院・公認クラブ活動「変革クラブ」 イベントレポート②

クラブ活動
変革クラブ 活動レポート

グロービスの学生が、共通の目的や問題意識を持つ仲間と自主的に取り組むクラブ活動の活動事例紹介。

前回に続き、先日行われたグロービス経営大学院 公認クラブ活動「変革クラブ」が主催するイベントの内容をお届けします。

イベント後半は、同団体を牽引する4名の卒業生が各テーブルに分かれ、グループディスカッション形式の分科会が実施された。本記事では、One Panasonicの代表を引き継いだ本田慎二郎氏と、朝日新聞社有志団体「朝日版わるだ組」事務局長の安藤翔一氏の分科会をレポートする。

(※肩書きはインタビュー当時のものです)

分科会① パナソニック有志団体「One Panasonic」代表 本田慎二郎氏

「有志で集まることの価値、これからの有志活動とは」をテーマに登壇したのは、グロービス経営大学院・2015期生の本田氏。One Panasonicのメンバーとして7年近く活動し、2019年1月からは大阪校の卒業生である2015期生の山田亮氏とともに共同代表を務めている。

本田氏はパナソニック入社2年目で、人事担当としてリストラ実行経験。7000億円規模の赤字を2年連続計上した頃で、「自分も何かしなければ」という危機感を持ってOne Panasonicにジョインしたという。在学中は多忙のあまり一度手を引いたが、One Panasonicを通じてイノベーションを起こすことで自社のコングロマリット・ディスカウント(多角化企業の株価や企業価値が、それぞれが個別企業として別々に運営されていたときの企業価値の総和を下回る現象)を改善できると思い直し、活動を再開した。

社内トップ層には「これからのパナソニックのあり方」や「若手時代にどんなマインドで仕事をしていたか」、社外ゲストには「志を持つことの重要性」や「志を持ったからこそ得られた価値」などを講演してもらい、組織を縦・横・斜めにつなぐ活動を行ってきた本田氏。イベント後には懇親会を開いて一方通行にならないよう工夫し、イベント以外ではパナソニック内でのネットワーキングにも力を入れてきたという。

幹事50名、参加者3000名の大規模団体であるOne Panasonic。参加者のモチベートについて本田氏は次のように語った。「たしかに温度差はありますね。もともと危機感を持っていない人を変えるのは難しいので、なぜ参加しているのか、何を課題に感じているのかを日頃から問いかけ、意識してもらうようにしています。とくに幹事志望者に関しては、『成長したい』だけの方はお断りしていて、『会社をより良くしたい』という思いの強い方に来てほしいと考えています」

またOne Panasonicの活動を快く思わない人の存在については、「一定数はいます。私たちがすでにトップ層とつながっているので、ミドル層を飛ばしてトップ層に直接アプローチしてしまったりすると、やはり受け入れられにくいですよね」と言及。トップの承認を得ながらも、ミドル層のキーマンを巻き込んでその人たちに動いてもらうことが重要だと語った。設立当初は大阪で活動していたOne Panasonicだが、そこから名古屋、東京、福岡の社員の自主性に火がつき、現在では各地域に代表が置かれる全国的な活動へと広がった。One Panasonicでの活動を機に、社内FA制度を使って新しい一歩を踏み出したメンバーもいれば、One Panasonicという意欲的な若手の集まりがあるからパナソニックに入社したという例も多いそうだ。本田氏自身もこの活動で得た人脈を通じてグロービスに通い始めるなど、さまざまな変化や成果を感じているという。

「今までは社内の認知を広げるフェーズでしたが、トップ層の理解を得たり、広報にOKをもらってメディアに出たり、認知についてはある程度成功したと思います。今後はもっと本業に帰す活動に挑戦していきたい。One Panasonicは社内と社外の間にある有志の組織なので、ROI(Return on Investment:投下した資本に対しての収益性を測る指標)が求められるわけではありません。その立場を活用し、実証実験的な活動をして会社に何かしらを還元するような組織になれば、会社との関係性もより良くなっていくのではないかと思っています」

創業者・松下幸之助氏の言葉「ものをつくる前に、人をつくる」に共感し、パナソニックに入社したという本田氏。実際に入社してみて、真摯に向き合えば誰もが真剣に応えてくれる「人」の良さを実感した。だからこそ、その強みを最大限に発揮できるよう、本業と並行の多忙な日々を送りながらもOne Panasonicの活動に力を注いでいる。

「全事業部の力を掛け合わせられれば大きなイノベーションが生まれ、パナソニックはもっと強い会社になる。パナソニックが輝けば、日本そして世界をもっと明るく照らせる。そう信じて活動しています」

分科会② 朝日新聞社有志団体「朝日版わるだ組」事務局長 安藤翔一氏

「トップにアプローチしてみてわかったこと」をテーマに登壇したのは、グロービス経営大学院・2015期生の安藤氏。2004年に朝日新聞社に入社し、各地の新聞販売店の経営指導、メディアラボでの新規事業立ち上げを経て、現在は販売店流通網を活かした新規事業の展開に携わっている。

社内の若手有志団体「朝日版わるだ組」をスタートさせたのは2015年。「新聞業界は長期低落傾向にあり、販売の現場を見ていた私も常に危機感を抱いていました。一方で過去の成功体験や、組織行動が苦手な風土、法律で守られていることなどいくつかの要因が重なり、今すぐ変革が必要であるという主張がなかなか理解されない実情もありました。当時、他部署の先輩1人・後輩1人と『このままではいけない』という話をよくしていて、私たちに共感してくれる人を集めて勉強会を始めたのがスタートのきっかけです」と、安藤氏は設立当時を振り返った。メディアラボに異動して人間関係が広がったことや、グロービスに通い始めて刺激を受けたことも、設立の後押しになったという。

ONE JAPAN の活動には、2015年秋の構想段階から参加していた安藤氏。他社で有志活動をするメンバーと話していると、大企業でもトップにアプローチして講演やミーティングを実現している例が意外と多いことがわかった。当時、直属の上司が社長室長の役員だった安藤氏は、トップと若手がミーティングを行う意義を役員にプレゼンし、セッティングを依頼。2015年の活動開始から実績を重ね、徐々に認知が高まってきていた1年後に、社長参加のミーティングは満を持して開催された。

「社長までは7階層くらいあり、若手が直接話す機会は普段なかなかありません。勉強会はいつも平均15〜20人の参加でしたが、社長とのミーティングには60人ほど集まってくれました。社長からは、『社長に言えば会社が変わるわけでない。社員みんなで変えていく』『階層があって動きにくいかもしれないが、上司を信じてほしい。ふさわしくない者にマネジメントはさせていない』といったお話があり、参加者は士気を高めていたようでした」

トップの考えや激励に直接触れ、若手たちのチャレンジ精神は徐々に行動に表れるようになった。新規事業コンテストに応募するメンバーも目立つようになり、朝日版わるだ組で知り合った他部署の人と手を組んで応募するケースも増えたという。近年は毎年100件もの応募があり、その中で1〜2件が採用されるというサイクル。安藤氏自身も、活動を通じて知り合った他部署のメンバーと応募した案が2017年に採用され、現在は予算をもらいPoC(Proof of Concept:概念実証。実現可能性を調べるために実験を行うこと)を実施している最中だという。

現在、朝日版わるだ組の参加者は、ML登録数で180名ほど。海外研修や留学に行った社員による報告会、ONE JAPANの他の有志団体による勉強会・交流会など、社内外のネットワークを活かした活動を行っている。

「部署を越えて仲間ができたことはやはり財産。困ったことがあれば相談できますし、『新規事業といえば安藤』と認知してもらえたおかげで、私のところにもいろいろな話が入ってくるようになりました。また仲間同士で信頼関係が築かれているので、まわりの目を気にせずに未来について語り合うことができます。そのエネルギーが普段の仕事にもモチベーションとして還元されているのではないでしょうか」

マネジメント層からは「おもしろいことをやっているね」と好意的に捉えられている朝日版わるだ組だが、若手の意欲に共感し権限を与えてくれるミドル層の巻き込みにはまだ課題があるという。ただあと数年経てばメンバー自身がミドル層の立場。立ち上げメンバーの中には、次に昇格すれば管理職という人もいる。「そこからが本当の変革だと、仲間内ではよく話しています。アウトプットはまだあまり出せていませんが、今は力や知性や信頼関係をじっくりと醸成する期間」と安藤氏は語った。

「変革クラブ」とは

組織や企業、業界、社会の「変革」を成し遂げる人材の輩出を目指すクラブ。在校生・卒業生約1,400名(2019年8月時点)が在籍し、変革コミットメントシートの作成やワークショップ、分科会などの活動を通して「一人ひとりが変革に強いコミットメントを持ち、自身の変革プランを磨き上げる」場を提供しています。

クラブ活動とは

社会の「創造と変革」に貢献することをテーマに掲げ、グロービスの学生が自主的に取り組む活動です。共通の目的や問題意識を持った同志が集い、それぞれのクラブが多彩なテーマで独自の活動を展開しています。学年の枠を超えて、在校生と卒業生が知識や経験を共有し合うクラブ活動は、志を実現につなげるための場として、大きな意味を持つものとなっています。

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