Real Growth

MBAがほしいわけじゃない。
求めていたのは仕事で戦え「武器」。

ブリッジインターナショナル株式会社

経営企画部

加藤 麻美さん

グロービス経営大学院 2025年卒業

2014年、新卒でWebマーケティング会社に入社し人事部門に配属。その後、2018年にブリッジインターナショナルグループ株式会社へ転職。人事総務部にて採用リーダーを務め年間100名超の採用と育成に従事。コロナ禍をきっかけに会社全体や社会への問題意識が芽生え、2024年に公募にて経営企画部へ異動。現在は中計策定、組織再編、IR、管理会計など、幅広い業務領域を担う。

仕事に没頭した20代。
「能力を磨く」という発想は
まだなかった。

まずは、グロービスへ入る前、20代の頃のお仕事について聞かせてください。

当時は人事部で、採用のリーダーを務めていました。仕事が好きで、必要なら残業したり、人がやっていないところまで頑張ろうと思って仕事をしていましたね。一生懸命取り組んで成果を出したいという気持ちが強かったです。

実は当初は目の前の仕事で精一杯で、会社の外に学びに行くという発想は全くありませんでした。上司からは何度か「グロービスはあなたに向いていると思う」と勧められていましたが、「正直、仕事を終えてから学校に通うなんてリアルに想像できない」、という気持ちでした。

その上司が当時よく口にしていたのは「ノコギリの刃を研ぎなさい」という言葉です。切れ味の悪い刃のままがむしゃらに頑張るよりも、能力を磨き、より質の高い仕事ができる状態にしてから挑戦しなさい、という意味でした。しかし、その頃はまだその言葉の本当の意味を深く考えるまでには至りませんでした。

「自分の力だけではどうにもならない」――転機となった挫折。

そこから、なぜグロービスに?

転機となったのは、採用リーダーとして経験した大きな挫折でした。

採用に携わって数年、ようやく新卒採用が軌道に乗ってきた頃のことです。その年は40名以上の新入社員を迎え入れることができ、「これからだ」という手応えを感じていました。ところが、その直後にコロナ禍に見舞われました。社会人経験も少ないメンバーたちが出社することもできずに、仕事を十分に覚えられないまま、不安だけが膨らんでいったのでしょう。結果的に、その年に採用した社員の多くの方が会社を去ることになってしまいました。

中には「この会社に入ったことが間違いだった」と涙ながらに訴えた社員もいて、「私がこの子たちの未来を潰してしまったのではないか」――そう数ヶ月間悩み、重たい気持ちを抱えたまま自問自答し続けていました。

その過程で気づいたのは、これはコロナだけの問題ではなく、会社にも問題があるということでした。当時はマネジメントや育成の仕組みが十分に整っておらず、環境の大きな変化に対応できなかったのです。「こういう社員を二度と出してはならない」と思った時、「人事という立場だけでは会社は変えられない。経営層と対等に議論できるだけの武器を身につけなければいけない」と、初めて心の底から思ったんです。

MBAを取りたいわけじゃない。純粋に、社員のためにできることを増やしたい。

その思いが、今に繋がるのですね。

はい、そこで以前から上司に勧められていたグロービスの存在を思い出しました。

20代の頃の私は、仕事に没頭しつつも、ビジネススクールに通うようなタイプでは全くなかったので、MBAを取ると言うと周囲からとても驚かれました。「どうしたの? 社長になりたいの?」と冗談交じりに聞かれたこともあります(笑)。

ただ、私自身はMBAという学位がほしかったわけではありません。純粋に「もっと仕事ができるようになりたい。仕事の中でできることが増えれば、もっと楽しくなるはず」というのが、素直な気持ちでした。

体験クラスに参加した際、グロービスの廣瀬聡さんが、「経営とは、社員とその家族の人生を預かることだ」とおっしゃっていました。その言葉を聞いた瞬間、胸を突かれました。コロナ禍での経験を通して社員の人生と真剣に向き合うことの重さを痛感していたからです。

――私は、社員を幸せにできる“良い経営”がしたい。

そう強く思いました。「ここで学ぼう」と覚悟を決めた瞬間でした。

「今日学んで明日使える」学びの楽しさ。ここでなら、さらに成長していける。

まずは単科生として、学びをスタートされていますね。

思い切って飛び込んでみたら、学ぶことは想像以上に楽しいと気づきました。今日学んだことを明日の仕事で使っていくような、実践的な学び方が自分に合っていたんだと思います。「クリティカル・シンキング」で学んだことを活かして、メールの書き方やパワーポイントの構成など基本的なことでも、論理の飛躍がないか、相手に伝わるか、考えられるようになりました。同じく単科生として受けた「ビジネス・アナリティクス」では、今まで時間をかけていたエクセルでのデータ分析が圧倒的に早い時間で終えられるようになったり、分析の視点も豊富になったりと、仕事の質もスピードも、格段に上がったという手応えがありました。

一方で、ファイナンスなど、当時の仕事に関係ない科目は、イメージが湧きづらく、勉強するのが大変だと感じることもありました。それでも諦めず、教員やまわりのクラスメートに細かく質問して、仲間の力も借りながら、なんとかついていきました。後にファイナンスは仕事で使うようになるので、このとき諦めずに勉強していて良かったです。

本科への進学については、実は最後まで迷いがありました。学び始めてみると優秀なクラスメートばかりで、「本当に自分はここで通用するのだろうか」と不安になる瞬間が何度もあったのです。議論のスピードや視座の高さに圧倒されることもありました。それでも単科生として学んだ1年を通じて、仕事の進め方や向き合い方、視座そのものが確実に変わってきたという実感がありました。成果の出し方が変わり、判断の質も上がり、現場でのコミュニケーションにも良い影響が出ていました。その手応えが、「ここでなら、さらに成長していける」という確信につながっていきました。

また、周りのクラスメートの存在も大きかったです。「誰かと比べる必要はない。昨日の自分を超えればそれでいい」と気づかせてくれたのも、彼らとの対話でした。背中を押してくれる仲間がいたからこそ、一歩踏み出す勇気を持つことができ、本科への進学を決意しました。

勇気を持って公募に挑戦。今までの自分なら諦めていたかもしれない。

本科入学の直後に、大きなチャレンジがあったと伺いました。

その年の6月に、経営企画部の公募が発表されたんです。結果的に応募して、後に異動が叶うのですが、当時の自分にとっては、公募に挑戦することだけでも、とても大きなハードルでした。

その頃、グロービスで出会った友人とも、「30代後半までにキャリアチェンジしないと、どこにもいけない人材になっちゃうんじゃないかな」と、よく話していました。でも、当時の自分はまだ30歳になったばかり。経営企画なんてもう少し先の目標だと思っていたんですよね。それでも、この公募はキャリアを前進させるチャンスなんじゃないか...と思う気持ちで揺れていました。

そのことを、憧れの女性であるグループ会社の社長に相談をしたのですが、そこで言われたアドバイスはとても印象的でした。「私が見てきた範囲だと、女性は確信を持てないと飛び込まないけど、男性は4割くらいの自信でも挑戦する。やりたいと思うなら、やってみなさい」。その一言で、挑戦しようと決めました。

振り返れば、グロービスに入る前の自分であれば、応募を迷うことすらせずに見送っていたと思います。しかし、学びを通じて自分の成長に手応えを感じていましたし、「できない理由」ではなく「できる方法」を考えられるようになっていました。こうして、勇気をもって公募に踏み出すことができ、キャリアにおける大きなターニングポイントを掴み取ることにつながったのです。

毎日が仕事と実践の往復。学んだことを使う感覚を掴めてきた。

経営企画部への異動。お仕事の環境が大きく変わったと思います。

私が経営企画に異動して半年ほどで、もといた上司が異動してしまい、同時に異動してきた同僚と私の未経験コンビだけが残されました。本当に、大海原に放り出されて、溺れているような状態でした。

大変ではあったのですが、これが自分自身を大きく成長させるチャンスにもなりました。

経営企画は、グロービスで学んだことを最大限に使える環境です。冗談ではなく本当に、毎日、授業の資料を見ながら仕事をしていました。毎日が学びと実践の往復です。力がつかないはずがありませんよね。自分の視座がぐんと上がった経験だったと思います。

学んだ当初はあまり馴染みがなかったアカウンティングやファイナンスの知識も、ここで力を発揮しました。例えば、経営企画として管理会計を扱うようになって、数字には「どう人をモチベートするか」という視点があることに気づいたとき、数字で組織を動かす面白さを感じました。それぞれの立場に合わせた目標設定をすることで、組織全体が動き出す。「この部署にはこういう目標設定をした方が絶対に張り切るはず」「こうすれば数字が伸びる」と、具体的な施策を考えられるようになっていきました。

また、「パワーと影響力」も、受講時はあまりピンと来ていなかったのですが、経営企画で価値が花開いた科目のひとつです。経営企画は、経営層と各事業部、さらには社内のさまざまな部門の間に立つ仕事です。利害関係が異なる人々の橋渡しをする場面が何度もありました。その際に、この科目で学んだ利害関係の整理や相手に合わせた交渉が、経営層や各事業部を動かす上で、ボディーブローのように効いてきたのです。

少しずつ取り組みが実を結び始め、株価の回復や財務戦略の変更にも成功し、自分のやっていることは間違っていないと、自信を感じられるようになっていきました。社長も、最初はまったく私の意見なんて聞いてくれませんでしたが、少しずつ工夫や実績を重ねて、今ではしっかり対話ができる関係性が築けるようになりました。

仕事が忙しい中でも充実した学びを続けられたのは、仲間の存在が大きかった。

お仕事がより忙しくなり、学業との両立は大変だったのではないでしょうか。

確かに、大変ではないと言ったら嘘になります。仕事をしながら予習・復習や授業の時間も確保するという物理的な大変さもあるのですが、仕事のことが気になりながら授業に向かい、仕事も学びも中途半端になってしまっているのではないかと思って自己嫌悪になった時もありました。

ただ、そんなときでもクラスメートや職場の仲間との対話で何度も助けられました。今は自分を鍛える時期であり、自分に負荷をかけて学ぶことで、必ず仕事でも成長できる――、そう背中を押してくれる仲間たちに助けられて、頑張り続けることができました。

そんな中で、JBCCに挑戦したことも忘れられない経験です。

1年次は楽しくやろうというスタンスでクラスメートとチームを組んで出場したのですが、実際に参加してみたら予選も突破できず、とても悔しい思いで終わりました。絶対にこの悔しさを晴らそうと、2年次も同じメンバーで参加することを決めました。JBCCでは数カ月かけてケースと向き合いますが、学んだことの実践は勿論、チームワークや精神面の強さも試され、自分の力を総動員する必要があります。自分自身、JBCCというリスクフリーで挑戦できる経験のおかげで大きく成長できたと感じますが、それと同じくらい、チームメンバーの大きな成長を間近で感じられるのが、JBCCの醍醐味だと思います。この経験を共有したメンバーは、自分の良いところも悪いところも全部わかってくれている存在です。

単科と本科を合わせて3年間、仲間が成長している姿を間近で見ているから、自分も頑張らなくちゃと思える――、グロービスはとても良い環境だったと思います。苦しいことも楽しいことも、ともに経験してきた仲間との絆は一生続くと感じています。

日本ビジネススクール・ケース・コンペティション(JBCC): 日本のビジネススクール生が、企業が抱える実際の経営課題に対して戦略を提言する、国内最大級のビジネスコンペティション。グロービスからも希望者が毎年出場している。

この3年間が自分を大きく変えた。昔の自分ができなかったことも、今はできると信じられる。

卒業されてしばらく経ちましたが、グロービスでの学びを振り返っていかがでしたか。

スキル面、マインド面ともに、入る前は想像できていなかった大きな変化が得られたと感じています。グロービスがなければ、経営企画部への異動という大きなキャリアチェンジはなかったですし、考え方も大きく変わりました。特に、思考する体力のようなものがついたおかげで自信を持って仕事ができるようになり、なにごとにも余裕ができたと思います。以前はキャパオーバーになってパンクしてしまうこともありましたが、今は「やればできる」と思えるというか、ドンと構えていられる感覚があります。

20代でMBAを取るなんて早いという人もいますが、実際に学んでみて、早ければ早いほど良いと私は思います。学んだことは、卒業後にずっと使い続けられます。早ければ早いほうが、自分の選択肢は拡がりますし、学んだことは必ずさまざまな場面で自分を助けてくれると思います。

また、グロービスで得た仲間は一生続く関係になります。単科生時代にできた約15人の勉強会グループは、3年経った今でも毎月のように朝勉強会や振り返り会を行い、旅行などプライベートな交流も続いています。また最近、グロービスの卒業生や在校生で経営企画のコミュニティを立ち上げました。経営企画の仕事は暗中模索になりやすいので、社を越えて助け合える場は心強い支えになります。200人以上がコミュニティに参加し、グロービス教員の井手さんが顧問として支援してくださっています。

社員の幸せとやりがいを支えるのが自分の仕事。これからも一歩一歩、前を向いて進んでいきたい。

最後に、今後の展望や目標についてお聞かせください。

私は今、経営企画部という「できることが無限にある」部署で、たくさんの機会に恵まれたポジションで仕事ができています。だからこそ、社員それぞれの思いを引き出すことを大切にし、それを会社に大きなインパクトを与える施策に繋げて、幸せややりがいを感じながら働ける環境を整えていきたいと思っています。「目の前の人たちをどこまで連れて行き、どのような気持ちになってもらいたいか」を日々考えながら、一歩一歩実行していくことが私の仕事です。

グロービスに入る前でも「自分が関わる人たちがいかに楽しく、ハッピーに仕事をしているか」そう考えながら仕事をしていましたが、その視座や実現力は、グロービスを通じて大きく成長しました。昔の自分であれば、「こうなったらいいのにな」と思うだけで、自分の仕事とは思えなかったことがたくさんありました。でも、今の自分であれば、実行するために具体的な道筋を描いて進めていけると思えています。

社員がやりがいを感じて幸せに働いていくために、前を向いてこれからも一歩一歩進んでいきたいと思います。