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投稿日:2025年07月27日

投稿日:2025年07月27日

【実践で学ぶMBA】「ベンチャー・マネジメント」科目とは?起業・スタートアップに必要な力を養う

監修者

鳥潟 幸志
グロービス経営大学院 教員
本橋敦子
グロービス コンテンツオウンドメディアチーム

はじめに|なぜ今「ベンチャー経営」が注目されるのか

生成AIの進化により、定型業務のコストが劇的に下がり、これまでにないスピードで新しいサービスが生まれています。こうした技術革新は、スタートアップが効率的に成長できる追い風となっています。
NetflixUberなどは産業構造を変えるビジネスモデルを武器に、短期間で世界的企業に成長しました。また「大企業で終身雇用」という価値観が薄れ、スタートアップや新規事業に挑戦する人が増えているのも現代的な傾向です。
さらに日本政府は「スタートアップ育成5か年計画」を掲げ、資金供給や人材育成を強化しています。こうした流れの中で、ベンチャー経営を実践的に学ぶ意義はますます高まっています。

この記事からわかること

  • 現代のスタートアップを取り巻く環境とベンチャー経営の重要性
  • グロービス「ベンチャー・マネジメント」科目の概要と学習テーマ
  • ケースメソッドや実務家教員による実践的な学びの特徴
  • 起業・新規事業に挑戦する際に身につくスキルと効果
  • 教員のリアルな経営経験が授業にもたらす価値

科目概要|「ベンチャー・マネジメント」で学べること

本科目は、将来起業を考えている方、現在企業のマネジメント職に就かれている方、将来ベンチャーの経営陣に参画しようと考えている方に、是非受講していただきたい科目です。全6回の授業を通じて、創業から拡大期に直面する課題を、実在企業のケースを用いて体系的に学びます。

目的は単なる知識の獲得ではなく、現場で通用する意思決定力とマネジメント力の養成にあります。

学習テーマ|起業から成長までの実践課題

  • 起業家としての意思決定とその影響範囲
  • 創業時に直面するリソース不足と信用構築の方法
  • ベンチャー企業特有の競争環境と戦略の立て方
  • 組織が拡大する過程で起こる内部の歪みへの対応
  • 成長を維持するためのマネジメントと文化の作り方

創業期から拡大期へと進む過程に不可欠な課題を段階的に学ぶことで、起業から成長までを一貫して理解できます。

ケース教材の紹介|国内外スタートアップの実例

  • マイドラッグ社:創業期のジレンマを描く
  • クイックメデックス:事業評価と経営判断
  • カジーとタスカジ:競争環境分析と戦略策定
  • クラウドフレア:拡大期の成長課題
  • ネットフリックス:組織文化とアジリティ
  • 起業家・山田進太郎:志と長期戦略

急成長を遂げた国内外のスタートアップや著名な起業家を題材にすることで、理論と実務のギャップを埋め、現場での意思決定力を磨きます。

教員の経験から学ぶ|現場で得た知見を伝える

この科目の大きな特徴は、教員が実際にベンチャー経営に関与してきた経験をもとに授業を行う点です。教科書的な理論ではなく、リアルな経営の現場で得た知見をもとに、「なぜそれが重要なのか」「どうすれば実践できるのか」といった解像度の高い学びを提供します。

特に、以下のような現場ならではの悩みに対して、具体的な解決策を議論できます。

  • 実績がない中で顧客の信頼を得る方法
  • 小さな組織が大手とどう戦うか
  • 組織拡大によって生まれる「不満」や「ひずみ」への対処

こうした学びを支えているのは、実際に起業や経営を経験した教員たちです。たとえば:

  • 金柿秀幸 氏は、絵本のレビュー・通販サイト「絵本ナビ」を立ち上げ、業界の常識を覆す「全ページためしよみ」や「定額読み放題」などの革新的サービスを実現しました。現在も代表取締役社長として20年以上にわたり事業を成長させてきた経験を、授業に反映しています。
  • 鳥潟幸志 氏は、デジタルPR会社のビルコムを共同創業し、取締役COOとして10年以上にわたり新規事業開発や海外拠点のマネジメントに従事しました。スタートアップの成長フェーズを現場でリードしてきた知見は、受講生が直面する実務課題に直結します。
  • 内山英俊 氏は、サイバードで公式モバイルコンテンツ部門を率いた後、ANALOGTWELVEを共同創業し、さらに2015年には「unerry」を設立。リアル行動データプラットフォームを構築し、2022年には東証グロース市場への上場を実現しました。起業から上場までを走り抜けた経験は、受講生にとって大きな示唆を与えています。

このように、創業から拡大、さらには上場に至るまでのリアルなプロセスを体験した教員陣が揃っていることこそ、「ベンチャー・マネジメント」科目の最大の魅力のひとつです。

起業家精神を実行に移すために

「ベンチャー・マネジメント」は、起業ノウハウを学ぶだけでなく、アントレプレナーシップを実行へ移すための思考法、意思決定、組織づくりを体系的に学ぶ科目です。

実際の受講生の声からも、多くの気づきが得られています。

  • 「この科目を受けていなかったら、独立・起業後に苦悩していたと思う」
  • 「実体験に基づいた知見を惜しみなく伝えてもらい、起業に対する心構えができた」
  • 「大企業とベンチャーが連携する際の違いや課題が明確になった」

いずれも、ケースメソッドと実務家教員の知見による実践的な学びがあったからこそ得られた声です。

まとめ|拡大期を乗り越え、持続的成長を実現するために

ベンチャー経営における難しさは、ゼロから立ち上げる瞬間だけではなく、創業期から拡大期へ移行する過程にあります。事業が拡大するほど、戦略・人材・文化といった課題は複雑化し、マネジメントの巧拙が企業の成長を左右します。

一方で、生成AIの普及日本政府のスタートアップ支援政策といった追い風も強まっています。これらの環境を活かし、持続的に成長するためには、現場に即したマネジメント力を養うことが不可欠です。

「ベンチャー・マネジメント」科目は、まさにその力を磨き、挑戦を次の成長段階へとつなげる学びの場です。これから起業する人はもちろん、すでに事業を動かしている経営者やリーダーにとっても、大きな価値を持つでしょう。

監修者

鳥潟 幸志

グロービス経営大学院 教員

サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタル・PR会社のビルコム株式会社を共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービスに参画後は小売・グローバルチームに所属し、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行う。 現在は、社内のEdtech推進部門にて『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める。

グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系等のプログラムの講師や、大手企業での新規事業立案を目的にしたコンサルティングセッションを講師としてファシリテーションを行う。

本橋敦子

グロービス コンテンツオウンドメディアチーム

大学卒業後、全国紙の記者として10年勤務。仙台支局で事件・事故、裁判、行政、スポーツ、東日本大震災の被災地を取材したほか、異動後の東京経済部では流通・小売り、通信、フェムテックなどをテーマに執筆した。現在はグロービスにて、オウンドメディア「GLOBIS学び放題×知見録」の編集等を担当。