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投稿日:2025年09月25日
投稿日:2025年09月25日
年収500万円の社会人がグロービスMBAを取得する価値とは?~投資対効果をDCF法でシミュレーション~
- 溝口 聖規
- グロービス経営大学院 教員
MBAの投資対効果は本当にあるのか?シミュレーションで解説
MBAに興味はあるーーーでも、踏み出せない。そんな人は少なくないはずです。
その理由としてよく挙げられるのが、「投資対効果」です。国内MBAであっても学費は200~300万円。学生はもちろんですが、社会人にとっても決して軽い金額ではありません。
また、MBAは取得したからといって、そのリターンは人それぞれで異なるため、「本当に元が取れるのか?」「どれくらい元が取れるのか?」と不安になるのも無理はないでしょう。
これはある意味、会社の投資判断と同じ構図です。成果が出る前にコストが発生する「先行投資」において、確実性のない未来にお金を投じるという決断は誰にとっても勇気が要るものです。
そこで本記事では、ファイナンスで用いられるDCF(Discounted Cash Flow)法を用いて、筆者が教鞭を執るグロービス経営大学院を例に「MBAへの投資対効果」をシミュレーションします。
MBA取得がどれほど経済的に合理的な選択肢なのか、定量的に評価していきましょう。
※【DCF(Discounted Cash Flow)法とは】DCF法とは、将来得られると見込まれるキャッシュフロー(お金の流れ)を、現在の価値に換算して評価する手法です。この方法では、将来の不確実性や時間の経過に伴う貨幣価値の変動を考慮して、将来の価値を「割引率」を使って割り引きます。MBA取得のような先行投資は、成果が出る前に費用が発生します。そのため、目先の出費に目を奪われがちですが、DCF法を使うことで、将来的な年収増加という成果を現在の価値に換算し、初期投資と比較することができます。これにより、より経済的に合理的な判断が可能になります。
MBA投資の経済性をDCF法で分析
グロービス経営大学院が卒業生を対象に実施したアンケート調査*によれば、興味深いデータが得られています。
【卒業生に対するアンケート調査結果から】
- MBA取得後、年収が上がったと回答した人(全体の約56%)においては、現在の年収は入学時と比べて1.75倍に増加した
- 卒業後、95.0%の人がキャリアや処遇面でポジティブな変化を実感
- 94.5%が人的ネットワークを積極的に活用
- 97.0%が「人生の選択肢が増えた」と回答
*出典:「卒業後の変化・キャリアアンケート」n=2,602
(https://mba.globis.ac.jp/alumni/questionnaire/)
これだけでも、投資としての魅力は十分に感じられるかもしれません。
しかし、本記事の趣旨である”経済的合理性”を定量的に評価するために、「年収が上がったと回答した人の年収が均1.75倍になった」という調査結果を参考に、DCF法を使って、シミュレーションしてみたいと思います。
【シミュレーション】A氏のMBA進学の経済合理性の評価
A氏は大手メーカーに勤務する現在35歳です。これまでの活躍が評価され、最近、課長に抜擢されました。A氏は、会社からの期待に応えようとやる気満々ですが、これまでの実務を通じた知識と経験しか持ち合わせておらず不安も感じています。
この先さらに上を目指すなら全社視点で物事をとらえる力や、経営の知見も必要になってくるーーそう感じたA氏は、経営戦略・マーケティング・財務・組織論など、企業経営に必要な幅広い知識を学び、実践的なスキルを身につけるためにMBAの取得を検討し始めています。
とはいえ、200万円の学費(初期投資)に見合う価値があるかどうか迷っています。「この先、年収は上がるのか?」「元が取れるのか?」「仕事との両立はできるのか?」ーーA氏の頭にはさまざまな思いがよぎります。
そこでA氏は、数字で冷静に判断するため、MBAホルダーである会社の先輩にファイナンスの視点で投資対効果を見積もってもらうことにしました。
【シミュレーションの前提条件】
- 学費は入学時(年度:0年)に全額(200万円)を納める。
- MBA取得には2年(年度:1,2年)を要する。
- 年収は、卒業後1年目(年度:3年)から6年間(年度:8年)で1.75倍に到達する。それ以降は同額を維持するとする。
- MBAを取得しない場合は、年度:3年を起点に、現状の年収から毎年2%昇給するものとする。
- 評価対象期間(予測期間)は10年間とする。
- 年収(将来キャッシュフロー)を現在価値に割り引く際の割引率は、それぞれ、MBAを取得する場合:8%、MBAを取得しない場合:5%とする。MBAを取得する場合の割引率は、MBAの取得及び年収増加の不確実性を見込んで高めに設定している。
【注記】
※本シミュレーションは特定の前提に基づいた仮想的なものであり、実際の費用対効果を保証するものではありません。MBA取得後の年収増加は、個人の努力、学習成果、キャリアプラン、外部環境などによって大きく変動します。
※シミュレーションに用いた数字は、グロービス経営大学院の「卒業生アンケート」(n=2,602)に基づいていますが、これらの数字は、「年収が増加した」と回答した方に限定されたデータから導き出されたものであり、回答者全体を反映したものではない点にご留意ください。
また、わかりやすくするために数字を簡易にしています。実際の学費は、333万円で分割払いも可能です。教育訓練給付金を最大限利用した場合の実質総額は、205万円になります。ただし、教育給付金は各期の後に支給されます。詳しくは、こちらをご覧ください。
上記前提に基づけば、MBAを取得する場合の学費(初期投資)を考慮した10年間における年収の現在価値の合計は約4,259万円となりました。
一方、MBAを取得しない場合の年収の現在価値の合計は約4,121万円となり、両者の差額は138万円(増加率:3.3%)と算定されました。
また、A氏が43歳(年度:8年)の時に、MBAを取得する場合の現在価値の合計が、MBAを取得しない場合の現在価値の合計を上回ることが分かります(42歳時点(年度:7年)では、MBAを取得しない場合の現在価値の合計の方が約67万円大きい)。
これは、MBA取得のための投資が入学時を起点に約8年間で実質的に回収されることを意味します。
年収アップだけじゃないMBAの真の価値とは?
いかがでしたでしょうか?
目先の出費の大きさばかりに目を奪われると、本来すべき先行投資をためらってしまうことがあります。しかし、ファイナンスの考え方を取り入れ、投資後に得られる成果を適切に見積もって現在価値へと換算すれば、初期投資との比較が可能になり、より合理的な判断ができるようになります。
それは、将来の自分にとって本当に価値ある一歩を踏み出す助けになるかもしれません。
「今」だけでなく、「これから」の可能性を広げる視点を持つことーーそれが投資判断の本質ではないでしょうか。まさに、ファイナンスはVUCAな時代を生き抜くための有効なツールと言えます。
なお、本記事では経済的リターンに焦点をあてましたが、グロービス経営大学院には、生涯にわたり切磋琢磨できる仲間との出会い、人生の軸や自身・周囲を突き動かす原動力となる「志」の醸成、未来を自ら切り開くビジネスの体系知・思考力/行動力といった、金銭では測れない価値を得たと語る卒業生が多々います。
「社会課題を解決したい」と年収を下がることを承知で非営利団体への転職を選び、志を貫く卒業生もいます。自分の人生にとって何が本当に価値があるのかーーその問いと向き合い、実現のための総合的な人的資本を得ることこそ、グロービスMBAが提供する最大の価値かもしれません。
上記シミュレーションにこれらの"プライスレス"な価値を含めると、さらにMBAを取得する場合の現在価値は大きくなるでしょう。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。
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体験クラス&説明会とは
体験クラス
約60分
ディスカッション形式の
授業を体験
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスならではの授業を体験いただけます。また、学べる内容、各種制度、単科生制度などについても詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
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※個別に質問できる時間もあります。なお、体験クラスをご希望の場合は「体験クラス&説明会」にご参加ください。
オープンキャンパスとは
MBA・入試説明
+体験クラス
大学院の概要および入試内容の
確認やディスカッション形式の
授業を体験
卒業生
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卒業生の体験談から
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※一部体験クラスのない開催回もあります。体験クラスの有無は詳細よりご確認ください。
※個別に質問できる時間もあります。
該当する体験クラス&説明会はありませんでした。
※参加費は無料。
※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。
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※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。
溝口 聖規
グロービス経営大学院 教員
京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。 (資格) 公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)