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投稿日:2025年06月02日
投稿日:2025年06月02日
グロービス経営大学院が国際認証を取らない理由:実践特化型MBAで「経営能力」と「市場価値」を高める独自戦略
- 本橋敦子
- グロービス コンテンツオウンドメディアチーム
この記事からわかること
- 国際認証とは何か、その基本と限界について
- グロービス経営大学院が国際認証を取得しない理由
- 実務家教員による教育の特長と効果
- グロービス経営大学院の卒業生のキャリアの変化
- ご自身にとって最適なMBAの選び方
国際認証とは?MBAの品質保証に関する基本知識
AACSB、AMBA、EFMD(EQUIS)などの国際認証は、マネジメント教育の品質を一定の基準で保証する国際的な制度です。
これらの認証を取得することで、ビジネススクールは「一定の教育運営水準」を満たしていることを示すことができます。
ハーバード・ビジネス・スクールやスタンフォード大学経営大学院といった名門校も取得していますが、どのような学校でも条件を満たせば認証を取得できます。
国際認証は、ビジネススクールが教育を運営・提供するための体制やプロセスが一定水準にあることを確認する仕組みであり、教育成果や学生のビジネス上の実績・それに資する能力を直接測定するものではありません。
ISOのように、運営体制や基準の整備状況を確認する制度に近いと理解するとよいでしょう。
なぜ国際認証は実務家教育と合わないのか?
国際認証の取得には以下のような基準があります:
- 教員のPh.D(博士号)取得率
- 学術研究の量と質
- ビジネスの国際的な性質や、グローバルトレンドを理解するカリキュラム
- 多様な文化慣習に触れる学習環境
これらは研究重視・アカデミック中心の教育モデルに即したものです。
一方で、ビジネスで豊富な実績・経験を積んでいるものの、Ph.Dを持たない「実務家教員」が教壇に立つことは難しくなります。
日本では、専門職大学院制度において実務家教員の最低比率30%が制度として義務付けられています。
国際認証の基準に沿って博士号を取得している教員の比率を高めようとすると、相対的に実務家教員の割合が低下し、実践性を教育の中心に据えることが難しくなる可能性があります。
グロービスはなぜ国際認証を取らないのか?
グロービス経営大学院は、こうした認証制度を利用せず、実践性を追求した独自の教育方針を貫いています。
その背景には、日本国内の労働市場におけるMBAや国際認証に対する評価が関係しています。
日本では欧米と比べ、MBA取得と企業側の採用や評価はあまりリンクしておらず、採用や評価においてはMBAの国際認証の有無やランキングなども無関係です。
重視されるのは、経営者として、あるいはビジネスプロフェッショナルとしての個人の「能力」と「実績」です。
このMBAに対する市場の認識、そしてグロービス経営大学院の使命である「創造と変革の志士を輩出し社会にダイナミズムを起こす」という想いのもと、「実践的な能力開発」を教育理念の一つとしています。そして、以下の理由から国際認証を取得していません。
- 実務で成果を高める力を鍛える教育を最優先にしている
- 認証取得により教育の効果がアカデミックな方向に偏り過ぎるリスクを回避する
- 時代や環境の変化に合わせて柔軟にカリキュラムを再構成できる
- どの教員であっても一定以上の教育品質が担保され、実務家教員による再現性ある学びを提供する
グロービスは実務経験豊富な教員が100%を占めており、経営現場で培った知見を理論と結びつけて提供しています。 グロービスの教員には以下のような特長があります。
- 経営現場の第一線で活躍する実務家(経営者、コンサルタント、実務経験豊富な各領域の専門家など)
- 実務経験から得た知見を体系化し、汎用的な理論として再構成して伝える教育力
- 学生の内省を促し、実践的な気づきを引き出すファシリテーション能力
アマゾン・ジャパン、メルカリ、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ファーストリテイリング、トヨタ自動車、三菱商事、三菱UFJ銀行など、様々な業界出身の教員が、実際に直面したビジネス上の課題も交えながら授業を展開します。
そして、学生自身が「自分の実務に引き寄せると、この学びをどう活かせるか」を徹底的に考え抜くよう設計されているのです。
卒業生のキャリアが語る、実践特化型MBAの価値
国際認証が無くて本当に教育の質的向上や学生の豊かなキャリアへの貢献が可能なのか。
そう疑問を抱く方もいるかもしれません。
しかし、グロービス経営大学院の卒業生のキャリアの変化が、その疑問を払拭してくれます。
グロービス経営大学院が2024年に実施した卒業生アンケート(n=2,602)では:
- 回答者の95.0%が処遇・キャリアの面でポジティブな変化を経験
- キャリア・処遇の変化の上位に挙がった「ビジネスで実績を高めた」「年収が増加した」「昇進した」について、いずれにおいても97%以上が「グロービスMBAが役立った」と回答
- 「年収が増加した」と回答した⽅の平均年収は1.75倍増加
- 回答者の97.0%が人生の選択肢が増えた・広がったと体感
実例:キャリアアップの成果
- 医療機器企業で品質マネジメントシステムの導入を成功させ昇進・年収アップ
- 経営コンサルタントにキャリアチェンジし市場価値が上昇
- 新規事業創出により課長昇進と新拠点の責任者に就任
- 会社での成功に留まらず自身の能力を社会で活かしたいと意識が変わり、通信業界の大手企業を退職し起業
- 製薬会社で社内外との連携を通じて社会課題を解決する新規事業の仕組みを構築
- 情報通信会社の社長に就任し、DXによって企業のウェルビーイング向上に貢献する事業を展開
これらの結果は、国際認証という枠組みにとらわれない実践性を追求した独自の教育アプローチにより、実務で成果を高める力を総合的かつ確実に鍛えられ、望むキャリアを自ら切り拓いていけることを示しています。
MBAを選ぶときの判断軸とは?認証の有無よりも大切なこと
MBAを選ぶにあたって、国際認証の有無は基準の一つになりえます。
しかし、あくまでも様々ある基準の一つにすぎません。卒業生の活躍、育成方針、授業の質、カリキュラム、利便性、人脈形成、取得までの金額など多面的な基準のもと、ご自身のキャリアの目標に合ったビジネススクールを総合的に見極めることが大切です。
国内MBAスクールを選ぶ際の「22のポイント」を以下にまとめました。
育成方針
- 学校が発信する特徴や教育方針と在校生・卒業生から聞くスクールの実態は整合しているか。
- 自分のロールモデル(手本)となる教員や在校生・卒業生がいるか。
クラスの質
- 全教員に占める実務家教員と研究者教員の比率はどうか。
- 授業スタイルの比率(講義形式、ケーススタディ形式、ケースメソッド形式、プロジェクトベースラーニング) はどうか。授業スタイルに応じた教員の授業運営能力があるか。
- 学校が授業や教員の満足度を計測し、それを改善に活かしているか。
- 教員の執筆書籍や研究論文の執筆数、ビジネス雑誌への寄稿数はどうか。
- 学生の年齢構成、出身企業などの多様性はどうか。
- どれだけ多くの学生と出会えるか。学生間のネットワーク構築を促す仕組みがあるか。課外活動などは活発か。
- 実践力向上の方法論は、どのようなものか。
- 次の時代を見据えたカリキュラム・科目群はあるか。
- 修了生は、企業や社会で活躍しているか。
利便性
- 自宅や職場からのアクセスはよいか。通学できない場合は、オンラインでも受講できる仕組みがあるか。
- 科目選択など履修ペースに自由度はあるか。
- 転勤や出張、ライフスタイルの変化などに柔軟に対応できる制度や仕組みがあるか。
キャリア支援・人脈形成
- 一流の経営者と直に接する機会やセミナーなどの数は豊富か。
- 修了後の転職や起業などのキャリア形成サービスはあるか。
- 卒業生組織(アルムナイ)やネットワークを形成する仕組みがあり、活発に活動しているか。
雰囲気・スタッフ
- 学校全体、キャンパスの雰囲気は、通いたくなる場所か。
- 学校のスタッフは、親身な相談に乗ってくれるか、距離感は近いか。
情報公開
- 修了生のメディア掲載や起業、昇進、活躍などの成果を公表しているかどうか。
- 説明会や体験授業、個別相談会、在校生・卒業生スピーチなど情報提供やプログラム内容の確認機会は豊富か。
- 単科生(科目等履修生)制度など入学前に授業を体験できる機会があるか。
まとめ:MBA選びの本質は「制度」ではなく「成長」にある
MBAを選ぶ際に問うべきは、どのスクールが最も自分の目的に合った成長を後押ししてくれるかという点です。
そして、その目的がビジネスの成果を高めることなのであれば、国際認証やランキングは学校選びの一つの基準となりえますが、より本質的な基準はその学校が提供する「学びの質」と「卒業後の成果」です。
実務家教員によるビジネスの現場のリアルを押さえた授業、ケースメソッドやプロジェクトベースラーニングを通じた実践的な思考訓練、多様な仲間との対話や挑戦。
そして、卒業後も続く人的ネットワークやキャリア支援——これらが体系的に機能しているかどうかが、MBAの実力を決めます。
また、グロービス経営大学院のように、国際認証を取得していない学校であっても、ビジネスの成果とキャリアの大幅な変化に資する学びを提供できることは、データから証明されています。
いま求められているのは、制度的な評価を得られている環境以上に、学びを通じて変化に対応し、実務で結果を出せる能力を育む環境を選ぶことです。
本橋敦子
グロービス コンテンツオウンドメディアチーム
大学卒業後、全国紙の記者として10年勤務。仙台支局で事件・事故、裁判、行政、スポーツ、東日本大震災の被災地を取材したほか、異動後の東京経済部では流通・小売り、通信、フェムテックなどをテーマに執筆した。現在はグロービスにて、オウンドメディア「GLOBIS学び放題×知見録」の編集等を担当。

