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投稿日:2025年06月01日
投稿日:2025年06月01日
水戸ど真ん中再生プロジェクトとは?グロービスが提唱する創生モデル
- 本橋敦子
- グロービス コンテンツオウンドメディアチーム
この記事でわかること
- グロービスが「水戸ど真ん中再生プロジェクト(M-PRO)」を通じて地方創生に取り組む理由
- 水戸市中心部の衰退と、その再生に向けた具体的な取り組み
- 茨城ロボッツ再建を含む、M-PROの主要プロジェクトとその意義
- グロービス経営大学院が培ってきた教育・人材ネットワークをどう地方に活用しているか
グロービスが取り組む水戸ど真ん中再生プロジェクトとは
水戸市の中心部は、かつて多くの人で賑わっていました。
しかし、ダイエー、東急、西武、高島屋といった百貨店の撤退により、駅前の「黄門さん通り」は空き地やシャッター街が目立つようになり、郊外型ショッピングモールへの流出が加速しています。
この都市構造の空洞化に対し始動したのが「水戸ど真ん中再生プロジェクト(M-PRO)」です。
グロービス経営大学院の堀義人学長が座長を務め、教育機関としての知見とネットワークを活用しながら、民間×行政×教育の連携による「地方創生の実践モデル」を構築しています(事業主体はLucky Robotsグループなど株式会社グロービスのグループ4社となります)。
地方創生を「自分ごと」として動かす──堀義人の原点と覚悟
「水戸のど真ん中にある学校に、僕は小学校から高校まで通っていました。水戸のまちがどんどん衰退していくのを目の当たりにして、『何とかしなくちゃならない』という強い気持ちが、心の底からふつふつとわき上がってきました。…これからはふるさと水戸にフルコミットします」(出典:水戸ど真ん中再生プロジェクト公式サイト)
堀が語るように、かつての水戸を知る当事者だからこそ描けた構想が、M-PROには息づいています。
そこには、「一人ひとりが志を持ち、社会をより良く変えていく」というグロービス経営大学院の教育理念と深く通じるものがあります。
地域の課題を自分ごととして捉え、民間の力と学びを結集して解決に挑む姿勢は、まさにグロービス経営大学院が目指す「創造と変革の志士」の実践そのものです。
【M-PROの主な取り組み】グロービスが主導・支援する5つのプロジェクト
【1】スポーツ×地方創生|茨城ロボッツ再建(第1弾)
- 2016年、堀が経営難にあったプロバスケットボールチーム「茨城ロボッツ」の再建に参画
- 本拠地をつくば市から水戸市中心部へ移転し、地域密着型チームとして再出発
- 観客動員・売上・成績すべて最下位からスタートし、2021年にB1昇格
- 2020年、「スポーツビジネス大賞 ライジングスター賞」受賞
- グロービス経営大学院の卒業生らがロボッツの経営・マーケティング・地域連携などにも参画することで、学びと実践の融合が実現
【2】教育×地域リーダー育成|グロービス経営大学院 茨城水戸・特設キャンパス(第2弾)
- 2017年に開設。東京・大阪に次ぐ6拠点目としてスタート
- 地域の次世代リーダーを育てるための実務直結型ビジネス教育を提供
- 初年度には89名が受講。「志」を持った変革人材の育成に貢献
- 卒業生は地域企業の活性化に多数関与しており、水戸地域の「人材エンジン」として機能
【3】スポーツ×街づくり|M-SPOの設立(第3弾)
- 水戸市中心部の約2,000坪の空き地を再開発し、仮設アリーナ・カフェ・芝生広場・スタジオを整備
- 茨城ロボッツの練習場であり、老若男女が集う交流拠点として地域活性に寄与
【4】歴史・文化×国際発信|M-HISTORY(第5弾)
- 米ハーバード大学出身の歴史博士マイケル・ソントン氏による英語書籍『Mito and the Politics of Reform in Early Modern Japan』を2022年1月米国で出版
- 明治維新の源流としての「水戸学」を世界に伝える視点から執筆、日本語版『水戸維新』(PHP研究所)は2021年に国内刊行
- 900万円規模のクラウドファンディングと約500人の支援を受け、水戸市内の中学3年生にも配布されている
【5】地域メディア×エンタメ発信──LuckyFMとLuckyFesの創設(第9弾)
- LuckyFM(旧・茨城放送)の再編
堀が茨城放送の株式を取得し、FMラジオ・動画配信・インターネットを融合させた次世代型の地域メディア「LuckyFM」として再構築。 - LuckyFes──茨城発の大型音楽フェスの開催
LuckyFMの旗艦プロジェクトとして、2022年より「LuckyFes(ラッキーフェス)」を開催。会場は茨城県ひたちなか市の国営ひたち海浜公園。
音楽、フード、アートテーマに、ジャンルを超えた多彩なアーティストが出演。2024年は3日間で約6万人を動員。
外部人材・資本を呼び込む「協働型エンジン」構造とは?
M-PROの成功を支えるのは、「中にない知恵や力は外から集めよう」(徳川光圀)という理念に基づく、外部との協働システムです。
M-PROがその「ハブ」となることで、以下のような著名な経営者・企業が参画しています。
- 星野リゾート 代表・星野佳路氏
- カルチュア・コンビニエンス・クラブ会長・増田宗昭氏
- 住友不動産 社長・仁島浩順氏
- バルニバービ 代表・佐藤裕久氏
- アダストリア 会長・福田三千男氏(水戸出身)
- エニグモ 社長・須田将啓氏(水戸出身)
このように、都市内外の「ヒト・カネ・チエ」を有機的に融合させる構造が、他都市にないM-PROの強みです。
まとめ|グロービスが示す「地方創生の魁(さきがけ)モデル」
水戸ど真ん中再生プロジェクト(M-PRO)は、教育機関・民間企業・行政の垣根を超え、都市再生・人材育成・スポーツ振興・メディア発信を一体化させた地方創生の先進事例です。
- グロービス経営大学院が地方創生の“知的エンジン”として機能
- 教育×都市機能×文化×情報を「実行ベースで統合」
- 地域の「にぎわい」だけでなく、「誇り」と「自律的な再生力」を生む構造
- 全国の自治体・大学・起業家にとっての「実行可能なモデルケース」
「地方創生は、教育から変えられる」。
グロービス経営大学院の知見とネットワークが、水戸から全国へ、持続可能な未来を切り拓いています。
本橋敦子
グロービス コンテンツオウンドメディアチーム
早稲田大学文化構想学部卒。新聞記者を経て、グロービスのオウンドメディア編集を担当。