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投稿日:2025年04月15日

投稿日:2025年04月15日

【エグゼクティブ対談】企業再生・組織変革のリーダーシップ

スピーカー

吉本 浩之
株式会社エビデント 代表取締役社長兼COO

モデレーター

廣瀬 聡
グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長(MBAプログラム[英語])
【エグゼクティブ対談】企業再生・組織変革のリーダーシップ

「経営者の道を歩む覚悟〜自らのキャリアを切り開く原動力とは〜」と題し、グロービス経営大学院の在校生・卒業生限定イベントを開催。オリンパスから独立した精密機器メーカー、エビデント社の代表取締役社長兼COOである吉本 浩之氏にご登壇いただきました。ニデック(旧 日本電産)時代の吉本氏を取材したケースは、グロービス経営大学院の『アカウンティングⅡ(管理会計)』で扱う教材にもなっています。

双日(旧 日商岩井)からGE、日産、ニデック、そしてアメリカン・エキスプレスを経て現在エビデントの代表取締役社長を務める吉本氏が、その豊富な経験から語る経営哲学とリーダーシップの真髄。前半では吉本氏のキャリアを振り返る講演、後半はグロービス経営大学院教員の廣瀬との対談を通じて、企業変革の極意や創業者との向き合い方、人材発掘の秘訣まで、ビジネスリーダーとしての深い洞察が語られました。キャリアの転機に立つビジネスパーソンや、組織変革に取り組むリーダーにとって、新たな行動を起こすヒントとなるセミナーの模様をお届けします。

総合商社で培った「逆境を乗り越える力」

総合商社でのキャリアスタート

吉本氏:キャリアを振り返ってみると、よくこんなに会社や仕事が変わっているなと自分でも驚きます。実は自ら仕事を変えようと思ったのは1回だけ。双日からGEに移ったときだけです。あとは「是非こちらに来て助けて欲しい」「大変だけどやりがいがあるから来てくれ」と誘われて、「じゃあやりましょう」と返事をしてしまった結果が今につながっています。

必ずしも頻繁にキャリアを変えることがよいとは思っていません。ひとつの会社でじっくり経験を積む方のことを非常に尊敬しています。今日は自らのキャリアの各段階で何を考えていたのか、簡単にお話ししたいと思います。

私は1991年に双日という総合商社に入社しました。山崎豊子さんの『不毛地帯』という小説の世界に憧れたのです。高度経済成長期に商社マンとして世界を飛び回り経済成長を切り開いていく、そんな世界に単純に魅力を感じました。

双日で学んだのは、何よりもグローバルマネジメントです。自動車本部に配属された私は、ひとりで数か国を担当。アシスタントは課で2人ほどいましたが、契約書作成から交渉、貿易実務、入出金手続きまで基本的に仕事を自分ですべて回さなければなりませんでした。

誰も教えてくれないので、自分で覚えるしかありません。商売の見つけ方や交渉のやり方などは上司や先輩の背中を見て、自分で道を切り開きながら学んでいく。荒っぽいやり方でしたが、そうして仕事を覚えていくことで、まるで個人商店のような起業家精神が身に付いた様な気がします。若いうちから大きな目標を持って仕事に取り組み、メーカーの上層部と交渉したり、海外でさまざまな交渉の場に出たりした経験は、今でも私の土台になっています。

20代の海外駐在で築いた、キャリアの基盤

吉本氏:パスポートも持っていなかった私が、入社1年目の12月頃、2ヶ月間イランへ行くことになったのです。私の初めての海外出張でした。当時、私はまだ英語をあまり話せなかったのですが、オートバイ組立工場のパートナーや従業員も英語が決して堪能ではない。結局は図面や部品などを示しながらボディランゲージ、そして人と人との気持ちを大事にしていたら必ず通じる。これが青臭いながらも得た学びでした。

グローバルコミュニケーションは言葉以上に、同じ目的に向かって一緒に働こうとするとき、その熱意や協働の気持ちが何より大切だということです。

その後もジャカルタやデトロイトに駐在しながら、グローバルマネジメントと起業家精神を養っていきました。とくに大事だったのは「実行力」と「逆境を乗り越える力」です。どんなビジネスでもそうですが、特に人的リソースが潤沢では無い中で日常的に変化が多い商社でのビジネスではさまざまな苦境に立つことも多く、試行錯誤しながら決断して打開していかなければならない。「できません」では済まされないのです。何とかしてビジネスを成功させようという気持ちと、あらゆるステークホルダーに影響力を与えて人を動かす力、知恵と汗で乗り越えるチャレンジ精神が鍛えられました。20代前半にこうした経験ができたことが、私のキャリアの基盤になっています。

MBAで得た引き出しの多様性

MBAで得た引き出しの多様性

吉本氏:その後MBAに進学しましたが、そこで得たのは多様な引き出しです。2年間という限られた時間の中で多くの基本知識を学ぶのですが、「こういう考え方もある」という引き出しの存在を知っているのと知らないのでは大きな違いがあります。何か課題に直面したときに「あ、これはあの分野の話だな」と認識して掘り下げることができる。そういう意味で、MBAで学ぶようなハードスキルは非常に役立ちます。

ただ、経営に大切なもうひとつの力はソフトスキルです。人との関係性や感受性を研ぎ澄ませて多様なステークホルダーに影響力を与えながら多くのことを達成していく力。これが極めて重要で、いくらハードスキルがあっても、ソフトスキルがなければ経営はできません。これはMBAで学ぶ理論だけでなく、日常生活や仕事を超えた場面でも常に高い感受性とオープンなコミュニケーションを通じて人と接する中で鍛えていくべきものだと思います。幼少期からの環境や経験も関係があるかも知れません。

日産グループへの転身と、グローバル経営の実践

吉本氏:2002年にMBAを卒業した後、GEに入社しました。自分の意思でこの会社に就職したい、と思って転職した唯一の会社です。約4年という短期間でしたが、チェンジマネジメントなどを理論と実践の両面で学びましたし、実際に消費者金融事業を担当し、約1年で業績を立て直すという経験もしました。この経験がきっかけで、「変革請負人が自分にとっての天職なのではないか」と思うようになったのです。

金融事業のターンアラウンドが終わり、これからGEでもっと活躍していこうと思っていた矢先に、日産グループから声を掛けられました。最初は逡巡しましたが、商社で自動車事業をやっていたこともあり、カルソニックカンセイ(現 マレリ)のターンアラウンドに魅力を感じて移籍しました。カルソニックカンセイではしっかり改革を進め、その後、日産本社に呼ばれることになります。

日産では、コネクテッドビークル事業の立ち上げや、タイ日産自動車の社長も務めました。タイではクーデターが起きるなど、クライシスマネジメントをしながら経営をしていました。タイの日産社長としての仕事は本当に面白かったです。全国を網羅するディーラーをマネージし、工場も約5,000人規模で各国への輸出事業も行いながら、製造から販売まで一貫して日々やりがいがあり転職するなど考えてもみませんでした。

ニデックでの改革

永守さんとの出会い

永守さんとの出会い

吉本氏:タイ日産自動車の社長をしていたとき、日本への出張の際に「京都に寄ってみないか」という永守さんからの誘いがありました。本来なら断るべき誘いでしたが、何かに導かれるように応じたことが、私の人生を大きく変えることになりました。ニデック京都本社最上階の一室で永守さんに会った瞬間、不思議な感覚に包まれたのです。また、会話の一つひとつも深く腹に落ちるのです。永守さんの発する言葉すべてが「その通りだ」と強く共感できました。

その日夜行便でタイに戻った朝、バンコク空港に着いてメールを確認すると、永守さんから長文のメッセージが届いていました。「君のような若者に出会ったのは初めてだ」「日本電産はまだ富士山の3合目に過ぎない。一緒に頂を目指そう」と。社交辞令かもしれませんが、キャリアの中でこれほど心を動かされる言葉を掛けられたことはありませんでした。以前から知っていたニデックという企業に、強く惹かれるようになったのです。

最終的に、2015年にニデックへ入社しました。最初に任されたのは、ニデックパワートレインシステムズ(旧 日本電産トーソク)の再建。1年弱で営業利益率を2桁に上げて立て直しを成功させた後、本社車載事業本部長として新たな挑戦へと移りました。当時は利益率が課題でしたが、特に中国工場の製造プロセス改革を通じて収益体質の強化に成功したのです。そしてその後、2018年に永守さんの後継者として社長に就任することになりました。

海外事業の立て直し

吉本氏:社長就任後の大きな挑戦のひとつが、グローバル商業家電事業の立て直しでした。当時のニデックは、国内でのM&A後の立て直しは見事に短期間で成功させていましたが、海外M&A案件のPMIには時間がかかっていました。優秀な海外人材を高報酬で採用しても創業者の想いと現場の考えに隔たりがあり、買収後10年経っても本当の意味での統合(PMI)が実現していなかったのです。

そんな中、永守さんから「明日から(米国)セントルイスに行ってくれ」と一言。これは「自分は国内を固める、お前は海外を担当しろ」という絶妙な采配だったと思います。ほかの誰もやりたがらないだろうこの仕事は、私にこそ務まると確信しました。

2年の奮闘の末、事業は見事にターンアラウンドしました。当時6,000億円弱だった売上は現在1兆円を超え、営業利益率も10%以上を維持しています。朝5時から夜は23時まで、時差を利用しながら欧米アジア全ての地域を日々カバーし、週末も仕事、急遽訪れたコロナ禍などの逆境も逆にバネにして1万人のグローバル従業員と共に成し遂げたものでした。自分のそれまでのキャリアの中で最大の成果であり、この経験だけで2冊は本が書けるほど再建に没頭した日々でした。

新たな挑戦へ

吉本氏:グローバル事業の立て直しを終え、私は次のステージへと進みました。アメリカン・エキスプレスを経て、現在はベインキャピタルの招きでエビデントという会社の経営を担当しています。

この仕事に強く惹かれたのは、私の情熱と完全に一致したからです。日本には優れた技術や製品を持ちながらも、その可能性を十分に活かしきれず、グローバル化が進まないために苦戦している企業が数多くあります。私はこの状況を変えたい。そのような日本企業を、真にグローバルで競争力のある強い会社にする。この挑戦に今、全力を注いでいます。

変革のプレイブック

変革のプレイブック

リーダーの役割

吉本氏:長年の経験から培った私の「変革プレイブック」をご紹介します。これまでのさまざまな企業再建を通じて磨いてきた、企業変革のための実践的フレームワークです。これは「リーダーの役割」と「成功への心構え」の2つから成り立っています。

まずは「どこに行きたいのか」ということです。経営者は絶対にビジョンを示さなければいけません。経営企画部に丸投げしたり、社員に聞いて回ったりするだけでは何も始まりません。リーダー自身が明確なビジョンを掲げることが出発点です。

次に「危機感の醸成」です。今のままでは絶対に無理だ、変わらなければ死んでしまうという強烈な危機感を全員と共有すること。ビジョンは現状の延長線上にあるものではありません。どこかでジャンプしなければならない。そのためにはさまざまなことを変える必要がありますが、人は本来、変化を嫌います。だからこそ「どうして変わる必要があるのか」をしっかり示すことが大切です。

3つ目は「堅固な経営リズムとプロセス」です。ニデックでも徹底していましたが、月次決算を軸にしたPDCAサイクルの確立は不可欠です。年間決算並みの厳格さで毎月の経営会議を行う。この規律が組織を鍛えます。

4つ目は「KPIと実行の徹底」ですね。これはどこの会社でも同じだと思います。「みんなで頑張ろう」という掛け声だけでは何も達成できません。具体的な数値目標と責任者、期限を明確にし、スピード感を持って実行することが基本中の基本です。

5つ目は「人」です。ジム・コリンズの言葉を借りれば「誰をバスに乗せるか」です。正しい人材を選び、適材適所に配置する目利き力がなければ、どんな戦略も絵に描いた餅になります。

成功への心構え

吉本氏:この5つに加えて、6つ目は「決断力を持つ」こと。トップが難しい決断を迅速に行う。そして、決めたらとにかくすぐに実行すること。明日からやろうと思うことでも今すぐやる。

7つ目は「現場の力を結集する」こと。現場力が全てです。トップダウンの指示だけでは組織は動きません。自らが現場に足を運び、現場の知恵と力を引き出し、全員のベクトルを合わせることが重要です。

最後は「楽観的であること」。どんな逆境も「これは良い機会だ」と捉える前向きさが必要です。最善を考え、レジリエンス(回復力)を持つこと。とにかく逆境をバネにする。挫折や困難を成長のチャンスに変えることが重要です。

この8つの要素は、大企業の変革でも小さな現場改善でも等しく重要です。私はどんな局面でも、このプレイブックを心の拠り所にしています。

変革リーダーの本音と哲学

強い創業者との協働

強い創業者との協働

廣瀬:ニデックには多くの優秀な人材が集まると思いますが、その中で吉本さんが選ばれた理由は何だったのでしょうか。

吉本氏:自分でも明確に分かっているわけではありませんが、永守さんとの初対面の瞬間に「この人とは波長が合う」と感じました。おそらく永守さんも同様に感じてくださったのでしょう。永守さんの言葉は全て腹に落ちるんです。

私たちは感性やケミストリーが似ているのかもしれません。大きなビジョンを描きながらも細部にこだわり抜く姿勢、これらの共通点が互いを惹きつけたのだと思います。

廣瀬:強いカリスマを持つ創業者のもとで働く上での心構えをお聞かせください。

吉本氏:創業者は永遠に創業者です。ゼロから兆円企業を築き上げた人には、特別なカリスマ性と人間的な深みがあります。

意外かもしれませんが、永守さんは本当に繊細な方なのです。「これを言ったら皆どう思うだろう」と小声で不安を漏らすこともある。その繊細さゆえに細部まで徹底的にこだわり、結果を出してこられたのでしょう。

創業者が後継者にバトンを渡すのは並大抵のことではありません。結局のところ、自分の手で創り上げた会社への強い思いがあります。これは否定すべきことではなく、むしろ尊重すべきものです。

廣瀬:永守さんが本音で語るのは珍しいと思いますが、なぜ吉本さんにはそういうお話をされるのでしょう?

吉本氏:真の本音を打ち明けられる相手は、経営者にとって少ないものです。メディアや社員の前では強いリーダーシップを見せる永守さんも、ひとりの人間として迷いや不安を抱えています。そういった内面を受け止めてくれる人を求めていたのではないでしょうか。

私に対する本音の吐露は、必ずしも解決策を求めているわけではなく、ただ聞いてほしいという純粋な思いだったと感じています。

経営管理の独自性と普遍性

経営管理の独自性と普遍性

廣瀬:ニデックの経営管理は「独特」と評されることが多いですが、実際のところはどうでしょうか?厳しすぎるという声もありますが、吉本さんの目から見た真実を教えてください。

吉本氏:率直に言って、確かに厳しい部分はあります。0から兆円企業へと成長させる過程では、高い基準と緻密な管理が必要でした。永守さんはよく「最初から優秀な人材ばかりが集まるわけではない」と語っていました。だからこそ、明確なルールと徹底した管理体制が重要だったのです。

しかし本質を見れば、私が現在エビデントで実践している経営手法や、かつてGEが好調だった時代のマネジメントと大きく変わるものではありません。永守さんの「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」という言葉は、経営の普遍的な真理を表現しているに過ぎません。スピード感と徹底した実行力、結果へのコミットメントは、優れた企業に共通する特質です。

永守さんが独自の表現やユニークなエピソードで語るため特別に感じられますが、その経営哲学の約8割は普遍的な原則に基づいています。残りの2割は創業期の特殊性を反映したものかもしれませんが、時代とともにそれらも徐々にマイルドな形に進化しているように思います。

変革の"潮目"を捉える感性

廣瀬:変革のエージェントとしての豊富な経験から、組織を変えるために最も重要な要素は何だとお考えですか?

吉本氏:一言で語るのは難しいですね。変革にはさまざまな要素が絡み合いますが、とくに重要なのは「潮目が変わる瞬間」を捉える感覚です。

GE時代のレイク再建時に強く実感したのですが、変革の過程では必ず特別な瞬間が訪れます。最初はチームのベクトルがバラバラで、いくら働きかけても反応が鈍い時期が続きます。しかし粘り強く取り組んでいると、ある日突然、全員の心がひとつの方向を向き始める瞬間が来るのです。まるで鳥肌が立つような感覚。それが「潮目」の変化です。

それまで動かなかった巨石が動き始め、組織全体が一気に加速していく。私はこの魔法のような瞬間を体験するために仕事をしているのかもしれません。バラバラだったベクトルが一つになり、組織が生命体のように動き出す。この転換点を絶対に見逃さないことが重要です。論理や理屈だけでこの瞬間は作れません。人と人との間の微妙なせめぎ合い、そして互いの心を感じ取るセンシティビティが決め手になるのです。

人を見抜く眼力

廣瀬:「誰をバスに乗せるか」を判断される際の基準、どんな組織でも変わらない人材選定の秘訣はありますか?

吉本氏:言葉で説明するのは本当に難しいのですが、商社時代から「人は5分で見極めろ」と教わってきました。短い会話や所作、とくに「目の輝き」に注目します。目の奥に「ともに何かを成し遂げたい」という意志が見えるかどうか。これが最も大切な判断基準です。

互いに初対面でも、「この人とならやっていける」と直感的に分かる瞬間があります。その感覚を信じることが、チームビルディングの第一歩です。

廣瀬:このような人を見抜く感性、ソフトスキルを身に付けるコツはありますか?

吉本氏:正直なところ、明確な習得法があるとは言い切れません。生まれ持った資質なのか、幼少期からの経験の積み重ねなのか。理論書を学んで獲得できるようなものではないと感じています。

あえて言えば、日々の生活の中で、仕事の枠を超えて人と真摯に向き合う姿勢を持ち続けること。常に相手の立場で考え、心の動きに敏感になることが、徐々にこの感性を育む道筋なのかもしれません。

現場へ行くときや誰かと会うときは、まずその人の横に座る。自分のところに呼びつけたりはしません。同じ目線に立つことを日々意識しています。もちろん言葉遣いも丁寧に。基本は、相手への尊敬の気持ちを持つことです。

企業再建の極意

廣瀬:多くの会社を再建されている中で、まず取り組むこと、再建するために重要なことは何でしょうか?

吉本氏:やはり「人」です。もちろん戦略やビジネスモデルも普通に大事で、自分なりの筋書きを作りますが、一番思うようにならないのが人なのです。例えば経営陣が10人いたとして、ひとりも味方にならなければ成功確率は限りなくゼロに近い。

できれば3人は味方が欲しいですね。最低でもひとり、「この人なら一緒にやってくれる」という人を見つけることが重要です。この人選びを間違えると何もできません。そして、いかにその人を引き寄せるかが人間力の見せどころです。

相手は当然「この人は何を変えようとしているのか」と疑心暗鬼です。表面的な言葉では絶対についてきません。同じ目線に立ち、理屈ではなく気持ちでつながることが、その後の成否を大きく左右します。

人間力の本質

廣瀬:「人間力」について、より詳しくお聞かせいただけますか?

吉本氏:明確に定義したことはないのですが、強いて言えば「人を惹きつける力」でしょうか。ただ、上から引きつけるのではなく、相手も自分に寄ってきてくれるような関係性やケミストリーを醸し出すものだと思います。

ただし、ソフトスキルだけでは不十分です。基本は戦略やマーケティングといったハードスキルをしっかり押さえること。その上で腹落ちするようなストーリーを持ち、人を惹きつける。このセットが必要なのだと思います。

心理的安全性と厳しさのバランス

廣瀬:最近、心理的安全性が大切だという声がある一方で、部下を厳しく叱責する経営者の話も聞きます。この点についてはどうお考えですか?

吉本氏:仕事については妥協を許さずプロセスに対して厳しく臨んでいますが、部下には常に敬意をもって接しています。心理的安全性は絶対に大切です。ただし「安全」が「甘え」になってはいけません。人間の尊厳を大切にし、お互いを尊重しながらも、結果を出すことが重要です。

志とモチベーションの源泉

志とモチベーションの源泉

廣瀬:最後に、吉本さんの「志」、モチベーションの源泉を教えてください。

吉本氏:幼少期からのグローバルで仕事をしたいという思いは、単に海外に行きたいということではなく、世の中の役に立ちたい、少しでも世の為に貢献したいという気持ちからきています。

困っている会社を再建したり、素晴らしい技術を持ちながらも経営で他国に負けてしまう日本企業を再び強くしたいという思い。別に日本のためというより、人のためになればという思いが原点にあるのだと思います。

吉本氏:私もまだ日々奮闘している身です。高いところから語るのは本当に僭越で、まだ旅の途中だと思っています。

ただひとつ言えるのは、自分で後悔しないようにベストを尽くそうと思ってきたということです。変革エージェントが一番いい道だと皆さんに言っているわけではありません。それぞれのやり方があります。どんな道を選ぼうと、後悔しないよう全力でやれば必ずいいことがある。ありきたりですが、ベストを尽くせば後悔はないというのが私からのメッセージです。

体験クラス&説明会日程

体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。

「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。

STEP.1参加方法をお選びください

ご希望の受講形式と同じ形式での参加をおすすめしています。

STEP.2参加を希望されるキャンパスをお選びください

STEP.3日程をお選びください

絞り込み条件:

  • 5/7(水) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

  • 5/17(土) 14:00~16:15

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催) ※卒業生スピーチあり
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

  • 5/22(木) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

該当する体験クラス&説明会はありませんでした。

※参加費は無料。

※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。

※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。

※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。

スピーカー

吉本 浩之

株式会社エビデント 代表取締役社長兼COO

モデレーター

廣瀬 聡

グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長(MBAプログラム[英語])