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投稿日:2025年01月09日 更新日:2025年01月14日
投稿日:2025年01月09日
更新日:2025年01月14日
転職したら本当に幸せになれるの?――キャリア形成と働く個人の幸福度を考える
- 米良 克美
- グロービス・ファカルティグループオフィス
近年になって、より転職マーケットが活発化している
働く個人が自身のキャリアを築いていくオプションの1つとして、転職があります。総務省の労働力調査で見ると、2010年から2019年までの10年の間で転職者数は増加の一途を辿っています。コロナの影響もあってか2020年および2021年は2年連続の減少をしたものの、同調査における転職等希望者数は継続して増え続けており、働く個人の転職意欲が高まっている現状が示されています。
転職によって働く個人は幸せになっているのか?
このように近年になってより一般的な選択肢になっている転職ではありますが、「転職によるキャリア形成が働く人々の幸せにどのような影響を与えるか」については、未だ不明な部分も多いのが現状です。そこで我々が行ったのは、転職が働く個人の幸福度に与える影響を明らかにすることを最終目的としたアンケート調査です。
具体的には、日本で働く20代~60代の社会人に対してインターネットによるアンケート調査を行い、9,818名の有効回答を得ました。なお、主観的幸福度は世界幸福度調査にも用いられるキャントリルラダー11件法(最も不幸せ:0 ~ 最も幸せ:10)にて評価しました。
転職の理由によって個人の幸福度が異なる
一概に転職といっても、転職する理由は人それぞれです。そこで次に、転職理由と主観的幸福度との関係について調べてみました。その結果、転職したことがないと回答した群の幸福度スコア6.00と比較して、転職理由が「会社への不満・不安(5.47)」「仕事内容に対する不満(5.48)」「働き方に対する不満(5.48)」「職場の人間関係の不満(5.49)」「年収アップしたい(5.78)」と回答した群においては低い主観的幸福度を示しました。一方で、転職理由として「キャリアアップしたい(6.62)」「スキルアップしたい(6.34)」「新たなことに挑戦したい(6.44)」と回答した群においては、転職したことがない群より高い主観的幸福度を示しました。
転職理由がその後の幸福度をわける
日本は高い雇用保護が確立されていることから、今回の転職者における非自発的な転職は少ないものと推察されます。すなわち、今回の調査では、自発的な転職者が多い中においても、転職というキャリア選択が、年収や幸福度に対してネガティブに関連するという興味深い発見が得られました。転職理由と幸福度との関係について調べた結果から、職場不満をはじめとしたネガティブな理由での転職は主観的幸福度の低下につながることが示唆され、一方で、新たな挑戦などのポジティブな理由での転職は主観的幸福度の向上につながる可能性が示唆されました。
まとめ
今回は、日本で働く社会人を対象としたアンケート調査によって、転職というキャリアオプションと働く個人の幸福度の関連について検討しました。
今回得られた結果は、転職によってキャリアを広げていこうと考えている方にとってはドキッとするものだったかもしれません。本知見をどのように活かすかは読者のみなさん次第ですが、ぜひ幸せなキャリア形成を考えるための一助にしていただければ幸いです。
参考文献
米良克美,副業および転職が主観的幸福度に与える影響 ~日本で働く社会人を対象としたキャリアアンケート調査から~,グロービス経営大学院紀要 2024年3巻 p. 119-125
米良 克美
グロービス・ファカルティグループオフィス