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投稿日:2025年01月15日
投稿日:2025年01月15日
【卒業生インタビュー】ネクイノ 渡部弘一氏「医療とテクノロジーの力で婦人科医療の社会課題解決に挑む」
- 渡部 弘一
- 株式会社ネクイノ取締役/共同創業者
MBAの真価は取得した学位ではなく、「社会の創造と変革」を目指した現場での活躍にある――。グロービス経営大学院では、年に1回、卒業生の努力・功績を顕彰するために「グロービス アルムナイ・アワード」を授与している(受賞者の一覧はこちら)。
今回は2024年「創造部門」の受賞者、株式会社ネクイノ取締役/共同創業者の渡部 弘一氏にインタビュー。授賞式のスピーチで語った「世界に日本型の医療介護ソリューションを展開したい」という“志”に至った理由、そして今後の展望を聞いた(インタビュアー:金澤 英明)。
震災の中から再起した父の背中と医療業界へのキャリア
金澤:渡部さんが薬剤師を目指したきっかけは何ですか?
渡部:調剤薬局を起業した父の影響で、小学生の頃から、医療系に進むことを自然と考えていました。私が大学受験の年に阪神・淡路大震災が発生し、父の薬局も大きな被害を受けました。父は薬局を辞めることも考えていましたが、私が薬学部に合格した知らせを受け、事業を再開し町とともに復興を果たしました。その姿を見て、薬剤師として貢献し、父の後を継ぎたいという想いがさらに強まりました。
薬学部を卒業後、いずれ家業を継ぐことを視野に入れ、まずは社会経験を積むために医薬品卸売会社に入社し、約4年間営業職を経験しました。その後、父から新しい薬局を立ち上げる話があり、父の会社に入社しました。父の会社で経営を学ぶ中で、調剤事業という安定した収益基盤がある一方、新しい事業への挑戦が難しい現実を感じました。そんな中、父から「30歳までに独立するのがよい」と言われ、別会社を立ち上げることになり、ファインメディコムを創業しました。自分の裁量でできる会社を経営できたという経験での学びはとても大きく、現在の事業基盤を築く大きな一歩となりました。
医療から介護への挑戦で知った医療の本質と経営を学ぶ大切さ
金澤:創業後、調剤薬局事業から介護事業へと展開されましたが、事業モデルが異なる中で苦労はありましたか?
渡部:介護事業に挑戦したきっかけは、「調剤業界が未来永劫続くわけではない」という危機感からでした。医療と似ているように見える介護事業ですが、実際にはビジネスモデルや商習慣、働く人々の意識が全く異なることを痛感しました。調剤薬局ではカウンター越しに患者へ薬を手渡し説明するスタイルが主流でしたが、介護施設や在宅医療では、患者の衣食住、さらには終末期のケアまで包括的に支援することが求められます。こうした患者の生活全体を知ることで、人の生き方や死に方に深く関わる医療の本質を再発見しました。
しかし、当時の私は薬学しか学んでおらず、父から学んだ経営知識だけでは限界があることを感じていました。そこで、体系的に経営を学ぶためグロービス経営大学院の門を叩きました。現状を分析する力やイノベーションを起こす戦略の立案方法を学び、自らの事業を再構築する指針を得ました。とくにリーダーシップの授業で学んだ多くのケースや授業でメモをした教員の言葉は、苦しいときほど読み返しました。人の失敗や挑戦には、必ずヒントが隠れていて、新たな気付きや勇気を得る大きな支えとなりました。
また、グロービスで得たネットワークも大きな財産です。医療関係の仲間たちとともに、医療介護の勉強会やワーキンググループを立ち上げ、そこで介護事業や在宅医療に興味を持つようになりました。すでにこれらの事業を起業している仲間も多く、仲間たちの後押しもあり、介護業界への挑戦を始めることができました。同じ志を持つ仲間の存在が、私の挑戦を支える大きな力となりました。
オンライン診療への挑戦の過程で見出した婦人科領域の社会課題の解決
金澤:ここから医療をテクノロジーで課題解決する道へ進まれましたが、どのような経緯でしたか?
渡部:医療介護の勉強会で、関西の別のMBAに通っていた石井 健一氏(株式会社ネクイノ 共同創業者)と出会い、2015年に厚生労働省が発出した遠隔医療に関する通知を受け、「オンライン診療事業を一緒にやらないか」と誘われたのがきっかけです。私はオンライン診療の可能性を以前から感じており、その日のうちに決断しました。
オンライン診療は、すでにBtoB(病院)向けの事業を大きく展開している企業があったので、BtoC(患者)に重きを置いた独自のビジネスモデルを模索する必要がありました。当初は慢性疾患や生活習慣病に注目していましたが、なかなか成果が出ませんでした。資金も尽きかける中で、患者の心理的・物理的な壁を取り除くことの重要性に気付き、婦人科領域のピル処方に注目しました。
インターネットの特性上、心理的にも物理的にも直接 医療機関に行けない、何かしらのハードルがあって行くことができないというニーズに応えることが重要であると分かりました。生理に悩む女性は、仕事のパフォーマンスが低下したり、休まざるを得なかったりします。痛みを和らげるために薬を飲まなければならないなど、とてもつらい状況に置かれているのです。経済的な損失は約7,000億円とも言われています。さらに、産婦人科医はほかの診療科に比べて数が少なく、女性特有のがんや出産、周産期医療、更年期障害の治療を行いながらピルの処方も担っています。諸外国ではピルがドラッグストアで販売されている国もあり、必ずしも婦人科の専門にとらわれず、診断・処方可能な医師を増やせるのではないかと考えました。オンライン診療を活用することで、医師側と患者側の双方に存在する課題を解決できると考えました。
こうして、婦人科受診のハードルを解消し、生理による経済的損失や婦人科医のリソース不足といった社会的課題を解決するため、スマホでピルの相談・診察・処方まで一貫して行えるオンライン・ピル処方サービス「スマルナ」を立ち上げ、現在アプリのダウンロード数は130万を超えています。
共同創業者としてリーダーを支えながらも、ビジョン実現に向けて信念をもって戦略描き実行する
金澤:渡部さんは経営者としてどのような存在でありたいですか?
渡部:一緒に起業した石井氏は、ビジョナリーであり、人を惹きつける力を持ったリーダーです。私は、彼がそのリーダーシップを発揮できるよう、一番のフォロワーとして補完する役割を徹底しました。自分自身は夢を描くよりも、戦略を立てて現実の中で実行しきるほうが好きですし、得意です。
現実社会は甘くありません。そのため、清濁併せのみながらも現実の中で実行しきることにこだわり、その中でも自分の義や信念を貫きたいと思っています。歴史上の人物でいうと、戦国時代の戦略家として中国地方を平定し、領民からも信頼が厚かった毛利元就が好きですね。
医療分野は命に関わるため、オンライン診療においても適切な領域や薬を慎重に選定する必要があります。だからこそ、厚生労働省や医師会をはじめとするステークホルダーとの調整を丁寧に進めながら、現実を踏まえた戦略を立てて挑戦を続けています。
世界に日本発の医療ソリューションを展開したい
金澤:これからの方向性や志を教えてください。
渡部:ネクイノは、「世界中の医療空間と体験をRe Designする」というミッションの実現を目指しています。コロナ禍を経て、オンライン診療は以前よりも認知され活用されるようになりましたが、社会実装はまだこれからの段階です。医療を身近なものにするためには、オンライン診療が当たり前の医療体験となり、その普及をさらに進めていく必要があります。まずは、日本国内の婦人科領域が抱える社会課題を解決すべく邁進していきたいと思います。
また、私はグロービス卒業時に「世界に日本型の医療介護ソリューションを展開したい」という志を立てました。日本は高齢化社会の課題に先駆けて取り組んできた国です。そこで培った医療ソリューションは、日本国内だけでなく、今後同じ課題に直面する東南アジアや諸外国にも展開できると考えています。数年前、ミャンマーで会社を設立しようと試みましたが、クーデターが起こり、残念ながら2週間後に撤退せざるを得ませんでした。しかし、東南アジアでは宗教上の理由から女性の生理、妊娠出産、避妊がタブー視されている部分も多く、日本の正確な医療知識とオンライン診療が役立つと確信しました。東南アジアでミャンマーを選んだ理由の一つは、親日国家であり仏教国という点です。日本との親和性が高く、市場規模が比較的小さいため、マーケティングの展開がしやすいとも考えました。
さらに、私個人にとって特別な背景もあります。私の祖父は太平洋戦争のインパール作戦でミャンマーに遠征し、命からがら帰還しました。この話は私の中でずっと大きな存在でした。実際にミャンマーに赴いた際、現地の方々に祖父の話をすると、「日本人からの奨学金のおかげで医者になれた」という話を聞き、その集まりに招かれました。日本人への感謝を涙ながらに語り、固い握手を交わしてくれた人々の姿に、私も感極まって涙を流したことを今でも忘れられません。この経験を通じて、私は日本の医療を世界に展開するという志を、どうしても実現させたいと強く思っています。
金澤:渡部さんのルーツに深く関係する志ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。
体験クラス&説明会日程
体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。
「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。
STEP.3日程をお選びください
体験クラス&説明会とは
体験クラス
約60分
ディスカッション形式の
授業を体験
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスならではの授業を体験いただけます。また、学べる内容、各種制度、単科生制度などについても詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。
説明会のみとは
学校説明
約60分
大学院・単科生の概要や
各種制度について確認
グロービスの特徴や学べる内容、各種制度、単科生制度などについて詳しく確認いただけます。
※個別に質問できる時間もあります。なお、体験クラスをご希望の場合は「体験クラス&説明会」にご参加ください。
オープンキャンパスとは
MBA・入試説明
+体験クラス
大学院の概要および入試内容の
確認やディスカッション形式の
授業を体験
卒業生
パネルディスカッション
卒業生の体験談から
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※個別に質問できる時間もあります。
該当する体験クラス&説明会はありませんでした。
※参加費は無料。
※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。
※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。
※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。
渡部 弘一
株式会社ネクイノ取締役/共同創業者