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投稿日:2023年12月26日  更新日:2024年01月11日

投稿日:2023年12月26日
更新日:2024年01月11日

「経営を教える会社」の学び方とは

嶋田 毅
グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

今年11月発売の『経営を教える会社の経営』から「CHAPTER5育成・能力開発 2.育成・能力開発」の一部を紹介します。

資本集約型のビジネスではなく、人が生み出す価値こそが大きな比重を占めるビジネスを営んでいるグロービスは、人材開発に熱心に投資をしています。事業部ごとの研修・トレーニングを行うのはもちろんのこと、本人が希望する自己の能力開発に年間20万円まで補助を行っています。これは一般企業の5倍から6倍になります。また、「GLOBIS 学び放題」のような本来有料のサービスを経営の勉強のために無料で視聴できるようにするなどの取組みも行っています。

「経営学を教える企業」だからこそ、「経営(学)の分かる人材」を育てることにエネルギーを使っているのです。 (このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

育成・能力開発制度

ここからは、グロービスにおいては、社員にどのような能力開発の機会を提供しているかを紹介します。

●集合型研修

グロービスの社内研修は、人事部が主催する研修と、事業部制を採っているが故の各事業部が主催する研修の2種類に大きく分けることができます。

人事部が主催する研修には、階層研修(1年目研修、3年目研修といった人社後一定期間が経過した方が一斉に受講する研修)や新しく管理職になる方が受講する新任マネジャー/チームリーダー研修といったものがあります。他にもグロービスらしい営みとしては、読書会だとか、宿泊型のオールスタッフ・リトリート(経営合宿)といったものまでありますが、これらの人事部が主催する研修の多くは能力開発以上に組織文化を醸成する意味合いが強いため、ここではその詳細は割愛し、組織文化醸成について記述するCHAPTER8で詳細を説明します。

一方で、各事業部が主催する研修は、その事業特性を踏まえて必要な能力開発を行うことを主軸に行われます。例えば、法人事業部においては、クライアント企業の課題を深掘りし具体的なニーズを把握するためのロールプレイング型研修や、クライアント企業に提供するテイラーメイド型のソリューションをゼロから生み出し設計に落とし込むための設計力強化研修等を実施しています。

他にも、講師育成やコンテンツ開発部門においては、経営大学院の教員や企業研修の講師として登壇できるようにするための独自の講師育成プログラムや、コンテンツ開発トレーニングのプログラムを有しています。これは、グロービスのプロフェッショナル職には、経営全体に責任を持つことが期待されているため、マネジャーに昇格するにあたっては、単にマネジメントができるだけでなく、経営教育の最前線に立てる高い講師力やコンテンツ開発力を求めているためです。

グロービスは人材育成・組織開発のプロ集団であるため、これらの研修のほぼすべては内製でつくり込み、先輩社員が新しく入ってきた社員に対して教えることで、スキルやノウハウを伝承していきます。

それぞれの匠の技(スキル)を身につけ一流になっていくためのステップは、仕事においても、武道や芸術と同様に守破離という過程を踏むことが重要です。特にこうした能力開発のための研修においては、守破離の「守」に主眼を置いて、まずは基本的な型を会得できるようにプログラムを組んでいます。

●各種プログラム派遣

グロービスにおいて社員の能力開発のために用意しているプログラムは、社内のお手製プログラムばかりでなく、外部のプログラムを含めた様々な良質な場に社員を派遣することを積極的に行っています。どのようなプログラムに派遣しているかについては、次節で紹介します。

●自己啓発支援

グロービスには、会社が指定するプログラム以外にも、白分が必要と考える外部プログラムを(最低限の諸条件を満たせば)自由に選択し受講できる制度として、自己啓発支援制度を用意しています。この制度は、今取り組んでいる目の前の業務への必要性というだけでなく、自分の中長期キャリアのために必要と考えられる能力の開発を組織的に支援することを目的として用意している制度です。

この自己啓発支援制度により支援する能力開発内容は、現業務に直接的に反映されるものとは限らないことから、業務指示として受講してもらう業務研修とは扱いが異なり、半額は会社が負担し、もう半額は本人が負担する形にしています。半額を自己負担とすることで、より真剣に受講プログラムに向き合い、しっかりと自分のスキルヘと昇華する意識を持って臨んでもらうようにしています。

この制度は無制限に使用できるわけではなく、年問の一人当たりの利用上限を最大20万円までと定めています。これは年間の利用上限につき、個人としては毎年20万までは利用する権利があるということです。日本企業の一人当たりの教育研修予算が3万~4万円であることに鑑みると、これだけで20万円を出してもらえるというのは、個人的にもとても有難い制度として活用させてもらっています。目の前の業務に直結はせずとも自身の中長期キャリアのために必要な支援を組織にしてもらえるということで、利用しない手はない制度になっています。

●いつでも好きな時に学び続けられる環境づくり

これまでに紹介したプログラムはいずれも一度受講し終えたらそれで終了するものや、受講タイミングはそのプログラムを提供する組織が用意するタイミングに合わせる必要があるものばかりでした。ただ、これからは人生100年時代における生涯学習が求められる時代につき、時間的な制約なく、いつでも自分が好きな時間に学び続けられる環境を用意することも重要だと考えています。

この課題意識をもとにクロービスが開発したデジタルサービスが、「GLOBIS 学び放題」であり、「GLOBIS Unlimited」であるため、この2つのサービスはグロービスのスタッフであれば全員がいつでも利用できるようにすることで、隙間時間も活用しながら最新のビジネス知識を幅広く得ることができるような環境を提供しています。

こういった学び放題のデジタルサービスの良さは、隙間時間も含めていつ何時であろうと学ぶことができること、自分の興味関心や問題意識に応じて学ぶ領域を柔軟に変えられること、何度も見返すことができるため記憶の定着が図れること等、様々ありますが、これからの時代における能力開発において、こういった便利なサービスをどう活用し切れるかがより一層重要になってくることでしょう。

経営を教える会社の経営: 理想的な企業システムの実現

著:グロービス 、 内田圭亮 発行日:2023/11/8 価格:1,980円 発行元:東洋経済新報社

嶋田 毅

グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長