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投稿日:2023年12月12日  更新日:2024年01月11日

投稿日:2023年12月12日
更新日:2024年01月11日

採用を人事部任せにしていませんか

嶋田 毅
グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

今年11月発売の『経営を教える会社の経営』から「CHAPTER3採用 3.採用における責任と体制」の一部を紹介します。

日本の多くの企業では、採用は本社が一括して窓口になり執り行うというケースが散見されます。もちろん、各事業部や部署の要求は聞くものの、基本は人事主導で採用を進めるわけです。この方法にももちろんメリットはありますが(例:事業部の人間が本業にフォーカスできるなど)、往々にして採用に関する当事者意識が弱くなったり、希望通りの人材が採用できなかった場合、人事のせいにしがちになるなどのデメリットもあります。グロービスではこうしたデメリットを避けるため、「自部門の採用は自己責任で行う」というポリシーをとっています。人事の採用担当と協力はするものの、あくまで採用の主役は自分たちである、という意識が徹底することで、「時間をかける以上は良い人材をしっかり採用し、教育をして戦力化しなくてはいけない」という考え方が隅々にいきわたるのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

自部門の採用は自己責任

グロービスには全社共通の人事機能があり、そこに採用業務に特化した採用チームがあります。ただ、採用に関しては、その採用チームのみが携わるのではなく、「自部門の採用は自部門の責任で行うもの」として、各事業部門が自部門の採用に深く関与しています。「自由と自己責任」という言葉は、各個人に対して適用されている考え方ですが、同様に各部門(組織)にも適用されているのです。

故に、自部門が人員を増やしたいという場合には、自部門の責任で採用にコミットすることが求められます。こうすることで、自部門の人員が足りないことを他責(人事のせい)にすることなく、自部門の組織は自分たちでつくっていくということに対して、より高い当事者意識が生まれます。当事者意識が高まれば、当然その業務に対するマインドシェアが高まり、その業務の質やスピードが上がっていきます。よって、各事業部門の中でも採用責任を担う人をアサインし、ライン業務と並行して採用の任務に当たってもらっています。

具体的に、グロービスの採用に関して、人事部(採用チーム)と各事業部がどのように役割分担をしているかを説明します。まず探用チームが各事業部に対して、どのポジションに、何名、どのような要件で採用をかけたいかを確認し、採用計画を両者で握ります。その上で、採用チームが行っている全社共通の施策に則って採用を進めるのか、事業部独自の採用手法を採るのか、はたまたそれらを組み合わせるのか、といった採用戦略と役割分担を定めます。母集団形成や採用エージェントとのやり取り、全体のオペレーションについては、採用チームが担いますが、採用候補者へのスカウトを始めとしたコンタクトや面接は、採用チームと事業部門が協働で行っています。

このように、右肩上がりに成長し続けているグロービスにとって、採用は常に重要な経営課題であり続けているため、採用を加速させるために合理的な責任体制を敷いています。

全員が採用当事者

グロービスでは、採用チームだけでなく、各事業部の中で採用責任者を決めているという話をしましたが、これはその方の業務役割として、明確に採用の役割を担ってもらうことを決めているものになります。ただ、重要な採用活動をより力強く推進するために、グロービスではそうした一部の採用責任者のみならず、全社員が採用を自分事として捉え、その重要な経営課題に誰でも貢献してもらえるような制度・環境を整えています。

具体的には、リファラル採用の一環で、自身の知人・友人を採用候補者として紹介してもらい、採用が決定した暁には紹介者・入社者それぞれに金銭的メリットが生まれる制度を導入しています。グロービスでは、このリファラル紹介制度のことを全員のご縁を繋いでいく営みとして「GO縁制度」と名付け、全社運動論として展開しています(この「GO縁制度」という名称も社内募集をかけて選考することで、多くの社員に採用活動を自分事として感じてもらえるようにプロセス設計から大事にしています)。

「GO縁制度」は、採用加速に効いていることはもちろんですが、それだけでなく、入社年次に関係なく貢献できる仕組みとなっているため、新入社員でも組織課題に大きく寄与できる実感を得られる点がとても良いと感じています。

社員それぞれに得手不得手がある中で、その一人ひとりが、自分が貢献でき、かつ、会社にとって意義がある活動に関与してもらえるかが、経営の腕の見せ所であると感じます。採用活動の中でも、リファラル採用は本人が繋がりを持っているネットワークの中から紹介していく特性上、年次の高い社員よりも若手社員の方が自分の立場を活かしやすい側面が多分にあります。是非、多くの社員が経営に影響を与えられるような意義深い活動に従事してもらえるように工夫していきたいものです。

経営を教える会社の経営: 理想的な企業システムの実現

著:グロービス 、 内田圭亮 発行日:2023/11/8 価格:1,980円 発行元:東洋経済新報社

嶋田 毅

グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長