GLOBIS Articles

  • テクノロジー
  • キャリア

投稿日:2023年12月21日

投稿日:2023年12月21日

【対談】エンジニアがキャリアアップするためには?
採用市場から紐解く、これから身に付けるべきスキル(後編)

末永 昌也
グロービス・デジタル・プラットフォーム CTO
加藤 想
グロービス経営大学院 スチューデント・オフィス
エンジニアがキャリアアップするためには

音声メディアVoicy「ちょっと差がつくビジネスサプリ」特別対談企画として、エンジニアとしてキャリアを歩んできた末永 昌也(グロービス・デジタル・プラットフォーム CTO)にインタビューを行いました。「エンジニアとして今何が求められているのか」「この先どのようなスキルアップ・キャリアアップを考えていくべきなのか」といったことを前編と後編に分けてお届けします。

※音声で聞きたい方はこちら

MBA取得のきっかけ

技術力だけでは打破できない壁

加藤:ここからは末永さん個人のお話についてお伺いさせてください。もともと末永さん自身はテック分野に関してかなりいろんな勉強もされていて、実績もあるような状態だったと思うのですが、その後どうしてMBAを学ぼうと思ったのでしょうか。

末永:グロービス経営大学院の英語MBAプログラムを修了したのですが、通い始めた理由としては前職のCTO(最高技術責任者)としての経験が大きかったです。まずひとつは、CTOという立場になると、プロダクトを作ったり技術力を上げたりするだけではやっていけなかったんですよね。

CTOを務めていた当時、投資家の方向けに話をしたり、CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)と今後の事業戦略をどうするかみたいな話をしたりしないといけない。そこで、ビジネスにおける明確な考えやアウトプットが出せないと、CTOとしては意味がない、もっと言うと価値を発揮できないんですよね。

当時、私は経営に関する十分なスキルを持っていなくて、その中でもとくにファイナンス領域が分からなかったんですよ。スタートアップ向けだと『起業のファイナンス』という本が有名だと聞いて自分で読んでみたりもしました。しかし、単なる知識をインプットするだけではよく分からなかった、というのが正直なところだったんです。そこで本当に実践的な学びを得るために、MBAに通い始めました。

英語MBAプログラムを選択した理由

末永:なぜ英語MBAプログラムだったのかについては、「エンジニアはコミュニティが強い」ということが関係しています。エンジニア関係のカンファレンスなどに行くとグローバルな方々がいて、英語で会話をしている場に遭遇します。私は海外に留学した経験もなければ、海外旅行の経験もほぼなかったので、英語で会話したりビジネスを推進したりということも当然ありませんでした。

なかなかエンジニアのコミュニティに入っていけないというところに、すごいもどかしさを感じたんですよね。それで英会話など、独学で英語を勉強していたんですけど、結構限界もあって。より実践の中で英語力を身に付けたいという思いもあって、今考えると若干無謀だったなと思うんですけど「英語でMBAを取る」というチャレンジをしました。

MBAの学びを実務に活かす

経験したことのない状況でも成果を出せるように

加藤:ちなみに、MBAの学びをその後活用できるシーンはありましたか?

末永:実際にMBAを取得して非常によかったなと思っています。1社目が社員数30~50人くらいのベンチャー企業で、2社目は自分で会社を立ち上げた10人ちょっとくらいの組織しか経験していない中で、現在はエンジニアだけで100名を超えるような組織をリードする立場を任されています。

立場が変われば、やっていること、考えるべきこと、発信しなければいけないことって結構違うんですよね。大規模な組織を率いるという自分が経験したことのない状況においては、これまでのやり方から変えなければならないことは明確にあると思っています。そうした未知の状況でも組織として一定の成果を出せているのは、やっぱりMBAで学んだことが支えになっているからだと感じています。

戦略や組織に合わせたリーダーシップスタイル

加藤:先ほどの“変えなきゃいけない部分”というのは、組織の規模が大きくなるにつれて、リーダーシップの発揮の仕方を変えていくというイメージですか?

末永:まさにそうだと思います。例えば小さい組織であれば、ダイレクトマネジメントみたいなことが上手くワークすると思います。もっと言うと、個人のタスクをしっかりとマネジメントすればプロダクトが成長していくんですよね。中規模な組織でいくと、個々のメンバーはリーダーに任せて、チーム単位で組織をマネジメントしていくという形になっていきます。

今のような100名を超える大きな組織で言うと、それこそ俯瞰した状態から戦略や組織を見ていかなければいけません。このように組織の規模によって、リーダーシップスタイルは全く異なると思うんです。

きっとMBAで学んでいなかったら、「なんかよく分からないけど、うまくマネージできない」という状態になっていたんだろうなと思います。よくスキルレベルについて、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルのように階層立てて説明されますが、まさに今はコンセプチュアルスキルのような「考える力」の必要性を強く感じています。マネジメントの在り方について、MBAから多くのことを学ばせてもらったなと思いますね。

これからのエンジニアに求められるものは?

戦略や企画への理解

加藤:これからのエンジニアの方に求められるものについてどうお考えでしょうか。日本国内だけ見るとどこもエンジニア不足で、売り手市場・引く手あまたな状態だと思いますが、今後長期視点で考えたときに必要になってくるスキルや考え方があればお伺いしたいです。

末永: ChatGPTのような最新ツールをどんどん活用する姿勢というのは、エンジニアにとって非常に大事ですね。それこそテクノロジーの進化によってプロダクト開発はラクになっていると思っているんですね。

世の中のデザインツールやプロトタイピングツールも本当に進化していますし、これから生成AIがもっと進化して「画像をアップロードすればそれなりのモックアップを作ってくれる」ぐらいのところまでできるようになり、プロダクト開発のコストがかなり下がっていくと思います。

そうなると今後は、「何を作るべきか」という企画などの上流フェーズをビジネスサイドの方と一緒にやっていくことがより求められるのではないでしょうか。「こういうことをやりたいんだけど、技術でどう解決したらいいか分からない」というビジネスパーソンの方は多いと思います。そうした方としっかりコミュニケーションしながら、戦略や企画を考えていくことが大事になってくると感じています。

ビジネスとエンジニアリングの越境

加藤:そういう意味でいくと、ある意味ビジネスサイドのほうもChatGPTのおかげで、専門知識がなくてもある程度のアウトプットは出せるようになっているので、双方で議論しながら進めていくというのは非常に大事ですよね。

末永:私もそれは期待をしていて、ビジネスパーソンの方もエンジニアリング的なことが分かりやすくなったのが最近だと思っています。例えばプログラムのソースコードを見ても、ビジネスパーソンの方は何が書いてあるかよく分からないことも多いのではないでしょうか。しかしこれをChatGPTに入れることで「これはこういうことをしているものです」と分かりやすく教えてくれたり、「これをこう改善したいんだけど、どうしたらいい?」と聞くと答えてくれたりするんですよね。

これから先は、そうしたビジネスとエンジニアリングの越境が本当に大事になってくる世の中だと思っています。だからこそエンジニアもビジネスサイドの方も、そうしたテクノロジーをどんどん使ってほしいですね。

相手を動かすためのコミュニケーション

加藤:ちなみにエンジニアの方が、上流の企画や課題設定、要件定義といった領域にもしっかり入っていくために、まず学ぶべきことやするべきことは何でしょうか。

末永:ちゃんとコミュニケーションを取ること、ですね。MBAの学びに引き寄せて考えると、「コミュニケーションは何のためにやりますか?」ということだと思っています。

「自分に都合のよい方向に持っていく」とか「相手を論破する」みたいなことではなくて、相手に動いてもらうためにコミュニケーションすることが大事だと「クリティカル・シンキング」や「ビジネス・プレゼンテーション」から学びました。最終的なゴールをどこに定めるのか、そしてそれを意識した上でコミュニケーションしていくことが大事だなと思います。

例えば、難しい言葉やエンジニアにしか伝わらない専門用語を使っても、それでは相手に伝わらないし、動いてもらえないんですよね。こうしたことを強く意識することがすごく大事だと思います。普段のコミュニケーション一つ一つが成果につながり、それが信頼となり、周囲とのよい関係性になっていくのではないでしょうか。

「モノを作る」時代から「価値を作る」時代へ

加藤:ありがとうございます。それでは最後に、エンジニアの方向けに何かメッセージがあればお願いします。

末永:エンジニアの中には、技術力を高めたいという方は多いと思います。しかし、これからは新しいことや大きなことに挑戦しようとすると、ビジネスへの理解やビジネスサイドの方とのよい関係性が必要になると思います。「モノを作る」時代から、「価値を作る」時代になってくるので、ビジネスサイドの方と協働しながらよいプロダクト、よい社会を皆さんと作っていけると嬉しいです。

加藤:ありがとうございます。今日はエンジニアの方向けというところで、今後何を求められているのかというテーマでお話をしてきました。ビジネスサイドの方にもヒントとなるような内容がいっぱいあったと思いますので、何か参考になれば嬉しく思います。末永さん、どうもありがとうございました。

末永:ありがとうございました。

体験クラス&説明会日程

体験クラスでは、グロービスの授業内容や雰囲気をご確認いただけます。また、同時開催の説明会では、実際の授業で使う教材(ケースやテキスト、参考書)や忙しい社会人でも学び続けられる各種制度、活躍する卒業生のご紹介など、パンフレットやWEBサイトでは伝えきれないグロービスの特徴をご紹介します。

「体験クラス&説明会」にぜひお気軽にご参加ください。

STEP.1参加方法をお選びください

ご希望の受講形式と同じ形式での参加をおすすめしています。

STEP.2参加を希望されるキャンパスをお選びください

STEP.3日程をお選びください

絞り込み条件:

  • 11/16(土) 10:00~12:00

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

  • 11/21(木) 19:30~21:30

    体験クラス&説明会

    開催:オンライン(Zoom開催)
    本科(MBA)への進学を検討している方・進学を視野に単科で1科目から学び始めたい方向け

  • 11/30(土) 13:00~16:00

    オープンキャンパス

    開催:オンライン(Zoom開催) ※体験クラス・卒業生スピーチあり
    本科(MBA)への進学や入試への出願を検討している方向け

該当する体験クラス&説明会はありませんでした。

※参加費は無料。

※日程の合わない方、過去に「体験クラス&説明会」に参加済みの方、グロービスでの受講経験をお持ちの方は、個別相談をご利用ください。

※会社派遣での受講を検討されている方の参加はご遠慮いただいております。貴社派遣担当者の方にお問い合わせください。

※社員の派遣・研修などを検討されている方の参加もご遠慮いただいております。こちらのサイトよりお問い合わせください。

末永 昌也

グロービス・デジタル・プラットフォーム CTO

東京工業大学 工学部卒、東京工業大学大学院 情報理工学研究科修了。グロービス経営大学院 経営学修士課程(英語MBA Program) 修了。

Startup Weekend世界大会入賞を機にEdTechサービスを手がける株式会社LOUPE(現ARROWS)を共同創業。CTOとしてプロダクトの新規立ち上げ、技術リードを行う。グロービスに入社後はグロービス学び放題等の立ち上げに関わり、現在はグロービス・デジタル・プラットフォームにおける開発統括を行う。

加藤 想

グロービス経営大学院 スチューデント・オフィス

神戸大学工学部卒業、同大学院工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。

大手通信会社にて設備設計業務、採用活動に従事した後、サービス戦略部門にて新サービスの立案、AI、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院の学生募集企画にて学生のキャリア相談、新規施策立案などを行っている。また、グロービス経営大学院のVoicy「ちょっと差がつくビジネスサプリ」のパーソナリティを務める。