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投稿日:2023年07月07日

投稿日:2023年07月07日

事実と意見をバランスよく組み合わせよ

嶋田 毅
グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長

今年5月発売の『入社1年目から差がつく ロジカル・アウトプット練習帳』から「Lesson07 事実に意見を乗せる」の一部を紹介します。

「それってあなたの感想ですよね」という有名人のフレーズが小学生の流行語ランキングの1位になったというニュースがありました。この言い方そのものを真似するのはお勧めしませんが、事実(根拠)がないのに意見や感想だけを述べられても困るのは実際その通りです。

一方で、事実だけを淡々と述べられても聞き手は「だから何なの(So What?)」という気持ちになります。「So What?」をギリギリと問い詰められるのは、新人のコンサルタントなどが最初に浴びる洗礼でもあります。

つまり、何か大事なことを伝える際には、事実だけでも意見だけでもダメであり、それをバランスよく組み合わせて納得感を生み出す必要があるのです。人は往々にして「このくらいは察してくれるだろう」あるいは「そんなこと言わなくても大丈夫だろう」と考えがちですが、それは間違いです。相手の立場や持っているであろう情報を推し量りつつ、適切なバランスで事実と意見を組み合わせるように意識しましょう。 (このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

◇    ◇    ◇

事実に意見を乗せる

「事実と意見を混ぜて話をしない!」「それは、意見であって、事実ではないだろ!」「事実はわかったから、で、意見は何だ!」いずれも一度は耳にしたことのあるやりとりではないでしょうか。「事実と意見は、違う」。よく言われる言葉ですが、事実とは何で、意見は何なのでしょうか。事実と意見の違いを踏まえて、どのように伝えていけばよいのでしょうか。

事例:どちらの方が「伝わる」報告か?

あなたは、昨日実施したセミナーについて上司に報告しなければなりません。次のAとB、どちらの報告がよいでしょうか。

A「昨日実施したセミナー、参加者は50名でした」
B「昨日実施したセミナー、多くの方が参加してくれました」

AとBの違いをここでは「事実」と「意見」という視点で考えてみることにします。Aの内容は、「参加者は50名であった」という「事実」が語られています。事実は、誰が語っても同じ内容になるものです。

一方、Bの内容は、「参加者が多かった」ということが語られています。Aは、「50名」という誰が語っても同じ内容でしたが、Bは「多い」という、語り手の「意見」が話されていることになります。「50名が多い」のかどうかは、人によって変わる可能性があります。今、自分が話をしようとしている内容は、「事実」なのか「意見」なのかをまずきちんと分けて認識できるようにしましょう。

では次に、聞き手の立場から報告を受けた場合にどのように感じるかという視点で考えてみることにします。

Aの「昨日実施したセミナー、参加者は50名でした」と聞いた場合、過去のセミナーの実施状況を知っている人であれば、50名が多いのか少ないのか判断ができます。ただ、過去の様子などを知らない人にとっては、「50名」という数字をどう評価すればよいのかがわかりません。

Bの「昨日のセミナー、多くの方が参加してくれました」は、「多い」という語り手の評価が入っています。意味合いが伝わるため、聞き手はどう受け止めればよいのかがわかります。一方で、今度は逆に何をもって「多い」と言っているのかがよくわからないということになります。 つまり、事実のみを伝えると「だから何なんだ?」と意見が求められ、意見のみを伝えると「大元の事実は何なんだ」と事実が求められることになります。したがって、事実と意見どちらか一方のみでよいということではなく、両方を揃えて、伝えるということを意識していくようにしましょう。

POINT
  1. 自分の言っていることは、事実なのか意見なのか、確認する
  2. A 事実の場合は、その事実に対して自分がどのような意見を持っているのかを明らかにする
  3. B 意見の場合は、何かその意見を導き出している事実だったのかを明らかにする
  4. 事実と意見を揃えて、伝える

入社1年目から差がつく ロジカル・アウトプット練習帳

著・編集:グロービス (著)、岡重文(著) 発行日:2023/5/31 価格:1,760円 発行元:東洋経済新報社

嶋田 毅

グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長