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投稿日:2023年06月23日
投稿日:2023年06月23日
コミュニケーションの効果は受け手が決める
- 嶋田 毅
- グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長
今年5月発売の『入社1年目から差がつく ロジカル・アウトプット練習帳』から「Lesson02 一人ひとりに合わせることをさぼらない」の一部を紹介します。
人間は往々にして自分が伝えたことは間違いなく相手に伝わっている、さらには自分が意図したとおりに理解されていると考えてしまいます。しかしこれは全くの誤解です。仮に同じ内容を同じやり方で伝えたとしても、相手の状況によって、相手の受け取り方は一人ひとり異なるのが現実です。
実際、同じ状況に置かれている人間はいません。持っている知識は一人ひとり異なりますし、与えられた仕事や組織の中での立ち位置など、誰一人として同じではないのです。
それゆえ、何かを伝えるときには相手の立場を理解したうえで、適切な方法で伝えるということが必要になってきます。この部分をさぼってしまうと、相手に趣旨が伝わらなかったり、相手の機嫌を損ね、仕事が円滑に進まないということも起きかねません。現実には完全に一人ひとりの状況を把握するのは難しいですが、それでも個々人に合わせたコミュニケーションを心がけることはビジネスパーソンとしての基本なのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、東洋経済新報社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
◇ ◇ ◇
一人ひとりに合わせることをさぼらない
コミュニケーションの鉄則は、受け手絶対主義です。ということは、受け手によって、答えが変わるということ。したがって唯一の正解はない訳ですが、だからといって、一人ひとりに合わせることをさぼっていては上達は見込めません。では、相手に合わせる際に、どのように合わせていけばよいのでしょうか。一人ひとりに合わせるために、何を合わせればよいのでしょうか。
事例
早速、1つの事例で考えてみましょう。
- A社は重要顧客である
- A社から来てほしいと連絡が入った
- 午後のミーティングを別の日に変えてほしい
この3つの情報をいつも課内のミーティングで一緒になることが多いXさんに対して報告するとした場合、どの情報は省略が可能でしょうか。ミーティングの内容にもよりますが、A社は重要な顧客であることはおそらく理解されていると考えてもよさそうです。そう考えると、
「午後のミーティングを別の日に変えてほしい、A社から来てほしいと連絡が入ったので」
もしくは、
「A社から来てほしいと連絡が入ったので、午後のミーティングを別の日に変えてほしい」
と伝えることになります。
もしこれが、ミーティング相手である他部署のYさんに対する報告であった場合、どうなるでしょう。仮に同じように報告をしたとします。「午後のミーティングを別の日に変えてほしい、A社から来てほしいと連絡が入ったので」。Yさんはどのように思うでしょうか。「自分との約束よりもA社の方を大切にしている」といった心情を少なからず抱くことになります。
一般論として、社内の関係者より顧客を優先するという考え方はあり得ますが、なぜA社を優先させるのかということについて、きちんとした理由があった方がよさそうです。A社が重要顧客であるということをきちんと伝えることが必要です。
さて、この事例で起こったことを整理しておきます。伝える情報の候補は、Xさんに対してもYさんに対しても同じです。ただ、いつも課内のミーティングで情報が共有できているXさんに対しては、既に知っていると思われる情報については省略が可能でした。 一方、他部署のYさんに対しては、すべての情報を伝える必要があったということです。これはつまり既に相手が知っていると想定できる情報は省略することができるということです。
- 言いたいことの全体像を考える
- 相手が既に知っている可能性のあるものを明確にする
- 省略可能かを判断する
- 相手が知らないことを中心に話をする
著・編集:グロービス (著)、岡重文(著) 発行日:2023/5/31 価格:1,760円 発行元:東洋経済新報社
嶋田 毅
グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長