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投稿日:2022年06月10日

投稿日:2022年06月10日

【学び直し】閉塞感を打破し、キャリアにポジティブな変化を起こすには

パンデミックやDXの浸透などビジネス環境の変化は激しさを増し、ワークスタイルも大きく変わった。先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代。自らの市場価値や将来のキャリアに漠然とした不安を抱いているビジネスパーソンは少なくないだろう。

本記事では、国内最大の学生数を誇るビジネススクールであるグロービス経営大学院の卒業生、本田慎二郎氏(株式会社ユニクロ カスタマーセンター)ブランスクム文葉氏(ゼロワンブースター コミュニティ開発部ディレクター)境達彦氏(リクルート ファイナンス統括室経理ガバナンス企画部)に、同大学院教員の岩越祥晃氏がインタビュアーとして、自らの力で未来を切り開くための原動力について聞いた。

これからの社会に必要とされ、働き続けるための武器がほしい

岩越:大企業では、OJTやメンター制度、各種の研修制度など、人材育成の仕組みがしっかりしているところが多いと思いますが、皆さんは自ら学費を支払って、グロービス経営大学院に入学されました。どんな経緯があったのでしょうか。

本田:僕は新卒でパナソニックに入社し、人事部に配属され、2年目からリストラを担当することになりました。

その経験の中で「どれだけ人を育てても事業がなくなればリストラが必要になる」ということに気づいて。その後、経営企画に異動を命じられ、突然、事業戦略や中期経営計画を作る立場になりました。これにはかなり戸惑いましたが、きっと学びを始める良い機会なんだと考えました。

ブランスクム私は大手証券のファイナンシャル・アドバイザー(FA)を長く務めていました。当時は市況が良く、お客様の資産は順調に増え続けていたのですが、リーマン・ショックの暴落を機に解約される方が急増。厳しい言葉を浴びることが続きました。これまでは相場環境のおかげでうまくいっていただけで、私の力でお客様を幸せにしていたわけではないと、この時わかったんです。

同時期に社内で新規事業の話が持ち上がったので、閉塞感を打破したくて応募しました。大学を中退している私に応募資格はなかったので、詳細なプレゼン資料を作って担当者に直談判したものの、受け付けてもらえませんでした。

胸を張れるスキルを持っていない危機感に加えて、意を決して臨んだチャレンジも認められなかった不甲斐なさが重なり…。もっと自信を持って働けるようになりたい、これから先も社会にも会社にも必要とされるための力、働き続けるための武器が欲しいと思うようになりました。

岩越自分の能力を磨くための学びの選択肢は、ビジネススクール以外にもたくさんあったと思います。ビジネス関連のセミナーだけではなく、YouTubeをはじめ、動画で学ぶという方法や中小企業診断士のような資格を取得する方法もあります。その中で、皆さんは、なぜビジネススクールを選んだのでしょうか。

私は、結果的にビジネススクールになっただけなんです。MBAという学位に興味があったわけではなく、30歳を過ぎた頃から「自分は何のために生きているんだろう」とか、「今のような働き方で終わりたくない」と考えるようになったのがきっかけでした。

当時の私は経理の仕事をしており、仕事に役に立つだろうと米国公認会計士の資格をとりましたが、結局、自分は何者で何のために生きているのかという問いには答えが出せずにいました。自分は何者で、何のために生きるのかということに、真剣に向き合って一生かけて成し遂げたい「志」を立てることができたら、生きることや働くことが楽しくなるんじゃないかと思ったんです。

自分の価値観や生き方と向き合える場で、学ぼうと思った

本田「志」と言えるようなものが見つからず、モヤモヤしてしまう気持ちは、わかる気がします。「志」を持てたら、人生変わるんじゃないかという思いも。

僕がグロービスに決めた理由のひとつは、入学前に受けたグロービスのセミナーで「皆さんが人生をかけて成し遂げたいことは何ですか」と問いかけられたことなんです。グロービス経営大学院では、「ヒト・モノ・カネ(経営の基本3要素)」と呼ばれる領域の科目だけではなく、自分の価値観や生き方と向き合う科目もたくさん用意されていると知り、他のビジネススクールではなく、グロービスで学んでみたいと思ったんです。

ブランスクム私の場合は前職の先輩に勧められて、お試しのつもりで「クリティカル・シンキング(論理思考)」という科目を受講したんです。これまで私が触れてこなかった世界で、とにかく刺激的で面白かった。これまでの自分の行動範囲では絶対に出会えない人たちとディスカッションしたことで、眠っていた好奇心が湧き上がってきたんです。

岩越ビジネススクールへの入学を検討する方には、仕事との両立や勉強時間の確保に不安を感じる人が多くいます。ブランスクムさんは当時子育て中だったと思いますが、そうした不安はありませんでしたか。

ブランスクムもちろん、ありました。ただ、子どもたちも小学校高学年で身の回りのことはできるようになっていたし、中学受験の時期だったので、親が勉強しなさいとガミガミ言うより自分が勉強する姿を見せるほうが説得力があると考えたんです。

塾の宿題をする子どもたちの横で一緒に教科書を読んだり、課題に取り組んだりしていました。あと、夫がビジネススクールで学ぶことにとても協力的だったことは、大きいですね。

私はオンラインでの受講だったこともあって、学生の皆さんがいろんな事情を抱えながら学んでいる状況をリアルに見てきました。職場や出張先、移動中の車の中から受講する人、海外から真夜中に受講している人など。他にも、在学中にご不幸があって突然事業を承継し経営者になった人も。ギリギリの環境下で必死に学ぼうとする仲間を目の当たりにしていると「忙しくても自分も頑張らないと」とモチベーションが上がってきて、なんとか時間を捻出しようと努力するんですよね。

ブランスクム本当にその通りです。私よりもずっと忙しい人たちが、授業時間以外にキャンパスのラウンジで必死に勉強する姿やクラスメートと勉強会をやっている姿を見ると、私も頑張ろうと思いますよね。

そうそう、あと、グロービスは20代から50代の方まで幅広い年代や職種、役職の人たちが学んでいるけど、気を使うことなくストレートにディスカッションできる文化があって、授業の度にたくさんの気づきを得られるのがとにかく楽しかった。今、改めて在学時を振り返ってみると「何を学ぶか」も重要ですが、「誰と学ぶか」もとても大切な要素だと感じます。

本田勉強時間の話ですが、僕なりに工夫していたことをお話しすると、グロービスの予習は、教科書やケースを読む、それらから得た知識を使って考える、課題の解答をまとめる、の3つに大別できます。それらの時間配分や、いつどこで何をやるかをあらかじめ決めていました。

例えば「読む」は電車や昼休みに、「考える」は通勤で歩いているとき、といった感じです。ちなみに、スケジュールを組む過程で、削れる時間がたくさん出てきて自分でもびっくりしました(笑)。

岩越勉強時間を確保できるかどうかを心配される方は多いのですが、問題意識や成長意欲の高い人には仕事が集まってくるものなので、暇になることはないと思います。「時間は作るもの」と考えないと、ビジネススクールで学ぶことは難しいかもしれませんね。

日本ではまだまだ社会人がビジネススクールで学ぶ、という選択肢を考える人が少ないという現状()がありますが、皆さんのご意見を聞かせてください。

※経済協力開発機構(OECD)のデータ(2021年)によると、日本では30歳以上の修士課程入学者は10%にとどまり、OECD平均の26%を下回る。

本田大企業の場合、新卒で入社した企業でずっと勤めている人が多いと思います。周囲に評価されて順調に昇進、昇格したとしても、それは社内での価値だと思うんです。企業の中での価値、外での価値の違いに気がついていない人は多いのではないでしょうか。社内価値と市場価値の差を知る機会がないと、社外に出て学ぶという考えには、ならないかもしれませんね。

ブランスクム今の待遇や仕事はなくなるかもしれないという危機感はあっても、自分がまったく必要とされなくなるような未来はないだろう、と楽観視している人は多いように思います。私も器用貧乏というか、怒られない程度の仕事はできていたと思いますし、待遇にも不満はなかったので、危機感と向き合って当事者意識を持たなければ、外に出て学ぼうなんて思わなかったと思います。

私の場合は、転職という機会を通じて「このままではいけない」という危機感を持ちましたが、多くの場合、行動を起こすほどのきっかけがないのかもしれません。

本田会社が危機的な状況に追い込まれても、大企業の場合、組織として対応してくれるので自分の中の危機感にまで至らないのかもしれませんね。自分以外の誰か、それこそ経営者が何とか対処してくれるだろうと考えてしまう。当事者意識をもって危機感と向き合うところまでには及ばないと思います。

岩越ビジネススクールは、経営者や限られたエリートが行くところだと思っている人はいまだに多くいます。当初思っていたイメージと実際のイメージとではどんなギャップがありましたか?

本田僕もMBAは経営者や一部のエリートのもので、自分には関係ない世界だと思っていたのですが、同期がグロービスに通い始めたことで、急に身近に感じるようになりました。彼は会うたびに成長していて、仕事でも結果を出していました。悔しくなって、自分も追いつきたいと思うようになったんです。

私ももちろん不安はありました。変な発言をして白い目で見られないか、と思うと躊躇してしまって。入学すると決めたのにやっぱり行きたくないと逡巡しました。今思えば学生の頃に染みついた「失敗するのが怖い」という思いが拭えなかったのだと思います。でも、実際に授業に出てみると、先生の問いかけに皆が自然に手を挙げるとても活気のある雰囲気なんです。それにつられて、自分も発言するようになっていましたね。

本田僕は、真っ先に手を挙げようと決めて授業に挑みました。一回発言すれば、あとはなんかついてくるものだと思っていたので、最初のほうはすごい意識してましたね。

岩越ビジネススクールは、そもそもビジネスの基本や原理原則をこれから学ぶ人が来る場所ですからね。グロービスでは「クリティカル・シンキング」という科目を最初に受講しますが、それまで論理思考のトレーニングをしっかりと受けている人はほとんどいないので、全員が同じラインからのスタートです。

これからの人生やキャリアを楽しめる自信がついた

岩越最後に、グロービス経営大学院で得られたものを教えてもらえますか。

本田腹を割って話せて高め合える、そしてライバルでもある仲間たちですね。仕事でハードな課題に直面してくじけそうになっているとき、グロービスの仲間がいつもサポートしてくれます。そんな仲間がどの業界にも一人はいるというグロービスのネットワークの広さと強さは、とても頼りになります。

そして何よりグロービスには「仲間と一緒に成⻑していこう」という文化があります。自分だけが成功しても楽しくないという価値観があって、仲間同士自然と助け合えるのです。

ブランスクム私も同じですね。グロービスに来たからこそ、他では出会えない特別な仲間に巡り合えた。彼ら彼女らがいなければ、今の充実した人生は得られていなかったと思います。グロービスに通う人たちは皆、前向きなエネルギーに満ちています。そんな仲間たちとともに学んだことで自分の可能性を信じられるようになりました。グロービスには、知識やスキルを身につけるだけではなく、仲間たちとの絆を深める機会がたくさんあるんです。

例えば、私は各業界のトップリーダーとグロービスの学生、先生たちが一堂に集まる合宿型のカンファレンスで学生企画委員長を務めたのですが、できないことだらけだった私を仲間たちが引っ張りあげてくれました。

入学する前から人が好きだとか、出会いの場を作るのが楽しいという思いは持っていても、それが自分の強みだと認識したり、仕事にするという発想にはなりませんでした。グロービスでたくさんのご縁をいただいた結果、人生の選択肢が増えました。自分の強みを活かせる仕事に就くことができ、毎日が充実しています。

グロービスには学部がないし、アカデミックな学びを期待する人の選択肢としては弱いのではないかという意見も耳にします。しかし、私は理論よりも実践にこだわった環境で学びたかったので、グロービスはとても魅力的でした。グロービスの先生は、研究に重きを置いてきた人ではなく、ビジネスの第一線で活躍してきた経営者やさまざまな修羅場をくぐってきた実務家の方ばかり。授業で教科書に書かれているような上っ面のことを言ったら、激しく突っ込まれるという経験を何度もしました。

本田教科書的には正しいけど、それって実際にできるの?ということですよね。フレームワークに当てはめただけの発言をすると、「それで本当に周りの人は、納得して動いてくれる?」と先生に突っ込まれる(笑)。

そうそう。こういったやり取りを積み重ねると、正しそうに見える答えでも、「なぜそう言える?」「本当にそう?」「できるのか?」といった感じで、自分に常に問いを投げかける癖がつきました。

人生の目標という正解を見つけたくて入学し、実際に多くの仲間が志を見つけていったけれど、自分は結局それが何かがわからないということに気づいて。でも、そのことで人生観が変わりました。

志は無理やり立てるものではない。目の前の状況を受け入れて、仕事や人生を楽しんでいればいずれ出会えると思えるようになり、やっとこれからの人生やキャリアを楽しめる自信がつきました。

卒業生3名の話からも、グロービス経営大学院で学んだことを機に多くの方がキャリアを変え、人生にポジティブな結果をもたらしていることがわかる。
さまざまな試練にぶつかりながらも、グロービスで身につけた能力や仲間とのつながりをパワーに変え、自らの成長を楽しんでいる。
前向きなエネルギーに満ちた場に身を置くことが、人生を大きく変えるきっかけになるのだ。

(制作:NewsPicksBrandDesign、執筆:森田悦子、撮影:竹井俊晴、デザイン:田中貴美絵、編集:奈良岡崇子)