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投稿日:2022年01月22日
投稿日:2022年01月22日
組織の一体感醸成はマネジャー次第
- 嶋田 毅
- グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長
昨年11月発売の『グロービスMBAミドルマネジメント』の第4章1節「ハイアウトプットのチームを作る」から「凝集性」を紹介します。
凝集性(ぎょうしゅうせい)とは、端的に言えば組織のまとまりの強さであり、メンバーをその組織に引き寄せ続ける力でもあります。ハイアウトプットなチームは、一般には高い凝集性のチームであることが多いものです。どれだけ個々人の能力が高くても凝集性が弱いと、チームとしての一体感が欠け、パフォーマンスにつながりません。いったんそうなると、それがさらに凝集性を弱めるという悪循環に陥ります。凝集性を高めるためには、マネジャーが魅力的なビジョンを打ち出したり、マネジャー自身に魅力があるなどの要件が必要となります。つまり、凝集性を高めるには単なるテクニックだけでは不十分であり、マネジャー自身の志の高さや自己研鑽が必要だということは銘記したいものです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
凝集性
凝集性(厳密には集団凝集性)とは、集団がメンバーを引きつけ、その集団の一員であり続けるように動機づける度合いである。集団の凝集性の高さは、各メンバーの魅力やその間のインタラクション(相互作用)、集団の目標や規模などの要素によって決まるとされる。集団の凝集性が高いほど、規範の拘束力は高くなり、共有する目標に対する成果が大きくなる傾向がある。
一方で、凝集性が高いことによる問題もしばしば生じる。その1つであるグループシンク(集団浅慮)は、合意に至ろうとするプレッシャーから、集団において物事を多様な視点から批判的に評価する能力が欠落する現象だ。これは往々にして間違った意思決定や、場合によってはコンプライアンス上の問題(例:組織的隠蔽)を引き起こすこともつながる。
新任のマネジャーの場合、まずは既存の部署の規範とその浸透度合い、さらには凝集性について確認することが必要だ。好ましくないと判断される規範(例:費用に対する感度が弱い、ステークホルダーに無理をお願いしやすい)がある場合はそれを洗い出し、部下に「こういうことはしないように」と明確に指示を出す必要がある。自身が率先垂範することも必須だ。ミーティングの場などで念を入れたり、部署のメーリングリスト上などで注意を喚起したりするなどの施策を講じる必要がある。
望ましい規範を部署に植えつける手っ取り早い方法は、マネジャー自身の率先垂範もそうだが、ベテラン社員に率先してもらうことだ。たとえば多くの組織において、「メールにはすぐに返事をする」「相手に配慮したコミュニケーションを心掛ける」といった規範は非常に重要である。ベテランがそれを行うと、若手もそれを見習うのである。規範を実行している部下を褒めることも効果的だ。
なお、規範は独りよがりに押し付けないことも重要だ。新任マネジャーの場合、なぜその部署に従前の規範が定着してきたのかも理解したうえで、部下と話し合い、それが部署にとって良いことなのかを話し合うことも時に必要となる。新しい部署に異動したマネジャーなどは、それまで所属していた部署の規範をそのまま持ち込もうとするケースがしばしばあるが、部署ごとにさまざまな事情があり、好ましい規範は異なるということは意識すべきである。もちろん、企業の組織文化からの逸脱については、しっかりこれを排除する努力が必要だ。
凝集性が弱い場合は、その原因を考える必要がある。よくあるのは、部署の目標そのものの魅力の欠如や、上司であるマネジャーの人的魅力の欠如だ。部署として魅力的な目標設定をするとともに、マネジャー自らが自己研鑚する必要性がある。
凝集性を高めるもう1つの方法は、そこにいると楽しい、成功体験を味わえる、成長できる、といった場にすることである。これは結局、本書でこれまでに解説してきた、部下をしっかり指導する、業務をマネジメントする、といったことによって実現する。また、コラムで述べる心理的安全性を高める努力も、凝集性を高めることになる。
著者:グロービス経営大学院 監修:嶋田毅 発行日:2021/11/30 価格:3,080円 発行元:ダイヤモンド社
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嶋田 毅
グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長