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投稿日:2022年02月05日
投稿日:2022年02月05日
志こそがマネジャーのアウトプットを決める
- 嶋田 毅
- グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長
2021年11月発売の『グロービスMBAミドルマネジメント』の第5章2節「ミドルマネジャーが備えるべき資質」から「高い志」を紹介します。
グロービスは古くから「志」を重視し、その高さこそがビジネスパーソンとしての成果につながることを研究、提唱してきました。これは当然ミドルマネジャーにも当てはまります。高いレベルの志を持っているマネジャーは、それが原動力となり自身を駆り立てますし、他者にも好ましい影響を与えることが多いものです。
ここで言う他者とは部下のみならず、上司や他部署の同僚、外部パートナーなどあらゆるステークホルダーを含みます。近年、「パーパス経営」がよく言われますが、個人の志と企業のパーパスが合致したとき、そのパワーはさらに高まります。いかに高い志を立て、それを維持し続けるかが、結局はマネジャーのアウトプットを大きく左右するのです。
(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)
高い志
「志」というと青臭い議論のようにも思えるかもしれないが、「志のMBA」を掲げる我々グロービスは、高い志こそが多くの人々を動かし、自己実現に近づける大切な要素であることをさまざまな事例から観察・研究してきた(『志を育てる』〈グロービス経営大学院著、東洋経済新報社〉他)。
マネジャーが持つべき志とは具体的には以下のようなものだ。
「1人でも多くの子どもたちを笑顔にする」(玩具会社の営業課長の場合)
「日本一社員がストレスなく働ける職場を作る」(総務課長の場合)
「品質に関しては自社を最も顧客から高評価の企業にする」(メーカーの品質管理室長の場合)
「日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシーを劇的に高める」(ビジネス書を扱う出版社の副編集長の場合)
マネジャーの志は、社長の志とまではいかなくとも、部長や事業部長クラスの「やや背伸びした程度」の視座から考えたものが望ましい。
高い志は自分自身を駆り立てる源泉にもなり、また他者にも強いインスピレーションを与えることで、彼らの視座や協力しようとする意識を高める効果もある。マネジャー自身の能力開発や自己鍛錬も、多くは志をベースにした内発的動機から行われる。その意味で、結果を残すマネジャーは、結局は志次第という側面は大きいのだ。
社内外との交渉ごとにおいても、高い志は高い妥結目標につながる。日本では謙虚さや控えめであることがしばしば美徳とされ、高い妥結目標を置くことはエゴの発露に見られるという心配をする人も多い。
しかし、交渉とはWin-Winの妥結点を探す、問題解決のための共同作業である。交渉をこのように捉えれば、目標の高さはむしろ望ましいことなのだ。
自分の信念を貫きつつ、相手の思いにもインスピレーションを与え、協力を取り付けられるマネジャーは、大きな仕事をできる可能性が高い。コンフリクトの二重関心モデルの研究でも知られるケネス・トーマスも、自分の主張を大切にしつつも、協調できる「両立型」を好ましい像として示している。
交渉力に欠けるマネジャーは、部下からの信頼を失うという点も大切だ。部署の代表として組織を代表するマネジャーが、組織に重大な影響をもたらす交渉案件で上司との交渉も含め、相手の言いなりではマネジャーは務まらない。高い志を持って、部署の立場をどんどん良くすることが、部下からの信頼にもつながる。
なお、起業家などは最初から壮大な志≒ビジョンを持ち、それを周りにも知らしめることで賛同者を募ることが多い。それはそれで参考にはなるが、多くのマネジャーにとっては難しいのが現状だ。一般的なマネジャーの場合は、まずは先に掲げたレベルの志を持ち、そこで結果を出しつつ、好循環的に志を大きくすることが効果的だ。最初は自分自身の自己実現や社内に目が向きがちだった「小志」が、次第に社会に向いた「大志」となり、社内のみならす社外の人を巻き込む武器となることも多い。
著者:グロービス経営大学院 監修:嶋田毅 発行日:2021/11/30 価格:3,080円 発行元:ダイヤモンド社
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嶋田 毅
グロービス経営大学院 教員/グロービス 出版局長