GLOBIS Articles
- 組織行動
- テクノロジー
- イノベーション
- キャリア
- イベント
投稿日:2021年02月10日
投稿日:2021年02月10日
Business x Technology x Creative「これからの時代に求められるデザイン経営とBTC人材」 特別セミナーレポート
- 秋田 夏実
- アドビ株式会社 マーケティング本部 バイスプレジデント
2020年9月、グロービス経営大学院は、参加者約950名にも及ぶ大規模な特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。
スピーカーは、アドビ株式会社 マーケティング本部 バイスプレジデント 秋田 夏実氏。20年以上にわたり金融業界のマーケティングに携わってきた秋田氏は現在、アドビの日本におけるマーケティング・広報を統括している。
企業経営にどのようにBTC(Business・Technology・Creativity)思考を注入するのか、個人としてどのようにBTCスキルを培うのか。ニューノーマルに合わせて、あらゆる事業が迅速な再構築を迫られているが、その輪郭を掴んでいる日本企業は少ない。その要因として、秋田氏は二つのこと挙げる。
「一つは、『専門領域のプロの不在』です。日本企業で働く方の多くが、『経理の次は、人事』のように数年おきにジョブローテーションを経験します。その結果として、その会社のプロにはなれますが、特定の業務領域においてはセミプロにとどまってしまいます。実際のところ、『大掛かりなことを始めても、実る頃には異動の時期』となれば、のめりこんで業務に向かうことは難しいでしょう。セミプロ集団ではなくプロ集団をつくっていきたいのなら、人事を変えるしか方法はありません」
もう一つは、『組織変革を拒むチェンジモンスターの存在』だ。
「ビジネスをトランスフォームしようとしても『今のままでいい』『変わりたくない』と改革を阻害する、チェンジモンスターが社内にいれば、変わるに変われません。そこで、重要になるのが、“雇用され得る能力”(エンプロイアビリティ)を高めることです。そのためには会社が積極的に社員教育に投資することも必要です。エンプロイアビリティがあれば他社でも通用しますから、一つの会社にしがみつく必要はありません。結果として、社員がチェンジモンスターにならずに済むのです」
その後、話題は個人としてどのようにBTCスキルを培うのかに移った。これからの時代をリードしていくために、自らにどのような働きかけが必要になるのか。キーワードは、「好奇心」と「信頼」だ。
「好奇心はいくつになっても失うべきではありません。コンフォートゾーンに留まらず、自分の市場価値を上げるために、好奇心のアンテナをいっぱい張って常にチャレンジしましょう。そして、自分と誰かの間に落ちるボールを、若いうちはどんどん拾いにいきましょう。たとえ失敗しても、そこからの学びは多いはずです。物事に対し、誠実かつ真剣に取り組む様子を周りは見ています。こうした姿勢を貫いていると、自然に『信頼』という名の財産が生まれ、自分に返ってきます」
また、「クリエイティブの要素を伸ばすためには?」という参加者からの質問には、「自分で作ってみる。当事者になること」と秋田氏は応じてみせた。
「自分でやってみると、外から見ていたときとは違う目線が生まれます。一歩踏み出すことで、自分を磨く方法が見えてきます」
最後は以下のメッセージでセミナーを締めくくった。
「『人生100年時代』を前提とすると、私はまだ折り返し地点にあり、言うならばβ版で不完全な存在です。けれども、それは伸びしろがあるとも言い換えられます。いくつになってもチャレンジ精神は持ち続けるべきで、自分が現状持ち合わせているスキルに満足してしまうことのほうがリスクだと思います。大変な時代ですが、もっともっと学び、未来に羽ばたいていきましょう」
語りかけるような声と力強い眼差しのもと、BTCスキルの重要性を説いた秋田氏。明日からの経営と人材育成に大きな示唆を与えてくれるセミナーとなった。
秋田 夏実
アドビ株式会社 マーケティング本部 バイスプレジデント
アドビのマーケティング担当バイスプレジデント(VP)として、⽇本のマーケティングおよび広報を統括。アジアでは唯一の女性VP。アドビ入社前は、マスターカード⽇本地区副社⻑、シティバンク銀⾏デジタルソリューション部⻑等を歴任。
東京⼤学経済学部卒業。ノースウェスタン⼤学ケロッグ経営⼤学院卒業(MBA)。
情報経営イノベーション専門職大学客員教授。NewsPicksのプロピッカー。
東京都の「女性経営者へのメンタープログラム」のメンターのひとり。
ワインエキスパート。趣味は空手。3⼈の⼦供を持つワーキングマザー。