GLOBIS Articles
- イノベーション
- 先進事例
- クラブ活動
- イベント
投稿日:2021年01月29日
投稿日:2021年01月29日
価値観共有クラブ「新型コロナウイルスで変わる日本の働き方や価値観」 特別セミナーレポート
スピーカー
- 小室 淑恵
- 株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
2020年10月、グロービス経営大学院公認クラブである『価値観共有クラブ』は、参加者約970名にも及ぶ大規模な特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。
スピーカーは、これまで1,000社以上の『働き方改革』を成功に導いてきた、株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵氏。
日本の社会情勢をマクロ視点で捉える
冒頭、小室氏は日本の労働力の移り変わりを、ハーバード大学 デービッド・ブルーム教授が提唱する「人口ボーナス期&人口オーナス期」を基に解説した。
「人口ボーナス期とは、人口構造が経済に好影響をもたらす時期を指します。この時期は、若者という労働力が世界中の仕事をこなすものの、高齢者にかかる社会保障費は少額で済むため、爆発的な経済発展を遂げられます。日本の高度経済成長期もこれにあたりましたが、その後は少子化対策に失敗したため高齢化率が跳ね上がり、人口オーナス期(働く人よりも支えられる側が多い社会)に駆け込んでしまいました。とはいえ、ここからが本当の経済成長と言われています」
日本が再浮上する方法は二つ。一つは、生産年齢人口に当たる国民を総動員し、労働力を最大化すること。もう一つは、未来の労働力確保のため、夫婦一組当たり2人以上の子どもを産み育てられる対策を行うことだ。
「そのためには、男性の『働き方改革』が必要。なぜなら夫の育児家事参画時間と第二子以降の出産に相関性があるからです。来春、男性社員に対する育休の周知が企業に義務付けられます。それほど男性の育休取得は重要です」
コロナ禍において生産性を左右するもの
続いて小室氏が話題にしたのは、テレワークでの働き方だ。まず、生産性を上げるポイントとして、以下の三つを挙げた。
・仕事の見える化・共有化
・不安や孤独にとらわれず、安心して仕事に集中できること
・時間を自律的に使って仕事を組み立てられること
これらを実現していくうえで、それぞれに必要となる考え方、行動の例は、以下となる。
1.管理職
・イノベーティブな発想を多様な人材が臆せず行える、傾聴承認型で心理的安全性が高める職場づくり
・相づち役、リアクション役などの役割を参加者に与えることで、全員が会議に主体的に参加し、話者が安心して話せる『あったかいWeb会議』の実施
・飲みニュケーションによるガス抜きではなく、具体的な不満を出しやすい仕組みを作り、具体的な改善アクションに繋げられる場の実施
2.経営者
ボーナス期の商習慣は経営の無駄とみなし、率先して見直しの指示を出し、変えていく
3.人事
・前日の終業時刻から翌日の業務開始までの休息を確保する『勤務間インターバル規制』の導入
・出社や対面に頼らず、テレワークでもしっかり成果を出せる組織の実現
「人口ボーナスという山は沈み、人口オーナス山が隆起しています。二つの山は地続きでなく、歩いていたらいつかたどり着くわけではありません。新しい仕事様式に一気に飛び移っていきましょう。勝てる組織と充実した人生を作ってください」
そう言って参加者を鼓舞した小室氏。最後に、コロナを乗り越えられる強い組織への期待を寄せた。
スピーカー
小室 淑恵
株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
株式会社資生堂にて社内ベンチャー起業後、2006年に株式会社ワーク・ライフバランス設立、代表取締役に就任。残業を削減して、業績を向上させるコンサルティングを900社以上に提供している。「経営戦略としてのワーク・ライフバランス」などの講演を年間約250回企業や行政・教育機関などに依頼いただいている。
2014年9月からは、安倍内閣産業競争力会議の民間議員。2015年2月から、文部科学省中央教育審議会委員。他に内閣府子ども子育て会議、経済産業省産業構造審議会、厚生労働省年金部会、農林水産省フードアクションニッポン戦略会議などの委員を務める。
2004年、日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2004・キャリアクリエイト部門受賞。2006年、日本ブロードバンドビジネス大賞受賞。2014年、ベストマザー賞(経済部門)受賞。金沢工業大学客員教授。
著書は『6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)、『全員成果を出して定時で帰る会社の毎日楽しく働く秘訣』(中央公論新社)、『あなたが輝く働き方』(PHP研究所)など29冊。
プライベートでは二児の母であり、自身も社員も全員残業ゼロ、有給消化100%で創業以来増収増益を達成している。