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投稿日:2021年01月29日

投稿日:2021年01月29日

Business x Creative「ビジネスモデルの再設計に必要なクリエイティビティ育成に必要な3つの要素」 特別セミナーレポート

山田 智久氏
アドビ株式会社 デジタルデザイン&オペレーション部 部長
辻本 雄基氏
アドビ株式会社 エクスペリエンスビジネスコンサルタント

2020年10月、グロービス経営大学院は、参加者約500名にも及ぶ大規模な特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。

スピーカーは、アドビ株式会社 デジタルデザイン&オペレーション部 部長 山田 智久氏、同社 エクスペリエンスビジネスコンサルタント 辻本 雄基氏。

変革の課題解決に活きるクリエイティビティ

実践的なBTC(Business, Technology, Creative)思考と経営がニューノーマルに求められている。そのようななか、クリエイティビティがビジネスにもたらす有用性を高め、また感性を育てるために我々はどのような習慣を心がけるとよいのだろう。

まず、辻本氏は、デジタルを用いた事業変革に立ち向かううえで顧客体験の向上は外せない、と語る。

「しかし、顧客への歩み寄りは一朝一夕でできることではありません。顧客が、企業やマーケットに何を期待しているのか、そこに自社が何を提供できるのかを中長期的なロードマップのなか、現実的なステップで成果を上げながら進めることが重要です」

そのステップとして辻本氏が示したのが、以下の二点だ。

1. データを集める仕組みを整備し、活用のための体制やプロセスを整える
2. 顧客を深く理解し、直接つながるための施策を打つ

そして、こうした課題を突破するとき、またはアイデアを必要とするときにクリエイティビティは発揮される、と辻本氏は話す。

続いて、山田氏はクリエイティビティを向上させるために意識したいポイントとして以下の三つを提示した。

・顧客起点発想でデータの枠を超える

・コンポーネントを意識して発想をカタチにする

・コトバとイメージによるストーリーテリング

「クリエイティビティは、特別なものではありません。普段から意識すれば、会議などの場で自分の企画やアイデアを発言するきっかけになりえます。三つの活用がビジネスとクリエイティブに活きることでしょう」

アドビの事例にみる、変革のリーダー像

話題は、「変革を起こすリーダー像」に移った。アドビ社の取り組み事例に見る、リーダーの共通項とはどういうものなのか。

辻本氏は、立場や役割を超え、社内外問わず必要な行動やコミュニケーションが取れることを挙げる。

「これができる人は、あらゆる情報を相当インプットしています。その情報を基にプロセスを考察し、自分たちの取り組みにどのように展開するのかを咀嚼しながら進めている印象があります」

なお、これからリーダーを目指す人には、目の前のデータと日々向き合うことを基本姿勢にしてほしい、と山田氏。

 「自走しているお客様には、自分たちのデジタルビジネスの状況を毎日把握し、数字の変化に仮説を立てて掘り下げ、次のアクションにつなげるところまでを業務サイクルに組み込む習慣が根付いています」

こうした論理的思考を補完し、ストーリーづくりやひらめきに必要なクリエイティビティを育む視点として、山田氏は「情熱」を挙げる。

「『デジタルを使って自分が会社を変えてみせる』という思いの強いお客様がいます。こういう人がいると、我々のようなサポーターが入ったときに共鳴できるのです」

一方、辻本氏は、他業種のビジネスモデルに学び、発想や想像を膨らませ、利活用することが大切、と説いた。

続く質疑応答では、主に以下のようなやり取りがなされた。

Q.データ活用のコツが知りたい
A.身近なデータを見て、変化を探ることが大切。自分の仕事だけで考えず、社内を広く詮索し、納得できるまで周囲に尋ねることを心がけると良い(山田氏)

Q.カスタマージャーニーに沿ってデータを揃えたいが、顧客マスタが未整備。この状況で大切なことは
A.スマートフォンで簡単に答えられるアンケート程度で構わないので、お客様の声を取得できる場を積極的に作る(山田氏)

Q.取りやすいデータを活用してしまい、視野が狭くなりがち。打開策は?
A.目標までのプロセスをブラさない。そのために必要なデータが無ければ取得し、あれば使うことを徹底する(辻本氏)

盛況のまま終盤を迎えた本セミナーは、以下の両氏のメッセージで締めくくられた。

参加者にとって、多くの学びを得る貴重な機会となった。

辻本氏 「会社やビジネスを変えていくことは簡単ではなく、時間もかかります。大きな成果にこだわらず、小さな成果を積み上げながら、会社を変革してください」

山田氏 「クリエイティブの良い人は、考え方の掘り下げが早い人だと思います。今日ご紹介したポイントは、『なんでだろう』を掘り下げるツールになりえます。ぜひ活用ください」

山田 智久氏

アドビ株式会社 デジタルデザイン&オペレーション部 部長

マーケティング領域におけるブランドクリエティブとテクノロジーの融合を手段にコミュニケーションにおける課題解決に長年従事。

2007 – 2016:博報堂アイ・スタジオ

感性だけではなく、データを起点にクリエイティブを発想するデータドリブンクリエイティブ部を発足、後に、統合デジタルマーケティングセンター長としてブランドプロモーションやオウンドメディアリニューアルを推進するプロデューサーとして従事。

2016 – 2020:アドビ

コンサルタントとして入社後、マーケティングテクノロジーを活用した施策のみならず、デジタル組織の構築支援や制作プロセス改革支援などのサービスを開発。

 エンドユーザーと働く人のエクスペリエンスを最適化する、エクスペリエンス・クリエイションをつくるメソトロジーを多く考案。

辻本 雄基氏

アドビ株式会社 エクスペリエンスビジネスコンサルタント

大学卒業後、広告会社におけるデジタル施策のディレクション、海外拠点立ち上げにおける現地駐在、拠点でのチームビルディングを経験。帰国後は、ECサービス企業にて、定量・定性両データを活用したサービス改善や広告メニュー開発のプロジェクトに従事。

2018年5月より現職。アドビでは、B2B製造業等、デジタル活用組織の運営支援に従事。クライアント併走型のデジタルマーケティング組織の立ち上げ、データ活用の推進、オペレーションの改善など、デジタルマーケティング業務運用の型をつくる支援を数多く実施。