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投稿日:2021年01月21日

投稿日:2021年01月21日

「ニューノーマルにおける事業の再構築に向けて~アドビと学ぶ実践的BTC思考と経営」 特別セミナーレポート

スピーカー

田口 恭平
アドビ株式会社 プロフェッショナルサービスセールス本部 本部長
生駒 浩大
アドビ株式会社 ビジネスアーキテクト

2020年10月、グロービス経営大学院は、参加者約464名にも及ぶ特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。

スピーカーは、アドビ株式会社 プロフェッショナルサービスセールス本部 本部長 田口 恭平氏およびアドビ株式会社 ビジネスアーキテクト 生駒 浩大氏。

顧客に何を提供したいのか――企業変革の原動力に

ニューノーマルによって全ての事業に迫られているDX。本セミナーでは、事業における勝ちパターンと、デジタル人材としてのキャリア形成について紐解いた。

田口氏はまず、企業におけるDXの主要戦略の変遷を、以下のように解説した。

・1990年代 Back Office Wave:バックオフィスの業務改革が中心

・2000年代 Front Office Wave:CRMをはじめとするソリューションの導入が中心

・2010年代 Experience Business Wave:顧客とのデジタルチャネルでのつながりが中心


「2020年の現在はデジタルなのか、ノンデジタルなのかは関係なく、“織り交ざった一つの体験”が、企業、ユーザーともに当たり前になっています。いかに統合的な体験を提供できるのかは、Experience Business Waveの重要なポイントです」

この潮流の中で大事にしたいのが、お客様に何を提供し、どう感じてほしいのか。体験を生み出す側の意思や想いだ。DXはこれらを実現すると同時に、企業変革の大きな原動力になる。そう話す田口氏は、ソニー銀行の施策を好例として示してみせた。

ソニー銀行は、住宅ローンの契約を紙から電子サービスに変更。これにより、完了まで2~3週間かかっていた手続きが、最短1時間に短縮された。電子化は顧客からも喜ばれたが、社員の負担軽減にも大きく貢献した。というのも、紙のときは処理が週明けに集中するため負荷がかかっていたほか、記入不備の連絡の負担も大きかったという。これらが解消されたことで、従業員満足度も上がったというのだ。

「お客様に素晴らしい体験を提供したいという気持ちが原動力になり、動いた結果従業員にとっても良いことが生まれる。DXは企業変革のチャンスになると感じた事例です」

続いて、田口氏はDXを推進するリーダーに求められるスキルに言及。必要なのは、『誰が、いつまでに、何をするのかをプログラム化し、実行できる能力』『ビジネススキル』そして、『テクノロジーの理解』だという。

「自分のテック領域に関する理解が正しいかどうかチェックするために、自分の言葉で話し、周りから指摘をもらえる環境が重要です」

DX四つの領域と、それぞれに適した性格

ここからのスピーカーを担当した生駒氏は、エンジニアバックグラウンドの経験から、DXの主要戦略を「イノベーション」「レベニュー」「オペレーション」「オーガニゼーション」の四つに分類し、各領域のホットトピックに触れた。ここではその一部をご紹介する。

1.イノベーション

・顧客体験に関するテクノロジーへの投資は維持・増加

・中国では、支払い系のトランザクションで信用スコアを作り、資金調達に生かす動きが活発化

・サブスクリプションビジネスを展開する企業が増加、市場も伸長

・ものづくりでは、クラウド開発によるスモールスタートが可能に


2.レベニュー

・デジタルチャネルの活用が進む。EC/マーケットプレイスの選択は、企業の状況による

・顧客体験を管理するCXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)の思想が大事

3.オペレーション

・カスタマーデータプラットフォームの活用による顧客理解が重要

・リーガルテックは、年平均9.8%増加。これから伸びる領域

4.オーガニゼーション

・内閣府によると、コロナによって50%の国民が「仕事よりも生活重視」に。社員の価値観の変化は、組織文化醸成にも影響

・デジタル教育を行う企業が増加。日々の業務への浸透が課題

なお、どの領域が相応しいのかは、個人の性格によるという。「イノベーション」「レベニュー」は攻めの性格の人の、「オペレーション」「オーガニゼーション」は現状を整理し、あるべき姿に変えていくことに強みを持つ人の領域になるという。

また、ビジネスからテクノロジーに移行する人には、担当事業の関連領域から着⼿することを推奨する一方、テクノロジーからビジネスの場合は、異動のたびにビジネススキルを学ぶ姿勢が必要と分析。社内調整能力、リーダーシップをはじめとする汎⽤的なスキルは常に有⽤で、なかでもコミュニケーション力は武器になるという。

そのうえで生駒氏は、今回のセミナーを「どのような施策があるのかではなく、どのようなキャリアを歩むべきなのかを考えるきっかけにしてほしい」と言葉を結んだ。

最後は視聴者に下記のメッセージを残した両氏。DXに関する貴重な視点を余すことなく披露してくれたセミナーとなった。

生駒氏「DXの各領域は、やるべきことがたくさんあるのにリーダーシップが足りていない。皆さんと一緒にDX領域で面白い仕事を創り、日本のDXを成長させていきましょう」

 田口氏「『デジタル変革で世界を変える』をミッションに、10年やってきている。今日の話が皆さんのこれらかの行動のヒントとなり、世界を変える一歩になったら嬉しい。皆さんと世の中のDXを実現していきたい」

スピーカー

田口 恭平

アドビ株式会社 プロフェッショナルサービスセールス本部 本部長

インターネット系広告代理店にて、運用型広告の営業・コンサルティング業務に従事。その他サイト制作の提案・運用などの経験を経て、2011年にAdobe入社。広告系ソリューションの専任営業の後、2012年6月よりコンサルタントとして活動。

2014年からはDMP事業の日本での立ち上げ、導入支援、運用体制の構築や施策の実施を支援し、大手通信会社、不動産会社の顧客体験管理の実現に向けた支援に従事。

2019年12月よりこれまでの知見をあらゆるご提案に活かすべく、コンサルティングサービスセールスの本部長に着任。

生駒 浩大

アドビ株式会社 ビジネスアーキテクト

ビジネスアーキテクトとして、顧客企業のデジタル戦略策定、チェンジマネジメント支援、アドビとしての新規事業立ち上げ、パートナーとのコラボレーション推進などに従事。直近ではニューノーマルやOMO(Online merges with Offline)を前提とした新たな顧客体験の創出に注力。

エンジニアとしてキャリアをスタートし、前職では外資ITベンダーにてクラウドサービスのプロダクトマーケティングに従事。

慶應義塾大学経済学部 卒業、武蔵野美術大学デザイン情報学科 在学中。