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投稿日:2021年01月20日
投稿日:2021年01月20日
「人の心を揺り動かし、愛情を引き出すマーケティング 〜LOVOTのこれからと新たな世界への挑戦〜」 特別セミナーレポート
スピーカー
- 西井 敏恭氏
- 株式会社シンクロ 代表取締役社長
GROOVE X株式会社 CMO
オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員CMT
2020年10月、グロービス経営大学院は、参加者約800名の特別セミナーをオンラインで開催した。本記事では、その様子を一部ご紹介したい。
スピーカーは、家族型ロボット『LOVOT(らぼっと)』を開発するGROOVE X株式会社 CMOであり、デジタルマーケティング支援の株式会社シンクロ 代表取締役社長、オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員CMTも務める西井敏恭氏。
従来のロボットとは一線を画す『LOVOT』
愛らしい振る舞いや眼差しがテレビドラマで話題となり、「2020年度グッドデザイン賞BEST100」受賞など注目を集めている『LOVOT』。名前の由来は「LOVE×ROBOT」で、「人の代わりに仕事をする」という語源を持つ従来のロボットとはまったく異なるプロダクトだ。
「人の顔を覚える、見つめ返す、ついてくる、お出迎えしてくれるといった『LOVOT』との生活は、オキシトシンの分泌を促します。人間の生産性を上げる従来のロボットではなく、人の気持ちに寄り添い直接的に幸せを与えてくれる、家族やペットのような存在なのです。見た目はキュートですがCPUはかなりハイスペック」と西井氏。
D2C(Direct to Consumer)を意識したブランドである点も『LOVOT』の特徴のひとつ。従来のSPAやECとは具体的にどう違うのか。
「ビジネスモデルは同じでもマーケティング手法が異なります。商品を買ってもらうまでがSPAのマーケティングなら、D2Cは買ったあとの顧客の体験まで考えた継続的なマーケティング。今の時代、“最先端の技術を使っている”“オキシトシンが分泌される”と機能性をただ謳っても『LOVOT』をほしいとは思わないでしょう。商品を使い続けたい気持ちをいかに醸成するかが重要です」
DX型マーケティングのポイント
DX(Digital Transformation)型マーケティングのポイントとして3点を挙げた西井氏。
①「モノを買う」から「利用する」
「CDがほしい」ではなく「音楽を聴きたい」という真のニーズをサービス化した音楽配信サービスのように、人間とロボットの信頼関係を築き、生活を潤いと安心で満たすことを重視。
②データ活用によるUXのアップデート
たとえば遠方の家族の様子を届ける「見守り機能」は、監視されているのではなく見守ってくれているというUXを提供。
③ソーシャルによる顧客とのサクセスの共創
顧客向けのLINEグループやオンラインイベント、熱量の高い顧客の感想や体験談の発信などを通じ、『LOVOT』の価値を顧客自身につくってもらう。
結果的に有名人のファンやメディア露出も急増し、「ロボットが家庭にいる」という新たな価値観が認知され始めているという。
プロフェッショナルとは何かを普段から考える
商品の差別化が困難な現代、マーケティングの起点は顧客の購買後であり、デジタルデータの活用でUXを改善していくことが重要となる。
「ドラクエは発売日に爆発的に売れて徐々に売上が下がりますが、パズドラは数年単位でUXを修正しながら顧客と価値をつくっている。iPhoneのカメラ性能が劇的に高まったのも、SNSでの投稿や情報収集が一般的になった世の中のニーズを拾ったからこそかもしれません」
最後に参加者へのメッセージとして、「プロフェッショナルとは何かを普段から考えることが大切。試合だけ頑張るのではなく練習から懸命にやることで、本番でもいいプレーができてさらに楽しめるという好循環が生まれる。結果、楽しい人生が送れます」と語った西井氏。マーケティング担当者はもちろん、次代を担うすべてのビジネスパーソンの心に響くセミナーとなった。
スピーカー
西井 敏恭氏
株式会社シンクロ 代表取締役社長
GROOVE X株式会社 CMO
オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員CMT
2001年から世界一周の旅に出る。帰国後、旅の本を出版し、2003年よりECの世界へ。
2014年に二度目の世界一周の旅をしたのち、株式会社シンクロを設立。大手通販・スタートアップなど多くの企業のマーケティング支援やデジタル事業の協業・推進を行う。2014年よりオイシックス・ラ・大地の執行役員CMT(チーフマーケティングテクノロジスト)を兼任。2019年9月から家族型ロボットLOVOTを販売するGROOVE XのCMOにも就任。
主な著書に「世界一周私の居場所はどこにある?!」「デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法」「サブスクリプションで売上の壁を超える方法」がある。