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投稿日:2020年12月25日

投稿日:2020年12月25日

あさって会議 第3部分科会C「テクノロジー最前線~企業や人はいかに変わっていくべきか~」レポート

モデレーター

鈴木 健一
グロービス経営大学院 教員

パネリスト

各務 茂雄 氏
株式会社KADOKAWA Connected 代表取締役社長
株式会社KADOKAWA 執行役員 DX戦略アーキテクト局 局長
株式会社ドワンゴ 本部長、情報経営イノベーション専門職大学 准教授
SmartCity研究所 所長
グロービス経営大学院 2012年卒業
中島 徹 氏
15th Rock Ventures. Founder & General Partner 兼 Spirete, Inc. 代表取締役
グロービス経営大学院 2009年卒業
元家 淳志 氏
パナソニック株式会社 インドイノベーションセンター センター長
グロービス経営大学院 2018年卒業

※あさって会議とは

グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を継続的に提供するために、オンラインで開催したビジネスカンファレンス。日本全国、世界各地から、各界で活躍する2,200名ものグロービス経営大学院の学生(在校生・卒業生)および教員が一堂に集い、心ゆくまで語り合い、次の行動への決意を固めました。

「あさって会議」という名前は、「未来(あす)に向かって一人ひとりが新たな一歩を踏み出す。その一歩がやがて大きなうねりとなり、さらに遠い日本・世界の未来(あさって)を創る。そんなカンファレンスにしたい」という想いから、学生有志の皆さん(学生企画委員)によって名付けられました。

テクノロジーの爆発的な進化により、常識を打ち破るような画期的な製品やサービスが誕生している。テクノロジーの最前線では、企業はどのような取り組みを行っているのだろうか。今やデジタル・トランスフォーメーション(DX)なくして生き残れない時代。本セッションでは、DXの現状や課題だけではなく、組織の風土や社員の意識、行動、リーダーシップについても議論された。

DXの第一歩は、デジタルを体感する機会を増やすこと

モデレーターを務めたグロービス経営大学院の教員であり、グロービスAI経営教育研究所・所長の鈴木健一は、冒頭にDXの定義や現状、課題を登壇者たちに問いかけた。

まず中島氏は、「DXは、世の中の生活スタイルを大きく変える技術、またこれらの活用方法」と答えた。また、「海外では、例えばデータサイエンスとバイオテクノロジーの両方の修士号や博士号を持つ人が、異なる二つの分野を組み合わせ、事業を行う例が増えている。一方、日本は一つの技術分野、領域を追いかける人が多い。海外と同等の動きを生むには、人材流動性を高める必要がある」と日本が抱える課題に言及した。

DXを「y=ax+b」という方程式に当てはめたのは各務氏だ。「yをアウトカム、bを既存ビジネスのアウトカム、xを投資、aを高速回転運動係数としたとき、このaを、デジタルをテコに最大限にスピードを上げ、かつクオリティを下げないことがDXだと考えている」と表現した。また、日本の課題は意思決定のスピードが遅いこと、と指摘。これは、経営陣のDXへの理解やデジタル技術を体感する機会が足りていないことに起因しているとコメントした。

そして、元家氏はDXを「新しい価値をデジタルを使って創造することであり、この価値創造には2つの側面がある。攻めのDXとして、ビジネスモデルの転換や新事業創造等の顧客サイドの価値。守りのDXとして、業務プロセスの変革等の企業の内部活動における価値だ」と定義した。

働き方や仕事の進め方を変えることが求められている

DXの課題を前に、企業にはどのようなアクションが求められているのだろうか。この点について各務氏は、トライ&エラーの回数を増やすことだと言及した上で、「情報格差をなくし、ジョブ型雇用(人に仕事を充てるのではなく、仕事を人に充てる)を増やす必要がある。しかし、ジョブ型雇用は、社員にとってはハイリスク・ハイリターンの働き方であり、成功させるにはそれぞれの才能を可視化して心理的安全性をつくり、強みを顕在化させることが大事」と付け加えた。

業界が全く異なる会社と取り組むこと、と話したのは中島氏だ。「今私たちは、スタートアップ企業や大学の先生たちが集う機会を設け、事業の多産多死を行っている。異なる分野の知見や学位を持つ人たちが組めば、海外と同じような成果が生まれると期待している」。

元家氏は、アジャイル型のアプローチが大事だと述べた。「顧客の要望を完璧に満たす『100点主義』ではなく、『60点主義』でスモールスタートさせ、徐々にクオリティを高めていくという考え方に変える必要がある。そのためには、企画・開発・営業が一つのチームとなり、顧客のニーズを吸い上げながら高速でアップデートすることが大切。現場へのエンパワーメントや職能を越えた共通目標の構築も重要だ」。

DXを担うリーダーに必要な資質とは?

セッションも終盤となり、話題はDXに必要なリーダーシップに移った。

まず、『60点主義』を標榜する元家氏は、以下のように語った。「まだ『100点主義』が残る日本では、周りとの信頼の貯金を築くことや周囲からの見られ方に意識を向けることが必要。仕事が丁寧な人物であれば、たとえ失敗してもその経験を次に活かすだろう、とトップは思うもの。また、新しい価値を生むには、“コントロールされたカオス”が必要だと思う。自由と規律のバランスを取りながらカオスをコントロールできれば、非常に魅力的なものを創出できる可能性が高まる。突拍子もないアイデアを論理思考だけで処理するのではなく、周囲の人たちに理解できるように翻訳し、伝えていく能力も求められる」

クリエイティビティとマネジメントのミックスができること、と答えたのは各務氏だ。「DXは色々なものを破壊していく。そのため、合理的でなければ誰も付いてこない。一方で、根性も必要。根性の裏側にあるメンタルの強さ、人に対する愛も必要だ」。

中島氏は、気合、行動力、実務能力を必要要素として挙げた。「たとえば下手な英語も、気合があれば相手は話を聞いてくれる。DXにもためらわないという気合と行動力が大事。優秀な経営者ほどこれらの能力が長けている」

モデレーター

鈴木 健一

グロービス経営大学院 教員

東京大学大学院工学系研究科修了、米国シカゴ大学経営大学院修士課程修了(学位:修士(工学)、MBA)。

野村総合研究所を経た後、A.T.カーニー社にてマネージャーとして経営コンサルティング業務に従事。メーカー、通信事業者の新規事業戦略、マーケティング戦略、オペレーション戦略などの分野で幅広いコンサルティング経験を有する。グロービスでは2006年の大学院設置認可、さらに2008年の学校法人設立など、開学から2016年3月まで10年にわたり事務局長として大学院運営にたずさわってきた。現在は教員としてテクノベートシンキング、ビジネスアナリティクス、ビジネスデータサイエンスをはじめとする思考系、テクノベート系科目の科目開発、授業を担当するほか、グロービスAI経営教育研究所(GAiMERi)の所長としてAIを使った次世代の経営教育を創るべく研究開発に時間とエネルギーを使っている。

パネリスト

各務 茂雄 氏

株式会社KADOKAWA Connected 代表取締役社長
株式会社KADOKAWA 執行役員 DX戦略アーキテクト局 局長
株式会社ドワンゴ 本部長、情報経営イノベーション専門職大学 准教授
SmartCity研究所 所長
グロービス経営大学院 2012年卒業

Global企業(Compaq、EMC、VMware、楽天、Microsoft、AWS)での経験をベースKADOKAWAGroupのCIOの立場を通じて、日本型のDXを実践、研究し、日本全国にDXの本質を共有する事を行っています。
加えて、4月からは、iUの准教授として学生を教えることを通じて、自立できる人の育成支援をしています。

中島 徹 氏

15th Rock Ventures. Founder & General Partner 兼 Spirete, Inc. 代表取締役
グロービス経営大学院 2009年卒業

東芝の研究開発センターにて8年間、無線通信の研究・無線LANの国際規格の標準化・半導体チップ開発業務に従事し、数十件の特許を取得。2009年から産業革新機構に参画し、ベンチャーキャピタリストとして、日米でロボティクス、IT、ソフトウエア系の投資を手掛ける。エンジニア経験を生かして投資先の業績改善にハンズオンでコミットし、上場や売却など複数のEXITを実現。2016年にMistletoeに参画、2017年よりChief Investment Officerとして15ヵ国での投資活動を統括。2019年、15th Rock VenturesとSpireteを設立。日本や米国シリコンバレー、欧州の有力な投資家・起業家とのネットワークを有する。北海道大学大学院工学研究科修士。

元家 淳志 氏

パナソニック株式会社 インドイノベーションセンター センター長
グロービス経営大学院 2018年卒業

パナソニック株式会社入社後、LED照明やプロジェクターの研究開発、工場立ち上げに従事し、「平成25年経済産業大臣発明賞」「第10回照明学会技術開発賞」を受賞する等、技術発展と商品化に大きく貢献。以降、海外R&D拠点の企画、新事業開発マネジメントを担当し、2018年より現職。
インドデリーに駐在し、インド市場を起点とした新事業創造に従事。約2年間で10件の事業化を果たす。中でも、インドの社会課題(医療、誘拐、教育格差)を起点に創造したソリューション事業である「Jan Aid」、「Seekit」、「CareerEX / Xcelit」は日系メディアからも注目を集める。創造した事業の中東・アジア展開のマネジメントにも従事。