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投稿日:2020年10月05日

投稿日:2020年10月05日

読書の秋に読みたい書籍5選―2020

難波 美帆
グロービス経営大学院 教員
星野 優
グロービス経営大学院 教員
許勢 仁美
グロービス経営大学院 教員
溜田 信
グロービス経営大学院 教員
林 恭子
グロービス経営大学院 教員

読書の秋に読みたい書籍5冊をグロービス経営大学院の教員が紹介します。変化を捉え、自分を見つめ思索を深めるにはぴったりの5冊です。

『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』

推薦者:難波美帆

本書は、「問いのデザイン」と主題が付けられているが、「どうしたら良いワークショップファシリテーターになれるか」が主な内容だ。副題の「創造的対話のファシリテーション」の方が、より書名にふさわしい。実際「問いのデザイン」について書かれた第1章は全体の1割ほど。全体の3分の2は、「ワークショップのデザイン」、「ファシリテーションの技法」、筆者らがデザインしたワークショップの「事例」に紙幅を割いている。

では、なぜ著者は「問いのデザイン」を主題に置いたのか?という問いを立ててみた。昨今「デザイン」は産学官を問わず大流行だが、その意については捕まえにくいのに。

ここは、ひとまずデザインを「課題解決」としてみる。すると著者らが置いた本書の主題は「問いの課題解決」ということになる。

「課題」は、本書中で「関係者の間で『解決すべきだ』と前向きに合意された問題」と定義され、ここで主題の意は「問いの(関係者の間で「解決すべきだ」と前向きに合意された)問題の解決」となる。では、「問題」とはなにか。本書では「何かしらの目標があり、それに対して動機づけられているが、到達の方法や道筋がわからない、試みてもうまくいかない状況のこと」とある。なるほど、ここに来て、著者がこの本で著したかったことが見えた。創造的対話をファシリテートしたい(ざっくりいうと「うまく問いたい」)という動機を持つが、うまくいかない状況の解決策(=デザイン)を考えたということだ。ややこしい?いや、そのとおり、蓋し非常に哲学的な本である。「問う」ことすなわち哲学だ。

著者:安斎勇樹・塩瀬隆之 発行日:2020/6/4 価格:2970円 発売元:学芸出版社

『ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS&CASE』

推薦者:星野優

“MaaS”、“CASE”。自動車業界だけでなく、もはや広く市民権を得たキーワードと言えるのではないだろうか。とは言え、冒頭で分かりやすくその概念を説明した上で、MaaS、CASEにフォーカスした具体的な企業、理念、経営者、製品・サービスを紹介している。こうした製品・サービスが我々の生活にどの様な変化・利便をもたらすのか、どの様な社会問題の解決に役立つのかというポテンシャルを具体的に紐解き、さらにそのカテゴリーごとに事例を紹介している。ストーリーにのって読者はワクワクしながら読み進め理解を深めることができる。

また、本書が興味深いのは、企業経営者がぶつかった壁、苦悩、そして難所を乗り越えた後の喜びなどヒューマンな側面にも触れている点。インタビューを通じて、こうしたヒトとしての赤裸々な部分にも肉薄しているので、読者は感情移入しながら一つ一つの事例を理解できるのではないだろうか。「凄い人達の凄いアイデアのオンパレード」とはならない工夫も本書の特徴と言えよう。

著者:中村尚樹 発行日:2020/4/13 価格:1980円 発売元:プレジデント社

『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』

「〇〇思考という本はさんざん読んできた」
「アートについて語るのは自信がない」

どちらもYESなら、私と同じです。それでも、だからこそ、おススメしたい一冊。

何をもって美しい、正しいとするかは、時代によって変わります。新派は常に従来のやり方に反旗を翻し、独自性を主張してきたのです。著者は、2020年に生きるあなたはどんな見方をしますか?その見方もありですよ、とそっと背中を押してくれます。

副題に「”自分だけの答え”が見つかる」とあります。が、ただ読み進めるだけは、見つかりません。本書には、常識を見つめなおす対話が仕掛けられています。教科書的な見方だね?本当にこれが美しいと感じる?という突っ込みも入りそう。めんどくさいと思いつつ、いくつかの「やってみよう!」という誘いに乗れるかどうか。まずは、自分の見方、感じ方に興味をもってみませんか?

著者:末永幸歩 発行日:2020/2/20 価格:1980円 発売元:ダイヤモンド社

『時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて』

推薦者:溜田信

「時を戻そう」は、昨年のM-1グランプリで注目を集めた漫才コンビ「ぺこぱ」の決め台詞だが、「過去に戻ることができれば」と想像した経験はないだろうか?あるいは「未来に起こることを知りたい」と思ったことはないだろうか?

それが可能な世界が「時間を逆に進む世界」だ。だが一方で、「因果応報」というのを身に染みて知っている大人から見ると、不可能な気もする。“時間は人類にとって一番身近で、あたりまえなものの一つです。にもかかわらず。時間は古くから人類にとって、最もわからないものの一つ”(本書引用)と著者が語っている様に、未だ結論を見ていない。

中には「時間は存在しない」という学者も存在する。一方で本書は、“量子力学の世界では、失われた秩序さえも巻き戻せることが示された“(本書引用)という実験結果が出たことをほのめかしながら、アキレスと亀(アキレスはカメを追い越せるのか)から始まって、“人類最大の謎”解きを展開していく、科学書のはずが、まるで上質のミステリーを読んでいる気にさせる良書。秋の夜長にお勧め。

著者:高水裕一 発行日:2020/7/16 価格:1398円 発売元:講談社

『BCG 次の10年で勝つ経営 企業のパーパス(存在意義)に立ち還る』

 推薦者:林恭子

私達の生きている時代は、テクノロジーのエクスポネンシャルな進化、地政学的リスク、気候変動による異常気象、加えてのコロナ禍等、未曾有の変化の荒波にさらされています。そんな2020年の秋だからこそ、じっくり考えて頂きたいことがあります。それは「皆さんの企業は、何のためにこの世に存在し、なぜその事業をするのか」ということです。

私の出身企業でもある、ボストン コンサルティング グループが、日本企業の現状を歴史的にもグローバルにも大きな観点から見つめ直した上で、次の10年に勝ち残って行くために重要視していることを本書にまとめました。それが先ほどの問い、つまり「企業のパーパス(存在意義)」なのです。

パーパスは、社会に対してどのような価値を提供するかが根本にありますが、その社会は今、様々な危機にさらされています。企業は本業として社会問題解決に取り組み、付加価値を生みだすことでこそ顧客に支持されます。合わせて重要なのが、自身の働く企業に誇りを持てるかという、従業員のエンゲージメントです。ソーシャルへの意識の高いミレニアル世代以降は、顧客層としてのボリュームを増し、且つ従業員のメイン層にもなっていくのです。こうした顧客、従業員の期待に応えられる企業でなければ、未来が明るいとは言い難いでしょう。 

あなたの企業のパーパス(存在意義)は何ですか?この本を通じて考えてみませんか。

著・編集:ボストン コンサルティング グループ 発行日:2020/8/5 価格:2200円 発売元:日本経済新聞出版

難波 美帆

グロービス経営大学院 教員

大学卒業後、講談社に入社し若者向けエンターテインメント小説の編集者を務める。その後、フリーランスとなり主に科学や医療の書籍や雑誌の編集・記事執筆を行う。2005年より北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット特任准教授、早稲田大学大学院政治学研究科准教授、北海道大学URAステーション特任准教授、同高等教育推進機構大学院教育部特任准教授を経て、2016年よりグロービス経営大学院。この間、日本医療政策機構、国立開発研究法人科学技術振興機構、サイエンス・メディア・センターなど、大学やNPO、研究機関など非営利セクターの新規事業の立ち上げをやり続けている。科学技術コミュニケーション、対話によるイノベーション創発のデザインを研究・実践している。

星野 優

グロービス経営大学院 教員

慶應義塾大学法学部卒業、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修士課程修了(MBA)。大手総合商社にて、主に東南アジアの資源開発・輸入案件向けのプロジェクトファイナンス業務に従事。約3年にわたる海外駐在時には、石油化学製品の製造・販売合弁事業会社の非常勤役員に就任、出資・融資・製品引取も絡めた複合取引を実現。株式会社グロービス入社後は、ファイナンス系科目の教材開発等を担当する傍ら、グロービス・マネジメント・スクール及びグロービス・オーガニゼーション・ラーニング(企業研修)にて講師も務める。主著に『[実況]ファイナンス教室』(PHP研究所)。

許勢 仁美

グロービス経営大学院 教員

東京大学教育学部卒業、INSEAD Asian International Executive Program修了。アクセンチュア株式会社、国際協力機構(JICA-JOCV)を経て、グロービスに入社。一貫して、人、組織、地域(特に日本、ベトナムの農村)の能力開発に携わる。現在は、ファカルティ本部にて、各種企画業務を担う傍ら、「異文化マネジメント」などをテーマに、領域横断での研究・コンテンツ開発を担当している。グロービスマネジメントスクール、法人研修にてクリティカル・シンキング、ファシリテーション、女性リーダー育成プログラム等の講師を務める。

溜田 信

グロービス経営大学院 教員

東京大学工学部応用物理学科卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。銀行オンラインシステム担当のシステムズエンジニア&営業マネージャを経験。その後、外資系SIベンダー、マイクロソフトにおけるソリューションビジネスの経験を経て、戦略系コンサルティングファームA.T.カーニーに入社。メーカーの事業戦略・SIベンダーの営業戦略・組織改革、金融機関のIT戦略等、IT知識を持つ戦略コンサルティングプロジェクトに従事した経験を持つ。グロービスにおいては、マーケティングならびに思考系の教員を担当している。

林 恭子

グロービス経営大学院 教員

筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程前期修了(MBA)。米系電子機器メーカーのモトローラで、半導体、及び携帯電話端末のOEMに携わった後、ボストン・コンサルティング・グループへ。人事担当リーダーとしてプロフェッショナル・スタッフの採用、能力開発、リテンション・プログラム開発、ウィメンズ・イニシアチブ・コミッティ委員等、幅広く人材マネジメントを担当する。グロービスでは、人材・組織に関わる研究や教育プログラムの開発を担当した後、経営管理全般を統括。またリーダーシップ、人材マネジメント、ダイバーシティマネジメント、キャリア開発、パワーと影響力等の領域を中心に、グロービス経営大学院での講義、および、企業研修、講演などを多数務める。共著書に『【新版】グロービスMBAリーダーシップ 』(ダイヤモンド社)、『女性プロフェッショナルたちから学ぶキャリア形成』(ナカニシヤ出版)がある。経済同友会会員。組織学会、産業・組織心理学会、及び経営行動科学学会員。