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投稿日:2020年03月11日

投稿日:2020年03月11日

3の法則――マジックナンバー3に注意せよ!

嶋田 毅
グロービス電子出版発行人 兼 編集長、出版局 編集長

新刊『MBA心理戦術101』の1章「認知や意思決定に影響を与える心理バイアス」から、「3の法則」を紹介します。

人間は、なぜか3という数字に誤魔化される性向があります。特に何かを主張する際に、「根拠は3つあります」といわれると、「この人はちゃんと考えているのだろう」と錯覚しがちです。しかし筆者の経験では、根拠は3つといいながらも、実は最後のものは説得力がなかったり、同じことの言い換えが少なくありません。別の角度からの根拠が3つ揃っているか。しっかり吟味しないと相手の術数に嵌ってしまうことも少なくないのです。

(このシリーズは、グロービスの書籍から、文藝春秋社了承のもと、選抜した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

3の法則

定義:根拠が3つあるとそれらしく感じる傾向

洋の東西を問わず、3という数字には何か謎めいた力があります。たとえば「世界3大○○」や「日本3大○○」(例:世界3大美人=クレオパトラ、楊貴妃、小野小町)といったものは数えきれないくらいあります。

スポーツなどでも、野球はなぜか3ストライクや3アウトなど鍵となるルールに3という数字が多数登場しますし、サッカーでも1試合で3点取ればハットトリックとして褒め称えられます。「真善美」や「心技体」、「速い、安い、うまい」といった言葉も3つの要素から成っています(もちろん、「○○四天王」や起承転結、スポーツのクォーター制度に見られるように4を始め、他の数字でもよく用いられるものはありますが、3に比べるとかなり少ないです)。

3が好まれる理由としては、人間の脳のキャパシティ的にも覚えやすく、かつ思いだしやすい数字であることなどが指摘されています。

これを利用したのが、「何かの提案を行う際には、『理由は3つあります』と言え」という教えです。根拠が1つや2つでは弱いですし、4つや5つでは覚えきれないというのがその理由です。ロジカル・コミュニケーンの書籍などでも推薦されています。

ただ、中には「自信がなくても『理由は3つあります』と言えば説得力が上がるので、決め台詞としてそれを使え」などと書いている指南書もあるので要注意です。

本来、根拠というものはイラストに示したように、しっかり主張を支える柱のようなものである必要があります。しかし現実には、そのうちの1つが非常に弱い根拠だったり、そもそも根拠たりえないというケースはよくあります。「理由(あるいは根拠)は3つあります」に騙されない批判的思考を持つことが大事です。

嶋田 毅

グロービス電子出版発行人 兼 編集長、出版局 編集長

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。

グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。