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- 会計・財務
投稿日:2019年11月05日
投稿日:2019年11月05日
リースとレンタルの違い、説明できますか?
- 溝口 聖規
- グロービス経営大学院 教員
今回は、リースとレンタルの違いについて説明します。リースもレンタルも自動車、OA機器などの物件を一定期間貸す(借りる)という点では同じですが、多くの点で違いがあります。
リースとレンタルの主な違いとして契約期間の長さが挙げられます。リースは半年から10年程度のように中長期間の契約期間に対して、レンタルでは日単位、週単位のような短期間での契約が多いでしょう。
契約期間の違いは対象となる物件の性質の影響も受けます。自動車、DVDのような汎用性の高い物件であれば、レンタル会社は他の借手を比較的容易に見つけることが出来ます。そのため、レンタル会社があらかじめ物件を購入して借手に貸すことができます。リースでは、特殊な製造設備を借手のニーズに応じてリース会社が購入して借手に賃貸することもあります。このようなケースでは、リース会社は他の借手を見つけることが困難なため、長期の契約期間になります。
リースとレンタルの主な違い
以下主な相違点を表にまとめます。実際には個々の契約内容によるため、必ずしも表の通りにはならない場合もあります。
リースのメリット・デメリット
では、リースとレンタルではどちらが得なのでしょうか。両者のメリット・デメリットを簡単にまとめます。
レンタルと比べると、リースのメリットとして一般に以下が挙げられます。
- 最新の物件が使用可能
- (少額の初期投資で)物件の導入が可能
一方、デメリットとしては、
- 中途解約が不可能
- 保守・修繕義務
レンタルは、ザックリその反対となります。つまり、リースと比べると必要な時だけ短期間で物件を賃借することができます。短期間のため保守・修繕義務は通常は発生しません。また、事務処理負担の軽減も魅力です。一方、借手の自由度が高い分、料金が割高となる、物件が中古で選択肢が少ないといったデメリットがあります。
リースとレンタルの会計上の取り扱いの違い
リースとレンタルの会計上の取り扱いの違いはありません。そもそも会計ルールにはレンタルの定義がありません。会計ルールでは、貸手と借手による全ての賃貸借取引をリース取引と定義しています。したがって、レンタルも大きな意味でリース取引の1形態として把握されます。
「固定資産を買うのとリースで決算書はどう変わる?」で説明しましたが、リース取引に係る会計ルールでは、リース契約をファイナンスリースとオペレーティングリースに区分します。ファイナンスリースに該当するリース契約は、基本的に購入した固定資産と同様の会計処理(オンバランス処理)が必要です。他方、オペレーティングリースに該当するリース契約は、通常の賃貸借処理が可能です。リース物件及びリース債務はB/Sに計上されません(オフバランス処理)。なお、リース債務は財務諸表の注記に記載されます。一般にレンタル取引は、オペレーティングリースの1形態とみなされます。
なお、IFRSでは、2019年からオペレーティングリースについてもリース物件のオンバランス処理が必要になりました。国際的な会計ルールは、ファイナンスリースとオペレーティングリースの会計上の取扱いの違いが解消される方向で改正が進んでいます。
溝口 聖規
グロービス経営大学院 教員
京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。
(資格)
公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)
※肩書は公開当時のものです