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投稿日:2018年11月17日

投稿日:2018年11月17日

デジタル変革を推進する3つのガバナンス主体とは?

嶋田 毅
グロービス電子出版 発行人 兼 編集長出版局 編集長

今年9月発売の『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』から「あなたの組織に最適なガバナンスの仕組みを見つける」を紹介します。

デジタル変革を推進する際には、企業のデジタル化の状況に合わせ、それに見合ったガバナンス体制を敷くことが必須です。デジタル化は組織のさまざまな事柄を変えてしまうため、混乱や衝突を避けるために一定レベルの統制が必要なことに加え、情報漏洩による風評被害などのリスクも回避しなくてはならないからです。ガバナンスを機能させるための主体としては、全社デジタル部隊、ガバナンス委員会、デジタルリーダーの3者が必要になります。この3者が密に連絡しあい、相互補完して初めてデジタル変革は適切に推進されていくのです。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

あなたの組織に最適なガバナンスの仕組みを見つける

組織のガバナンスを設計するにあたっては、奨励したい行動から考え始めよう。あなたの組織では何を調整する必要があるだろうか。何を共有することを奨励したいだろうか。あなたの組織がそれをどれだけうまくやれるか、あるいは、「当たり前ではない行為」がどのくらい必要で、そうした行為をどのように促進させるかを考えてみてほしい。

高度に分散した組織では、共有と調整を確実なものにするために強力な集権的ガバナンスが必要となる場合があるが、各地域や部門のイノベーションを監督するためのガバナンスは、それほど厳格でなくてもよいかもしれない。一方で、非常に官僚的な組織や中央集権化された組織では、連携と共有はより当たり前のものであるかもしれないが、プロセスの革新や変革に向けては何か特別な支援が必要になる可能性がある。

それぞれのガバナンスの仕組みには強みと弱みがある。また、それぞれの仕組みが組織文化に自然に適合する場合もあれば、厳格なトップダウンの努力がなければ導入できない場合もある。

全社デジタル部隊は、インフラやツール、標準化、能力などに関して、強力な相乗効果を生み出すことができる。デジタル部隊が機能すると、イノベ-ションが加速され、効率が上がる。デジタル部隊には、資金やデジタルツール、特定のスキルを持つ人々が集結し、それらを活用することで社内のあらゆる部門のためにデジタルサービスを開発できる。部隊が標準を決め、サービス利用に関する方針を施行する中で、調整が自然に行われることもある。しかし、組織内における適切な構造や位置付けを決める際には課題もある。たとえ正しく位置付けられても、部隊が内向きな考え方をし、組織のニーズを見失うことがあるのだ。加えて、資金調達や調整面で困難が生じる場合もある。特に、組織の幹部の中に、デジタル部隊が幹部の自律性を脅かすと見なす者がいる場合である。

ガバナンス委員会は、調整を行うことを目的とする。投資の意思決定、資源の優先順位付け、方針と基準の確立などに関する調整だ。ガバナンス委員会が目指すのは、あまり官僚的になることなく、企業全体の活動の動きをそろえることだ。この委員会が機能すれば、全員を同じ方向に進ませられるようになる。だが、委員会の機能は意思決定に限られ、実行はできない場合が多い。人員が不足しているため、活動を密接に管理したり、新しいものを作る能力は限られている。変革の推進や、基準や方針の施行には、委員会以外の仕組みが必要となることも多い。

デジタルリーダーは共有を促進する。全社レベルでソリューションを採用する時期(と方法)を地方拠点に知らせ、全社共有の資源の利用を支援する。さまざまな活動同士や部門間での調整を行うこともデジタルリーダーの役割だ。デジタルリーダーが機能すると、デジタルビジョンが全社で共有されるようになる。また、組織文化の変革が進み、方針をよりうまく実行に移し、新しい仕事の仕方に容易に移行できるようにもなる。

しかし、リーダーの役割にも課題はある。上級幹部たちがこの役割を真剣に捉えていない場合、成功に必要な年功や影響力を持たない人材をリーダーに据えてしまうかもしれない。もう1つの課題は、リーダーの役割そのものに内在している。この役割は、橋渡し役として全社と事業部門の両方の利益のバランスをとる必要があるが、これを絶え間なく、偏りなく行うことは非常に難しい。リーダーが実際に1つの事業領域に籍を置いている場合は、特に難しくなる。

(本項担当翻訳者:林恭子 グロービス経営大学院教員、経営管理本部長)

『一流ビジネススクールで教える デジタル・シフト戦略』
ジョージ・ウェスターマン、ディディエ・ボネ、アンドリュー・マカフィー (著)、グロービス (翻訳)、
ダイヤモンド社、3,024円

嶋田 毅

グロービス電子出版 発行人 兼 編集長出版局 編集長

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。

グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。