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投稿日:2018年08月22日
投稿日:2018年08月22日
大塚家具のGC注記には何が記載されているのか?
- 溝口 聖規
- グロービス経営大学院 教員
先日、大塚家具が公表した18年12月期の第2四半期財務諸表には、「継続企業の前提に係る注記」、通称ゴーイングコンサーン注記(以下、GC注記)が記載されています。GC注記の概要については、こちらをご覧下さい(参考:倒産の可能性が決算書に書かれているって本当?)。今回は、大塚家具の第2四半期財務諸表にGC注記が記載された要因と記載内容を説明します。
GC注記の要因
GC注記は、簡単に言えば近い将来会社が倒産に至る可能性が高いと見込まれる場合に必要となります。具体的な判断基準として、例えば以下のような事項が挙げられます。
- 売上高の著しい減少
- 継続的な営業損失又は営業キャッシュ・フローのマイナスの発生
- 借入金等の返済の困難性
- 新たな資金調達の困難性
- 主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
- 重要な市場又は得意先の喪失
- 事業活動に不可欠な人材の流出
- ブランド・イメージの著しい悪化 等
このような状況が発生しても即座にGC注記が必要となるわけではありませんが、事業継続に対するリスクを十分に検討してGC注記の要否が判断されます。
大塚家具の第2四半期財務諸表を確認すると、GC注記の判断に至った要因として『当社は、平成28年(2016年)12月期より継続して営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しており、当第2四半期累計期間におきましても営業損失35億6百万円を計上し、営業キャッシュ・フローは20億80百万円のマイナスとなりました。』と記載しています。
大塚家具は現社長が就任して以来、16年12月期、17年12月期と連続して営業利益、営業キャッシュ・フロー赤字を計上しておりGC注記の判断基準に該当します。なお、実務的には、2期連続の営業損失、営業キャッシュ・フロー赤字であっても3期目に黒字が確実視される場合は必ずしもGC注記に至りません。大塚家具では、第2四半期決算を経て(決算発表8月半ば)通期での3期連続の赤字が見えたタイミングで発表に至ったのだと推察されます。
GC注記の記載内容
GC注記には、
(1)事業継続に対する疑義が存在する旨とその内容
(2)当該状況を解消、改善するための対応策
(3)(対応策をしてもなお)重要な不確実性が認められる旨と理由
(4)財務諸表は継続企業を前提として作成されており、重要な不確実性の影響が財務諸表へ反映されていない旨
(1)は前述のとおりで、(3)(4)はほぼ定型句となります。具体的な記載としては(2)の状況改善のための対応策になります。
大塚家具では、対応策として
- 店舗規模の適正化によるコスト圧縮
- 人員再配置によるコスト圧縮
- 売上改善策
- 安定的な財務基盤の確立
の4点を挙げています。
果たして、これらの改善策が実り近い将来業績が回復してGC注記が解除されるかどうか注目していきたいところです。
なお、GC注記の最近の傾向としては、リーマンショック後のピーク時(08年4‐9月期)には約150社あったGC注記対象会社が18年3月期決算では17社と過去最低レベルまで低下しています。
溝口 聖規
グロービス経営大学院 教員
京都大学経済学部経済学科卒業後、公認会計士試験2次試験に合格し、青山監査法人(当時)入所。主として監査部門において公開企業の法定監査をはじめ、株式公開(IPO)支援業務、業務基幹システム導入コンサルティング業務、内部統制構築支援業務(国内/外)等のコンサルティング業務に従事。みすず監査法人(中央青山監査法人(当時))、有限責任監査法人トーマツを経て、溝口公認会計士事務所を開設。現在は、管理会計(月次決算体制、原価計算制度等)、株式公開、内部統制、企業評価等に関するコンサルティング業務を中心に活動している。
(資格)
公認会計士(CPA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、公認内部監査人(CIA)、地方監査会計技能士(CIPFA)、(元)公認情報システム監査人(CISA)