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近年、多くの若手ビジネスパーソンの方から、将来に対する不安の声を聞きます。
「自分の会社や業界は将来も安泰なのだろうか」「転職しても受け入れてくれる会社はあるのだろうか」といったものです。
そして、新型コロナウイルスの流行により、実際に危機に直面した企業も多く、ますます不安の声が増えてきました。
そういった将来に対する漠然とした不安の解消法をご紹介します。
漠然とした不安の正体
まずは、漠然とした不安の正体を知ることが、不安解消への第一歩です。
今世の中で何が起こっているのか、私たちを取り巻く不安の種について解説します。
- ①長期化する職業人人生
- ②何が起こるか予測不可能
- ③キャリアは自己責任
- ④老後の心配
- ⑤ライフイベントとの両立
不安の正体①:長期化する職業人人生
もうすぐ人間の平均寿命が100歳位になっていく人生100年時代が到来し、定年は引き上げられ70代後半~80歳になるとされています。
多くの若者が長いキャリアに対してネガティブになるのは、「怖い」という感覚があるからでしょう。
「世の中の変化についていけないのではないか」「自分の持っている実力では役に立てる仕事がどんどん減ってしまうのではないか」「いつか職を失ってしまうのではないか」と、まだ見ぬ将来への不安の声をよく耳にします。
不安の正体②:何が起こるか予測不可能
現代は、テクノロジーの急激な進化により、あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増しています。
そして、将来の予測が困難な状態にあることからVUCA時代と呼ばれています。
ビジネス面では、画期的なサービスが次々と生まれる一方で、これまで想定していなかった業界が突然ライバルになるなど、戦いのルール自体が根底から変わることが起きています。
「大企業だから安心」とも言えなくなってきています。
不安の正体③:キャリアは自己責任
副業やフリーランス、テレワークなど、働き方の多様化が進んでいます。
一方で、終身雇用や年功序列など、従業員のキャリアを保証してきた従来の制度もなくなりつつあります。
会社の平均寿命も短くなっており、誰もが転職を経験することが当たり前の時代になってきました。
自分の身は自分で守る必要性が高まっています。
不安の正体④:老後の心配
現状から考えると、今の若手ビジネスパーソンが将来もらえる年金は、おそらく「雀の涙」程度の額になるでしょう。
平均寿命も延びている今、「老後に金銭面で困らないか」「ちゃんとした生活を送ることができるのか」「ずっと健康でいられるのか」と、不安を抱える人が多いのもうなずけます。
不安の正体⑤:ライフイベントとの両立
結婚や子供を持つか否かについては、本人の意思次第なので、無理にする必要はありません。
しかし、「結婚したい」という想いがあるものの、「この人だ」と思える人にまだ出会えていなかったら不安に感じるでしょう。
また、子供についても、1人の人間を育てるという大きな責任を伴うことですので、「ちゃんと立派に育てられるのか」「仕事との両立はできるのか」と不安に感じる人も多くいらっしゃると思います。
将来への不安の解消法5つ
このような状況下で、キャリアやお金など将来に対して不安に感じるのは当然のことだと思います。
外部環境の変化の流れを一個人で変えることは難しいので、不安を解消するために重要なのは「想定外のことが起こる前提での備え」です。
解消法①:できることに集中し、行動する
「不安だ、不安だ」と何もしないでネガティブなことばかりを考えていると、不安を助長させる危険があります。
不安というものは、目の前のことに集中し、行動している間は緩和もしくは消失するものです。
将来に対して不安な気持ちがわいてきたら、「今の自分は何ができるか」に集中し、将来に備えるためのアクションをとることをおすすめします。
解消法②:自己投資し「稼ぐ力」を磨く
将来に備えるために、株や不動産に投資をしている方がいますよね。
これからは、何よりもまず投資すべきは「自分自身」です。
最も有益で価値のある投資は「稼ぐ力」を身に着けることです。
将来への不安を取り除くためには、日々の自己投資の積み重ねによる「自信」が何より効きます。
自身の市場価値を上げ、「いつでもどこでも誰とでも」働ける状態にしておけば、キャリアやお金に関する不安も解消されていくでしょう。
そして、長い職業人生でより多くのリターンを得るためには、できるだけ若いうちから自己投資を始めることをおすすめします。
市場価値が高い人の特徴や磨くべきスキルについては、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
解消法③:キャリアの選択肢を広げるための行動をとる
スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」というキャリア論をご存じでしょうか。
キャリアの8割は計画的なものではなく、思いがけない縁など、予想しない偶発的な出来事によって決定されるというものです。
実際に活躍している人にインタビューすると、「偶然です」「ご縁です」といった言葉が出てきます。
しかし、彼らが本当に何も考えずにチャンスを引き寄せたかというとそうではありません。
やはりそこには共通してみられる行動があります。
それは、オープンマインドで何事にも好奇心を持ち、様々なことにアンテナをはり、自分がワクワクする方向や興味のある方向に向かってしっかりと行動し続けていたという特徴です。
思いがけない縁がキャリア形成につながった、身近な例を1つご紹介します。
私が教員を務めているグロービス経営大学院のMBAプログラムの学生で、初めてファイナンスを学び、その奥深い魅力に憑りつかれ、ファイナンスの道に方向転換された方がいます。
受講前には想像すらしていなかったキャリアです。
これも一つの「縁」です。
MBAは、経営を体系的に学び、疑似体験する場です。
実務ではまったく繋がりのなかった仕事や人との縁が生まれる場なので、人生の選択肢が増えるという結果にもうなずけます。
実際に、2020年のグロービス経営大学院の卒業生キャリアアンケートでは、以下のような回答が得られています。
思い通りにならない想定外の時代で、人生の選択肢を広げ、さらには理想の人生に近づいているという結果です。
MBAはあくまで一例です。
MBAに限らず、自分の世界を広げるための行動をし、様々な縁を取り込み、自らの人生を切り拓いていくことが、将来の漠然とした不安を解消するための鍵なのではないでしょうか。
まとめ:日々の自己投資が大きな資産になる
将来への不安を取り除く効果的な方法は、こちらの3つでした。
不安を乗り越え、理想のキャリアに近づいていくための一歩を踏み出してみてくださいね。
・できることに集中する
・自己投資し、「稼ぐ力」を磨く
・キャリアの選択肢を広げる行動をとる
また、経済産業省が人生100年時代に「多様な人々と仕事をしていくうえで必要な基礎的な力」として定義した『社会人基礎力』という概念があります。
どのようなスキルを身に磨いていくべきか迷ったら、社会人基礎力の中で自分が不足しているスキルから選ぶことをおすめします。
こちらの記事で、社会人基礎力に該当するスキルについて詳しくまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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著者情報
田久保善彦(グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長)
慶應義塾大学理工学部卒業、修士(工学)、博士(学術)、スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所にて、エネルギー産業・中央省庁・自治体などを中心に、調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院にてマネジメント業務・研究等を行なう傍ら、リーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』、共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』等がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。