目次
私たちの仕事の多くは、様々な関係者の力を借りたり、協力し合いながら進んでいきます。
本記事では、チームで仕事をする際やプロジェクトを進行する際に要となる「周囲を巻き込む力」を高める方法についてご紹介します。
「周囲を巻き込む力」とは
プロジェクトなど何か一つの目標に向かって、周囲の人を上手く巻き込みながら一緒に成し遂げていく力のことです。
単に仕事を割り当てればよいというわけでなく、巻き込まれた相手が自ら進んで期待されている役割を担い主体的に行動する状態を目指します。
仕事で他者を巻き込むことの重要性
完全に一人で仕事を完結できる職種の人はともかく、今のビジネス環境上では社内外の様々な関係者と一緒に進めていく仕事やプロジェクトが非常に増えています。
誰しも得意・不得意領域があるので、どんなに優秀な人でも一人でできることには限りがあります。
しかし、上手く他者の力を借り、協力し合いながら進めることができれば、想像以上のプラスのシナジーが生まれますし、一人では成し遂げられない成果をあげることができます。
他者と信頼関係を築きながら、スムーズにプロジェクトを進めていくうえで必要な力こそが、この「周囲を巻き込む力」です。
周囲を巻き込む力を身につける方法
巻き込み力を身につけるためのコツを5つほどご紹介します。
相手が動きたくなる意味のある目標・ビジョンを伝える
人が動く時には、動く理由が必要です。
何のためにやるのか、誰のためにやるのか、会社や社会のためにどんな意味があるのか。
まずは、プロジェクトの目的や目標をきちんと押さえ、それを巻き込みたい相手に分かりやすく腹落ち感のある言葉で伝えていくことが不可欠です。
巻き込みたい人について理解する
さらに、巻き込みたい相手に具体的にどのような役割を期待しているか、どのようなメリットがあるかも伝えましょう。
相手に納得してもらえるように伝えるには、日常のコミュニケーションや観察を通じて、相手について理解を深めていくことが重要です。
例えば、どのような経験やスキルを持っているか、どのようなことに関心や課題意識を持っているのか、どのような動機で動く人なのか、今どのくらい仕事を抱えているのか、どういった仕事の進め方を好むのか。
そういったことに日ごろから気を配りながら、相手に納得感のある伝え方を工夫してみてください。
周囲からの信頼残高を増やす
巻き込む力のある人は、普段から周囲に「この人なら大丈夫」「この人なら間違いない」と思われている人です。
このような考えのベースにあるものは「信頼」であり、日常の積み重ねによって形成されていきます。
ビジネスで信頼を得るためには、人間性とスキル面の2つを意識する必要があります。
人間性は、「口先だけでなく、きちんと約束を守る」「相手の意見や価値観を否定せず、受容力がある」といった仕事に対する姿勢が該当し、スキル面は「専門知識やスキルが高い」「実績を出している」といった仕事の成果に直結する要素が該当します。
周囲からの信頼を積み上げていくために、日常的にこの2軸を意識して行動するようにしましょう。
健全な根回しをする
根回しは、一言でいうと、正式に人を巻き込みに行く前の「下ごしらえ」です。
根回しという言葉にネガティブな印象を持たれる方も多いかもしれませんが、私利私欲に走らない、丁寧に仕事を進めていくために必要な「健全な根回し」であれば、どんどんやるべきです。
例えば、「巻き込みたい相手本人は問題なさそうだけど、その上司が反対しそう」という場合は、事前に上司の方をおさえておくなどです。
自らの本気度を見せ続ける
人を巻き込んでいくためには、プロジェクトの真ん中にいる人自身が、言葉と態度でその仕事に対する強い思いを伝え続けることが大事です。
その熱意により周囲の人も「気づいたら巻き込まれていた」というケースも少なくありません。
誰よりも情熱を持ち、懸命に取り組む姿勢を見せ続ける。 そうした努力も、人の心を動かすために重要な要素の一つです。
【立場別】巻き込み力を発揮するコツ
ここからは、巻き込みたい相手との関係性ごとに、効果的な巻き込み力を発揮するコツをご紹介します。
上司へ頼む場合
一般的に、上司は部下の成長を願っているものです。
上司を巻き込む際には、会社にとっての意義や上司にお願いしたいことをきちんと筋道立てて説明するだけでなく、上司が応援したい気持ちになるように熱意を持って伝えることが大事です。
同僚や部下へ頼む場合
同僚に何かをお願いする時は、普段からの信頼関係が最も重要になります。
一方的にお願いするばかりの関係性ではなく、同僚からのお願い事も率先してきくようにし、「おたがいさま」という状態を作っておくとよいでしょう。
部下に頼む場合は、部下にとって嬉しいことは何かを押さえたうえで、モチベーションが上がるような意味づけをし、期待していることを伝えつつ、部下が理解しやすい言葉で話すようにしてみてください。
他部署の人へ頼む場合
他部署の人を巻き込む場合は、相手の立場に配慮しつつ、他部署にとって具体的にどのようなメリットがあるかを伝えていきましょう。
さらに、部署をまたぐ際には、巻き込みたい相手本人だけでなく、その上司をおさえることも重要です。
巻き込み力向上のために磨いておくべきスキル
巻き込み力を身につけるには、「ファシリテーションスキル」「交渉力」「コミュニケーションスキル」の3つを鍛えることが有効です。
ファシリテーションスキル
ファシリテーションとは、一言でいうと「会議やミーティングを円滑に進める技法」のことであり、人を動かすために重要なリーダーシップスキルの1つです。
一方的に指示や命令をしたり、演説をするだけでは、人はなかなか主体的には動いてはくれません。
ファシリテーションを行う最大の目的は「腹落ち感」を生み出すことであり、適切な働きかけを行うことによって、会議の参加メンバーが自ら主体的に動き、協力して問題解決にあたってくれる状態を目指します。
?ファシリテーションのコツと具体的な鍛え方は、こちら
交渉力
交渉力とは、立場や役割、利害関係の異なる人に対し、「お互いが納得できるゴール」を目指して話し合う力のことです。
他部署の人を巻き込んでいきたい場面で、とくに必要とされるスキルです。
交渉で最も重要なポイントは、けっして「勝ち負けではない」ということです。
自分の意見を一歩的に押しつけ、相手を説得することが目的ではなく、あくまで双方が納得できる所へ結論を持っていくことを目的とします。
交渉力が高い人の特徴と鍛え方は、こちら
関連記事
ネゴシエーションとは?成功のコツや必要なスキル、手順を紹介 ネゴシエーションスキルは、ビジネスのさまざまな場面で求められます。ネゴシエーションスキルを身に付けることで、コミュニケーションを円滑にし、社内外の関係者を巻き込みながら問題解決に取り組むことができます。
コミュニケーション能力
コミュニケーションとは「対人間での情報共有や意思の疎通」のことであり、コミュニケーション能力は、それらをスムーズに行うことができる力のことです。
自分の想いを伝えつつ、相手の想いを酌み取りながら巻き込んでいくためには、コミュニケーション能力の向上が不可欠です。
コミュニケーション能力を構成するスキルと鍛え方は、こちら
まとめ
ビジネスを取り巻く環境が複雑化して、社内外の多くの方と関係性を構築し巻き込みながらリーダーシップを発揮する機会が増えてきています。
「相手も人間である」ということを強く意識しながら、相手を尊重し理解する。
まずは、そのような姿勢が人を巻き込んでいくうえで必要なのではないでしょうか。
オンライン体験クラス&説明会日程
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。