頑張りすぎるリーダーから脱却するための思考法

頑張りすぎるリーダーから脱却するための思考法

目次

リーダーとしての新しい役割を任されたばかりの方は、ついつい全力投球しすぎて疲れてしまうことが多いのではないでしょうか。現代のビジネス環境では、リーダーに必要なスキルが多様化する中で、特に重要とされるのが"曖昧さを許容する力"です。今回は、この力がなぜ必要なのか、具体的なメリットと実践方法をご紹介します。

新米リーダーが直面する課題とは?

リーダーとしての経験が浅い時期、誰もが一度は大きな壁にぶつかります。「自分がすべてを解決しなければならない」というプレッシャーを感じ、問題に対処するたびにストレスを抱えるものです。初めてリーダーを任された数カ月間は特にこの傾向が強く、「これで良いのだろうか?」と自信をなくすことも少なくありません。

このような時期に重要なのは、すべてを完璧にこなそうとしないことです。実は、リーダーの役割とは「すべての問題を解決すること」ではなく、チームが自律的に動ける環境を整えることなのです。

リーダーの役割は"すべてを解決すること"ではない

メンバー時代は自分の業務に集中し、成果を出すことが求められます。しかしリーダーになると、自分だけでなくチーム全体の成果を考えなければなりません。そして当然、メンバー間で意見が食い違ったり、価値観が異なる人同士が衝突したりすることが頻繁に起こります。

リーダーが難しいと感じる要因はここにあります。異なる意見や問題の間に立つことで、「どちらの意見を採用すべきか」「この問題は自分が解決すべきか」といったジレンマに直面するのです。

すべてに白黒をつけようとすると、リーダー自身が疲弊してしまいます。だからこそ、曖昧な状態を受け入れることが必要なのです。

"曖昧さを許容する力"が必要な理由

新米リーダーほど、真面目で責任感が強いため、すべての問題を解決しようと頑張りがちです。しかし実際には、すべての問題を完璧に解決することは不可能です。

曖昧さを許容するとは、「すべての問題に必ず明確な答えを出そう、とはしない」ということです。もちろん問題を放置するのではなく、優先順位をつけて本当に解決すべき課題に集中するのです。

リーダーは問題の深刻度を見極め、放っておいても致命傷にならないものであれば、あえて曖昧なままにする判断も求められます。このスタンスが、リーダー自身の負担を軽減し、チームの自主性を引き出すことにつながります。

曖昧さを許容することで得られる効果

曖昧な状態を許容することには、次のようなメリットがあります。

①メンバーの自主性を育てる

リーダーがすべてに首を突っ込まないことで、メンバーが自分たちで考え、解決しようとする意識が生まれます。曖昧な状態に置かれたメンバーは、「どうすればうまくいくか」を自ら試行錯誤するようになります。このプロセスを通じて、自発的な行動力や問題解決力が育まれるのです。

②問題が悪化するのを防ぐ

リーダーがあらゆる問題に介入すると、時にそれが火種となり、新たな問題を生むことがあります。特に些細な問題については、過度に干渉せずに放置することで、自然と収束するケースが多く見られます。また、メンバー同士が自ら調整し合うことで、チーム内の協調性も高まります。

③リーダーの精神的負担が軽減する

すべてを自分で解決しようとする姿勢は、一見責任感が強いように思えますが、長期的にはリーダー自身を追い詰める原因となります。曖昧な状態を許容し、一部の問題はチームに任せることで、自分の時間とエネルギーをより重要な課題に集中させることができます。その結果、冷静かつ的確な判断が可能となり、チーム全体のパフォーマンス向上につながります。

リーダーに必要なマインドセット

曖昧さを許容するために、リーダーが持つべきマインドセットをご紹介します。

①問題に優先順位をつける

リーダーには、多くの問題が一度に降りかかることがあります。しかし、すべてを同じレベルで重要視してしまうと、何を優先すべきかが見えなくなります。優先順位をつけるためには、「この問題は放置しても問題ないか?」「今すぐ解決しなければチームに深刻な影響があるか?」を冷静に見極める力が必要です。この判断基準を持つことで、限られたリソースを最大限に活用し、本当に重要な問題に集中できます。

②白黒つけないこともOKと考える

ビジネスの現場では、すべての問題に明確な答えがあるわけではありません。むしろ、曖昧な状態で進むことが常態化していることが多いです。このような状況で無理に白黒つけようとすると、かえってチーム内の混乱を招く可能性があります。「時間が経てば自然に解決することもある」という視点を持ち、あえて曖昧なままにすることで、チームの柔軟性を高めることができます。

③器を大きく構える

リーダーが冷静でいることは、チームにとって大きな安心材料になります。特に、些細な問題に対して過剰に反応しない姿勢を示すことで、メンバーは「この程度のことは自分たちで対処できる」と考えるようになります。また、リーダー自身も余裕を持つことで、より広い視野から物事を判断できるようになり、結果的にチーム全体の成長を促すことができます。リーダーシップとは、すべてに完璧な対応をすることではなく、チームにとって適切な環境を整えることなのです。

まとめ:曖昧さを許容し、リーダーとして成長しよう

リーダーはすべての問題を解決する存在ではありません。むしろ曖昧さを許容し、優先すべき問題に集中することで、より効果的なリーダーシップを発揮できます。

特に新米リーダーは「頑張らなきゃ」という気持ちが強く、無理をしがちです。そんな時こそ、一歩引いて曖昧さを許容する視点を持ちましょう。これにより、チームの成長を促し、リーダー自身も余裕を持って仕事に取り組めるようになるはずです。

「すべてを完璧にこなさなくて良い」。このマインドセットが、あなたをより良いリーダーへと導く第一歩です。

著者情報

熊谷 翔大

熊谷 翔大

神戸大学発達科学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。大手自動車メーカーにて、総務・人事部門にて、不動産管理や地域渉外、全社の労務管理に従事。また、全寮制の中高一貫校への出向も経験。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院・大阪校の責任者として、学生募集や学生の履修相談・キャリア支援、クラス運営のオペレーション等、大阪校全体のマネジメントを経験。現在は、グロービス・コーポレート・エデュケーションにて、組織開発・人材育成コンサルタントとして、組織・人づくり支援を行っている。
リーダーシップに関する教材開発や論理思考・リーダーシップ領域の講師も務める。グロービス経営大学院のVoicyチャンネル「ちょっと差がつくビジネスサプリ」では、水曜日パーソナリティを担当。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

BACK TO CATEGORY

Related Content

合わせて読みたい記事

思考体力を守るタスク管理のコツ

思考体力を守るタスク管理のコツ

部下の個性を活かす「仕事の任せ方」

部下の個性を活かす「仕事の任せ方」

部下に信頼される上司が実践している「問いかけ」のコツ

部下に信頼される上司が実践している「問いかけ」のコツ

頑張らなくても続く!やる気を引き出す目標設定の3つのポイント

頑張らなくても続く!やる気を引き出す目標設定の3つのポイント

仕事の失敗を学びに変える!失敗したときに考えたい3つのポイント

仕事の失敗を学びに変える!失敗したときに考えたい3つのポイント

Recent Entries

最新記事

思考体力を守るタスク管理のコツ

思考体力を守るタスク管理のコツ

部下の個性を活かす「仕事の任せ方」

部下の個性を活かす「仕事の任せ方」

部下に信頼される上司が実践している「問いかけ」のコツ

部下に信頼される上司が実践している「問いかけ」のコツ

頑張らなくても続く!やる気を引き出す目標設定の3つのポイント

頑張らなくても続く!やる気を引き出す目標設定の3つのポイント

Share