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自身のキャリア、とくに転職や異動などについて考えるとき、「キャリアアップ」という言葉が頭をよぎる方は多いのではないでしょうか。
今回は、理想のキャリアアップを実現する上でやるべきことをご紹介します。
キャリアアップとはどういう意味?
キャリアとは、「経歴」「職歴」などを意味する言葉です。
そしてキャリアアップとは、能力や地位、自身の市場価値が「現状よりも向上している状態になること」です。
一方で、キャリアアップは抽象度の高い言葉でもあり、人によって捉え方が実にさまざまであることも特徴です。
私は長くキャリア支援の現場にいましたが、転職希望者より「キャリアアップがしたい」という要望を聞くことが多々ありました。
「では、あなたにとってのキャリアアップとは何ですか?」と深堀ってヒアリングしていくと、下記のように人によって異なる答えが返ってくることが常でした。
- 昇進や転職により年収が上がること
- 大企業に転職すること
- 特定分野の専門性をより高めること
- マネジメント職に就くこと
- ポジションが上がること
- 契約社員から正社員になること
個人のキャリアの選択に「正解」はありません。
なので、キャリアアップの具体的な捉え方がさまざまであることは、ある意味当然と言えるでしょう。
スキルアップとの違いは?関係性はある?
スキルとは、「技能」を意味する言葉です。
そしてスキルアップとは、ある特定のスキルや知識を習得したり、磨いたりしていくことを意味します。
スキルアップは、キャリアアップを実現する上で重要な概念です。
キャリアアップするためには、目標(理想の状態)と現状のギャップを埋める必要がありますが、そのギャップがスキルアップによって解消されるケースが多々あるからです。
なので、
- キャリアアップのために、まずはスキルアップに取り組む
- スキルアップした結果、キャリアアップをした
という構図になります。
個々人がキャリアアップを考えることの重要性
キャリアアップの具体的な捉え方は人それぞれですが、キャリアアップそのものは誰もが意識すべき概念です。
先行き不透明で転職が当たり前になった今、個人のキャリアは自己責任で考える時代になりました。
そして変化の激しい今、現状にとどまらず、個々人が常にキャリアアップを意識する必要性が増しています。
時間やコスト、体力が有限であることを考えると、誰もが戦略的に自分自身のキャリアを考え、キャリアアップし、市場価値を高めていかなければなりません。
キャリアアップを実現するためにやるべきこと
キャリアアップを実現するためには、まず「キャリアプラン」を立てる必要があります。
キャリアプランは3つのステップで作成していきます。
- ステップ1:理想(なりたい自分)を描く
- ステップ2:今の自分とのギャップを明らかにする
- ステップ3:達成手段と中間目標を考える
そして、ステップ1~3を考えていく上で重要となる「3つの枠組み」があります。
この3つを深く考え、狙いを定めて行動をしていくことが、確かなキャリアアップにつながります。
- ①Will (意思)
- ②Can(スキル)
- ③Market Value(市場価値)
それぞれについて詳しく説明していきます。
①Will (意思)
まずは、「自分は将来どうなりたいか?」「自分は社会に対して、どのような価値発揮をしていきたいか?」を考え、自らが望む方向(目標)を定めましょう。
仕事における価値観やモチベーションは人それぞれなので、答えはさまざまだと思います。
理想の自分が、現在のキャリアの延長線上にある人もいれば、ない人もいるでしょう。
後者の場合は、転職や異動など働く環境自体を変えることも選択肢に出てきます。
なりたい自分を描けたら、理想と現状のギャップを洗い出していってみてください。
そして、「そのギャップを埋めるためにはどうしたら良いか」と、逆算的にアクションプランを考えていくことが、本質的なキャリアアップを実現する上でとても大切なことです。
ギャップを埋める手段として、多くの場合こちらの2つが鍵となります。
- Can(スキル)
- Market Value(市場価値)
こちらの記事で、キャリアプランの書き方について詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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②Can(スキル)
「Can(スキル)」獲得は、キャリアアップのためのひとつの手段となり得ます。
ここで意識して獲得すべきスキルは、あらゆる業務の幹となる「ポータブルスキル」です。
ポータブルスキルとは、異動や転職によって働く環境が変わったとしても活かせる「持ち運びができるスキル」のことを指します。
例えば、論理的思考力やコミュニケーション力、仮説思考力、問題解決能力などがあげられます。
自社だけで有用なスキル「アンポータブルスキル(=持ち運びができないスキル)」や、職種ごとに必要とされる専門知識やスキルを身に着けることも、日常業務をこなす上で非常に重要ですが、それだけではキャリアアップとして不十分です。同時に「ビジネス基礎力」ともいえるポータブルスキルを高めていくことが、効果的なスキルアップの要となるでしょう。
また、スキルの習得にはインプットしたスキルをアウトプットすることが不可欠です。グロービス経営大学院の体験クラスでは「クリティカル・シンキング」をテーマにビジネススクールのディスカッションを無料で体験いただけます。アウトプットを中心とした学び方を知りたい方は、ぜひご参加ください。
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③Market Value(市場価値)
最後に押さえておくべきは「市場価値」です。
とくに転職活動の現場では、この市場価値の観点がとても強調されます。
市場価値は、自分を商品と見立てたときに「他社からみて価値があるかどうか」がポイントとなります。
そして「市場価値が高い人」というのは、「実力(スキルと経験の掛け合わせ)がある人」のことを指します。
なので、キャリアアップを実現するためには、スキルアップだけでなく、実務で実績を出し経験を積んでいくことが重要となります。
また市場価値を考える際、「労働市場」も欠かせない要素となります。
なぜなら、労働市場を意識せずに自身のやりたいことや高めたいスキルを考えても、「それは今の労働市場からは求められていません」となる可能性があるからです。
そうなってしまっては元も子もありません。
市場価値を考える上で大切な問いは、こちらの3つです。
・①「今後、市場で必要とされるスキルは何なのか?」
・②「今後、どの業界が伸びてどの業界が縮小するのか?」
・③「時代が変わっても必要とされるスキルやマインドセットはどのようなものか?」
こちらの記事で、市場価値が高い人の特徴について詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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どこでも誰とでも働ける!転職で市場価値が高い人の特徴と高めるコツ 市場価値とは、自分を商品として考えた時の、世の中からみた価値(値段)のことです。市場価値が高い人の特徴についてご紹介します。
キャリアアップするには社内・転職どちらがおすすめ?
キャリアアップは「社内」で行う方法と、「転職」で実現する方法があります。
それぞれのメリットとデメリットをご紹介します。
社内キャリアアップのメリット・デメリット
【メリット】
すでに現状の業務に関する知見や経験を持っており、社内の人間関係が構築できているので、比較的キャリアアップにかける労力が少なくてすむというメリットがあります。
【デメリット】
現状よりも上の役職に就くことによるキャリアアップを希望する場合は、会社の状況にもよりますが、そのポジションに空きがなければ、成果を上げ続けても遠回りになる可能性があります。
転職キャリアアップのメリット・デメリット
【メリット】
学生のときの就職活動と異なり、中途採用ではポジションや年収が明確に提示されているケースが多くあります。
なので、転職は「キャリアアップしやすい環境を自分で選択できる」というメリットがあります。
【デメリット】
コツコツと積み上げた評価や社内の人間関係を、再びゼロから構築していかなければならなりません。
そのため、社内でのキャリアアップを図るよりも労力や時間がかかる可能性があります。
3つの枠組みはバランスよく考える
3つの枠組みをご紹介しましたが、いずれかに偏らず3つをバランスよく考えることがとても大切です。
Market Value(市場価値)を踏まえずにCan(スキル)とWill(意思)だけを考える危険性は先述しましが、反対に市場価値だけに縛られてしまうと、その人らしいキャリアが実現できなくなります。
そのため、時間をかけてでも3つのポイントをバランスよく丁寧に考えていくことが重要です。
キャリアアップを成功させるコツとは?
キャリアアップを成功させる上で、おすすめしたいことは以下の通りです。
- キャリアアップについて、自身の考えや意思を周囲に伝える
- ひとりではなく、キャリアや能力開発に知見のあるプロと一緒に考える
- 定期的に振り返りを行い、やりたいことや足りないスキルを言語化する
- 自身の業務範囲にとどまらず、新しい知識やスキルを積極的に学ぶ
普段は目の前の業務に集中しており、上司や周囲の方とキャリアについて話す機会はなかなかないかもしれません。
ぜひ、評価面談や目標設定の場などを活用して、「これからのキャリアで挑戦してみたいこと」「キャリアで不安に感じていること」について話してみてください。
3ヶ月~半年など、定期的に自身やキャリアを振り返る習慣が身に付くことで、大まかな方向性や今後のやりたいことなどが見えてくるようになるでしょう。
また、ほかの人に話すことで、客観性を持った適切なフィードバックがもらえるだけでなく、言語化を通して考えや意思がより明確になります。
加えて、会社の上司や先輩、友人や家族への相談ももちろん大事ですが、客観性と最新の知見を有するプロに相談することで、独り善がりにならないキャリアアップを実現していけるでしょう。
まとめ
今回はキャリアアップを考える上での3つの枠組み(Will・Can・Market Value)に関してご紹介しました。
この枠組みは私がキャリアカウンセリングの現場で長年活用してきたフォーマットです。
キャリアアップを実現するための第一歩は、立ち止まって正しく考えることです。
その上で、あなたらしいキャリアを目指していきましょう。
著者情報
山口 貴士(グロービス経営大学院 東京校 スタッフ)
早稲田大学国際教養学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。米半導体メーカーインテルにて法人営業を経験した後、パーソルキャリア株式会社(旧:インテリジェンス)にてキャリアアドバイザーとして2500名以上のキャリアカウンセリングを実施、グループリーダーを経験。その後、グロービスに入社。現在は、グロービス経営大学院の学生募集企画、および採用業務を担当。国家資格キャリアコンサルタント。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。