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私たちは日々、多くの仕事を片付けなければなりません。
しかし、実際に取り組んでいくと、さまざまなことが複雑に絡み合い、どこから手を付けたらよいか分からないことがあります。
ロジカルシンキング(論理的思考力)とは、そういった「複雑なものを整理し、シンプルにしていく思考方法」です。
本記事では、全ての社会人に必要不可欠なスキルであり、あらゆる業務をこなす上でのベースとなる「ロジカルシンキング」を鍛える方法をご紹介します。
ロジカルシンキング(論理的思考力)とは
論理的思考力とは、全体像を把握しながら物事を体系的に整理し、矛盾や飛躍のない筋道を立てる力です。
「ロジカル」とは「論理的な」「筋の通った」という意味であり、とくに問題解決の場面で力を発揮します。
この能力が高い人は、他者の考えを正確に理解し、自分の意見を明確に伝えることができます。
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なぜ今、クリティカル・シンキングが必要なのか? ~VUCA時代に必須の思考スキル~ 本記事では論理的思考との違いや身に付け方を解説します。クリティカル・シンキングとは「経験や直感だけに頼らず、客観的な視点で分析し、問題を解決する力。客観的な視点で考えた内容を周囲の人に納得感のあるかたちで伝える力」です。
ロジカルシンキングを身に付けるメリット
ロジカルシンキングは、幅広いビジネスシーンで役立つので、業種や役職を問わず、全ての社会人が身に付けるべきスキルのひとつです。
メリット①:問題解決能力の向上
問題解決とは、問題や課題を見つけて原因を分析し、解決策を考え実行する一連の流れです。
あらゆる業務のベースとなるものであり、ビジネスで成果を出していくためには問題解決能力は必須のスキルです。
物事を体系的に整理し、因果関係を正しく把握するロジカルシンキングを鍛えれば、問題解決能力も大きく向上します。
メリット②:プレゼン力や提案力の向上
交渉相手にとって納得度の高い筋道の通った主張ができるようになるため、自身の提案が採用されやすくなります。
メリット③:コミュニケーション能力の向上
コミュニケーション能力は、「聴く力」と「伝える力」からなります。
「聴く力」は相手の意見や考えを正確に理解する力で、「伝える力」は自分の意見や考えを正確に理解してもらう力です。
ロジカルシンキングを鍛えることで、この両方の能力の向上が見込まれます。
ロジカルシンキングを鍛えるための4つの方法
なんとなく難しそうな印象を持たれる方もいらっしゃいますが、どなたでもトレーニングによって十分に習得することが可能です。
方法①:言葉を具体的にする
まず、日々の何気ない会話の中の「抽象的な言葉」を「具体的な言葉」に変えることが、ロジカルシンキングのトレーニングになります。
例えば、 普段こういった言葉を使ってしまう人は気を付けてみましょう。
・「やるべきことに注力して、目標達成に向けて頑張ります」 →具体的に何をやるのか明確にする。
・「早めに提出します」 →具体的な期日を伝える。
とくに、後者の「早め」の感覚は人によって異なります。
抽象度が高い言葉は、自分の伝えたいことが相手に正しく伝わっていないことがあります。
全ての人が同じイメージができるように伝えるためには、より具体的に言葉を定義する必要があります。
方法②:自分の思考の癖に気付く
ロジカルシンキングを鍛えるためには、自身の「思考の癖」に気付くことも大切です。
思考の癖の改善には、「クリティカル・シンキング(批判的思考)」という、意識的に自分の考えを批判的にみる思考法の習得が有効です。
クリティカル・シンキングを鍛えることで、主観や先入観にとらわれずに物事を見る力が養われます。
一方で、クリティカル・シンキングは、書籍を読んだり、動画を観たりしただけでは、なかなか習得が難しい思考法でもあります。
グロービス経営大学院など、講座として提供しているビジネススクールもあるので、こうした外部の機関を活用するというのもひとつの手です。
講座は2週間に一度、計6回の開催。
3ヶ月で思考の仕方が大きく変わりますので、ぜひ検討してみてください。
(▼講座の詳細はこちら)
『クリティカル・シンキング』講座
またグロービス経営大学院では、随時オンラインにてクリティカル・シンキング講座の『無料体験クラス』を実施しています。
授業の雰囲気や進め方を知りたい方は、まずはこちらのご参加をおすすめします。
(▼日程一覧はこちら)
方法③:本質的な問いを押さえる
論理的に考えるためには、「本質的な問い」を押さえることも重要です。
「今、目の前で片付けている業務は、具体的にどのような課題(=問い)を解決するためのものなのか」を常に押さえることを心掛けましょう。
「問い」をしっかりと押さえていなかったために、仕事が効率的・効果的に進まない例は多々あります。
例えば、皆さんが「営業力強化プロジェクトチーム」に任命されたとします。
よくあるのは、「営業力強化のための研修をするのはどうか」と思いつき、「どのような研修を行えばよいのか...」と頭の中で無意識に問いを変換してしまうことです。
そうすると、たとえ作成した研修の提案書が力作だったとしても、研修は営業力強化の一部にすぎない可能性があります。
実際には研修なんて些細なことで、本質的には「営業のプロセスをいかに見直すか」という問いの方が重要かもしれません。
問いを押さえるためのコツは2つあります。
- 1.問いを分解する
- 2.問いの背景を確認する
【1.問いを分解する】
例えば、皆さんが人事担当だったとして、上司から「社内のグローバル人材の育成施策を考えてくれ」と言われたとします。
このままでは漠然とした「大きな問い」過ぎるので、「どのような人材を?」「いつまでに?」「どの程度?」「いくらかけて?」といったように、検討すべき問いを分解していきます。
【2.問いの背景を確認する】
「問いを提示している側の背景には、どのような問題意識があるのか?」「どのような経緯で、その問いは出てきたのか?」ということを理解することも重要です。
先ほどのグローバル人材の例で言うと、人事だけの問題なのか、全社的な戦略転換なのかによって、考えるべきことの範囲が変わってくるからです。
背景を確認するには、「こういうテーマが今出てきた背景には何があるのでしょうか?」とシンプルに聞くことをおすすめします。
方法④:主張と根拠の骨格を作る
「問い」を押さえたら、次に考えるべきは、その問いに対する自分なりの「答え(主張)」です。
「グローバル人材育成のために何をすべきか?」が問いであれば、「そのためには、〇〇と△△にまず取り組むべきです」が主張になります。
そして、ある主張をするためには、「なぜそう言えるのか?」という根拠もセットで必要となります。
この2つがしっかりとリンクしていれば、説得力がぐんと増します。
主張:「~だと思う」
根拠:「なぜならば~」
主張を組み立てるための、2つのアプローチ方法をご紹介します。
- 1.演繹法
- 2.帰納法
【1.演繹法】
既存のルールに、具体的な事象を当てはめて結論や主張を導く方法です。
私たちは主張をしようとする際に、全てを必ずしもゼロベースで考えているわけではありません。
すでに知識やルールがある分野では、その知識を拝借することで主張を作ることができます。
演繹法を身に付けるためのポイントは、「一般的なルールの引き出しを増やすこと」「知識を"使える状態"にしておくこと」です。
【2.帰納法】
複数の事象から、自らある共通のルールを抽出し、無理なく言えそうな主張を導きだす方法です。
演繹法は自動的に結論が決まっていくのに対し、帰納法は「解釈が何通りも成立する」という特徴があります。
目の前の事象から新しいものを「想像する力」が求められます。
帰納法のコツは、「思い込みを捨てて、サンプルをしっかり集めること」「経験や事例の幅を増やし、具体的に考える力を身に付けること」です。
ロジカルシンキングを支える3つの概念
ロジカルシンキングを習得するには、「MECE」「ビジネスフレームワーク」「ロジックツリー」の3つを使いこなせるようになることも有効です。
①『MECE』:網羅性を追求する
MECE(ミーシー)とは、 こちらの頭文字をとった言葉です。
- Mutually(お互いに)
- Exclusive(重複せず)
- Collectively(全体に)
- Exhaustive(モレがない)
日本語に訳すと、「全体集合として、それぞれが重複することなく、モレがない状態で網羅されている」という意味です。
物事における網羅性を追求するための考え方で、限られた時間の中で最善の解決策を考える際に重要です(※ビジネスにおいて、時間と資源は有限です)。
MECEを自然と意識できるようになれば、情報整理力がぐんと増し、効率性・生産性が上がります。
逆にMECEができておらず、「モレ」や「ダブり」がある状態では、的外れな解決策になってしまったり、非効率な資源配分が起こったりします。
例えば、職業で分類したとします。
【学生/主婦/アルバイト/会社員】
とした場合、自営業の人が含まれていない「モレ」が発生していますし、学生かつアルバイトをしている人もいるので「ダブり」も発生しています。
この分類の仕方では、MECEとはいえません。
②『ビジネスフレームワーク』:MECEの応用
いわゆる「ビジネスフレームワーク」の多くは、MECEを応用したものです。
状況や課題の本質を押さえる上で非常に役立つので、積極的に学び、使いこなせるようになることをおすすめします。
【例①:3C】
新規市場の定義や新商品開発などの場面で、環境分析を行う際に役立つフレームワークです。
- Customer(顧客):ターゲットとなる顧客は誰で、市場はどのような状況か?
- Company(自社):自社の強みやユニークネスがどこにあるのか?
- Competiror(競合): 自社の強みやユニークネスがどこにあるのか?
【例②:4P】
マーケティング戦略を考案したり見直す上で、役立つフレームワークです。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(販売チャンネル)
- Promotion(プロモーション、コミュニケーション)
③『ロジックツリー』:広がりと深さを押さえる
問題の原因を深堀りしたり、解決策を具体化&特定化したりするときに役立つ考え方です。
また、考え得る解決策の優先度をつけやすいというメリットもあります。
MECEの考え方(漏れなく、ダブりなく、網羅する)をベースとして、ツリー状に(※木が葉で生い茂っている様子を想像してください)、要素を分解&整理していきます。
例えば、肩こりに聞く商品やサービスの市場機会を考える際には、このようなロジックツリーで考えていきます。
まとめ
ロジカルシンキングを代表とするビジネス基礎力は、若いうちから身に付けた方が、投資対効果が大きいスキルです。
ぜひ積極的に鍛えていきましょう。
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著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。