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新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている中、企業や個々人のリスクマネジメントの注目度が高まってきました。
今回は、事態に対して損害を最小化するために必要な危機対応能力について考えていきます。
ウィズコロナで変わる働き方
在宅ワークの導入など、今までの働き方を大きく変えることを余儀なくされ、みなさまの会社でもいろいろと対応が大変だったのではないでしょうか。
私が教員を務めているグロービス経営大学院でも、働き方や授業形式に大きな変化が生じています。
授業は、今までは通学受講とオンライン受講の2種類を用意していたのですが、コロナ流行後は全てオンライン受講に切り替え、私自身も在宅にて仕事や授業を行っています。
危機対応能力が高い人とは?
今回のコロナに対する危機対応において難しい点は、ほとんどが前例のない中で行っていかなければならないことです。
危機対応のプロセスは、4つのフェーズに分かれます。
危機対応能力の高い人の特徴について、フェーズごとに見ていきましょう。
フェーズ①:自分ごと化と事前の想像力
地震など発生の予測が難しいものもありますが、今回のコロナは中国・武漢から世界中に広がっていき、日々刻々と状況は変わっていきました。
その状況を、「ふーん、なんか怖いな」と他人事のように捉えている人と、武漢で最初にウイルスが確認された時から「もしかするとこれが日本にも来るかもしれない」とすぐに自分ごとに置き換えて、「日本に来るとしたらいつ頃だろうか」「どのくらいの規模だろうか」と先々のことを想像する人がいます。
後者ように、起こりうる事態に対してどのくらいリスク感度や想像力を持っているかが、危機対応能力における重要な要素の1つです。
フェーズ②:影響範囲の特定
リスクを自分ごとに捉えたうえで、次に意識すべきは「自分や周囲にどのような影響があるか」です。
仕事における影響範囲の特定には、どのくらい業務知識を持っているか、自分の仕事をどれだけバリューチェーン全体で捉えているかが鍵となってきます。
フェーズ③:やるべきことの論点出し
実際に危機対応していくにあたって、やるべきことの論点出しが必要ですが、抜け漏れなく出すためには「顧客側から逆算して考える力」が重要です。
しっかりと現場や顧客のことを理解し、「顧客にはどのような影響が出るだろうか」という観点も交えて、自分たちがすべきアクションを検討しましょう。
フェーズ④:実際のアクションに移す
自分の担当業務やポジションによって、どのくらいの範囲までの対応をするか変わってきますが、やはり自部門だけで完結することは少ないでしょう。
なので、最後のフェーズで問われるのは、いかに関係者を巻き込んで、実行していけるかという「巻き込み力」です。
巻き込み力は、普段からどれだけ自分たちに影響を与える他部門や他チームの人との信頼関係を構築しているかが肝になります。
まとめ
危機対応能力は、リスク感度や想像力に加え、業務知識や現場/顧客理解、他部門との信頼関係作りといった普段からの努力も重要になってきます。
「日常の総力戦」と言えるでしょう。
コロナに限らず、VUCA時代と言われる先行き不透明な時世で、リスクマネジメントは必須の能力ですので、ぜひ意識して高めていってください。
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。