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「時代の先行きが見えない中、頑張って働いたりスキルを高めても、報われないのではないか?」
社会人向けキャリアセミナーに登壇すると、若手社会人の方からこうした将来に対する不安の声をよく聞きます。
今の20代~30代の方は、子どもの頃から「失われた20年」と呼ばれる、バブル崩壊後の見通しの暗い不景気な時代を生きてきました。
親世代ほどの報酬や安定したキャリアは望めず、明るい未来のイメージも持てない。
AIに多くの仕事が代替されるという話もあれば、年金は雀の涙かのような話もあります。
そうした中、「頑張っても意味がないのでは?」と悲観的に考える若手社会人が多いのもうなずけます。
ただ、悲観的に過ごすだけの人生100年は、あまりにも長すぎるのではないでしょうか?
できれば、生まれた時代と共に生きることを受け入れ「どのように生きたいか?」を考えるシフトチェンジをしてほしいと願っています。
この記事では、今の時代を健やかなメンタルで乗り切るためのマインドセットと方法についてお伝えします。
今私たちが生きているのは「変化」の時代
あらためて、皆さんは、いま生きているこの時代を、どのような時代だと捉えていますか。
1990年代初頭のバブル崩壊後からの経済停滞、第二次就職氷河期、相次ぐ未曽有の出来事。新型コロナウイルス(COVID-19) のパンデミックも相まって失われた20年が、30年を超えようとしています。
今の時代を表す言葉として、「予測不能な時代」「大きな転換点」「人類史の曲がり角」「不安定な時代」など様々なものがありますが、共通するキーワードは「変化」でしょう。
私がキャリアセミナーに登壇する際には、必ず参加者の皆さんに時代認識と具体的な変化要因を語っていただきます。
私たちのキャリアを考えるにあたり、この変化の時代の大きな影響を無視できないからです。
思い出す限りでも、「予測不能な世界情勢」「働き方のデジタルシフト」「ジョブ型雇用への移行」「副業・パラレルワークの活発化」などが挙げられ、キャリアを取り巻く変化要因の多様さを実感します。
ここ最近は「メディアで○○のように言われている」という話に限らず、「自社で○○の導入がはじまった」「○○の影響で自分の業務が変わった」のように実際に起こっていることを語る方が増えています。
この先、変化が実生活により一層の影響をもたらし始めることは間違いなさそうです。
変化による恩恵もたくさんある
確かに、親世代に比べて、平均年収や将来への安定性は下がる傾向にあるかもしれません。
その一方、主にテクノロジーの進化により、便利なサービスが次々と生まれ、安価で手軽にその価値を享受できるようになりました。
生活の基盤が豊かになった恩恵は見逃せません。
インターネットやスマーフォンの普及で、手のひらからいつでも世界中の人とコミュニケーションがとれます。
YoutubeやNetflixといった動画サービスや、iTunesやSpotifyなどの音楽サービスも定額利用で、自由度高く楽しめるようになりました。
SNSにより、個人の情報発信力やつながる力が圧倒的に強くなり、様々な機会がもたらされるようになりました。
個人の発信力がそのまま大きな収益に繋がることや、SNSを介して自力で仕事を獲得する人も増えてきています。
働き方や生き方にも、選択肢が増えています。
この先は、会社員として1つの会社にとどまり続ける働き方がモデルにはなりません。
マンパワーグループが実施したミレニアル世代に関する調査では「半数以上が将来的に、フリーランスやギグワーク、複数の仕事を掛け持ちするポートフォリオ型キャリアなど、従来とは異なる働き方も視野に入れている」実態が示されています。
個人の価値観は多様であり、その多様な価値観を満たしてくれる生き方を選べる可能性が増えたということは、一人一人が納得度の高い生き方を追求しやすくなったと言えるのではないでしょうか。
変化をチャンスと捉えるか、脅威と捉えるか
変化を脅威と嘆く人がいる一方で、時代に柔軟に適応し、こうしたテクノロジーの進化や多様な働き方の恩恵を受け、生き生きとしている人もいます。冒頭で紹介したセミナー参加者の「頑張って働いたりスキルを高めても、報われないのではないか?」という意見に対し、同じ20代の方で「親世代のように型にはまらず、自分で自分の生き方を選択できる豊かさを感じている。テクノロジーや寿命が延びた恩恵を活かして、自分にできることで貢献していきたい。」と述べる方もいました。
みなさんは、どのように考えますか?どちらの側で考えたいですか?
変化は「一つの事実」に過ぎません。
それを「チャンス」と捉えるか、「脅威」と捉えるかは、自分の意思で変えることができるのです。
チャンスを逃さず、自分のものにするには?
「チャンスは準備された心に微笑む(Chance favors the prepared mind.)」と細菌学者のルイ・パスツールはいいました。
目の前に現れる変化を"チャンス"だと察知しグリップするためには、日頃からの「備え」が不可欠です。
私が教員を務めるグロービス経営大学院では、ビジネスで勝つ定石を学び、自己を深く理解し、多様で幅広いコミュニティを築きます。
それらのすべては、チャンスを逃さず、自分のものにする「備え」であると捉えられます。
- 大きな変化を経営の定石に照らすと、大きなチャンスが見込めるのではないか?
- この変化は、自分にとってどのようなプラスの意味を持ち得るのか?
- あの人がチャンスをつかんだように、自分もできるのではないか?
など、現れる変化をチャンスに変える視点や力が養われます。
実際に、2020年のグロービス経営大学院の卒業生キャリアアンケートでは、以下のような回答が得られています。
思い通りにならない想定外の時代で、人生の選択肢を広げ、さらには理想の人生に近づいているという結果です。
まとめ
先行き不透明な時代を乗り切る上で大切なことは、人生の主導権を自らで握ることです。
そのためには、訪れるチャンスを受け止める準備が不可欠です。
皆さんは、どのような準備をされるのでしょうか。
自分が向かう先を決めるのは、自分以外にはいません。
そこに向かうための能力や助けとなるネットワークなどの資源は、自らが行動し獲得するしかありません。
どのような時代であろうが、未来を握る鍵は皆さんの手の中にあるということが、未来が明るい根拠になるのではないでしょうか。
著者情報
中村直太(グロービス経営大学院 教員)
慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修士課程(工学)修了。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア)にて約1,000名のキャリアコンサルティングを経験した後、事業企画にてサービス企画、営業企画、BPRなどを担当。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院のマーケティング(学生募集)企画、名古屋校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、アルムナイ・キャリア・オフィス(卒業生向けサービス企画)や学生募集チームの責任者などを経て、現在は顧客コミュニケーション設計やセミナー開発・登壇、WEBコンテンツ企画・執筆など様々な事業推進活動に従事。同時に個人としては、人生の本質的変化を導くパーソナルコーチとして活動。グロービス経営大学院の専任教員としては、思考系科目『クリティカルシンキング』、志系科目『リーダーシップ開発と倫理・価値観』に登壇。また、キャリア関連プログラムのコンテンツ開発及び講師を務める。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。