目次
「チームで連携が取れていなくて、プロジェクトがうまく進まない...」
「リモートワークになって、チームの結束力が下がってしまった...」
「メンバーのモチベーションが上がらず、目標達成できない...」
チームワークがうまく発揮できず、上記のような悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか?
チームワーク力は、チームリーダーだけでなく、メンバーにも求められるスキルです。
例えば、プロジェクトメンバーに抜擢されたり、重要度の高い仕事を担うタスクフォースにアサインされたりする可能性が高まるでしょう。
そういったチャンスをつかむためにも、役職や立場にかかわらずチームワーク力を磨くことをおすすめします。
本記事では、チームワークを高めるメリットや、チームワークを高める上で大切なポイントなどをご紹介します。
チームワークとは
ビジネスにおけるチームワークとは、「チームに所属しているメンバーが、同じ目標を達成するために共同作業を行う」ことを意味します。
優れたチームには、リーダーシップを発揮する人と、フォロワーシップを発揮する人がバランスよく存在します。
それぞれが自分の役割を認識し、円滑にコミュニケーションを取りながら、同じ目標に向かう。
このように優れたチーム作りを行うことが、チームワークを発揮する第一歩となります。
チームワークを高めるメリット
チームワークを高めることで、組織や個人にどんなメリットがあるのでしょうか?
ひとりでは達成が困難な仕事に取り組める
共通の目標を達成するために、メンバーそれぞれが協力し、補い合うことができます。
ひとりでは達成が難しい仕事や大きな仕事にも取り組めるようになり、大きな成果につなげることができます。
組織としてのパフォーマンスが上がる
チームワークが良好な環境では、メンバー同士の信頼関係も築きやすくなります。
チームの結束力が高まったり、一体感が醸成されたりすることで、組織としてのパフォーマンスの最大化にもつながるでしょう。
社員一人一人のモチベーションやロイヤリティの向上
お互いの能力を評価・信頼する関係が築かれることで、メンバーのモチベーション向上につながります。
また、組織に対するメンバーのロイヤリティが向上し、離職率をおさえられるという利点もあるでしょう。
チームワークが欠けるデメリット
チームワークの欠如は、単に「仲が悪い」という問題に留まらず、組織の成果と従業員の健全性に深刻な悪影響をもたらします。
リーダーは、この負の連鎖を理解し、未然に防ぐ行動をとる必要があります。
生産性の劇的な低下と手戻りの増加
チームワークが機能しないと、情報共有が滞り、タスクの重複や業務の属人化が進行します。
必要な時に協力が得られないため、問題解決に時間がかかり、結果として手戻りが頻発します。
これは、単に効率が悪いだけでなく、納期遅延やリソースの浪費に直結し、チーム全体の生産性を著しく低下させます。
心理的安全性の崩壊とイノベーションの停滞
信頼関係がない環境では、「失敗したら責められる」「反対意見を言ったら評価が下がる」という不安(心理的なリスク)が蔓延します。
これにより、メンバーは新しいアイデアや建設的な批判を控え、無難な意見しか出なくなります。
結果として、新しい価値を生み出すためのイノベーションの芽が摘まれてしまいます。
優秀な人材の離職率の上昇
チームワークの欠如は、メンバーに孤立感や不公平感を募らせます。
特に、貢献意欲の高い優秀な人材ほど、非効率な連携や責任の押し付け合い、そしてコミュニケーション不足によるストレスを嫌います。
彼らは、より成長できる、または健全な環境を求めて早期にチームを離脱する可能性が高くなります。
意思決定の遅延と市場機会の損失
意見の対立が感情的な衝突に発展しやすくなるため、誰もが議論を避けるようになります。
また、必要な情報がリーダーに集約されず、合意形成プロセスが機能不全に陥ります。
迅速な判断が求められる現代において、意思決定の遅れは、市場の変化に対応できず、大きなビジネス機会を逃すことに繋がります。
組織文化の悪化と「他責」の蔓延
チームワークが欠如した状態では、失敗の原因を外部や他者に求める「他責」の文化が根付いてしまいます。
メンバーは問題解決に意識を向けるよりも、自己保身を優先するようになり、協力体制が完全に崩壊します。
この悪循環が組織全体に広がることで、健全な学習文化が失われ、長期的な成長が期待できなくなります。
なぜチームワークが今の時代、重要なのか?
近年、ビジネスにおけるチームワークの重要性はますます高まっています。
ではなぜ、チームワークに焦点が当てられるようになったのでしょうか?
その要因のひとつが、プロジェクトやタスクフォースといった形の仕事の増加です。
ここでは、チームワークが求められる社会的背景について詳しく解説します。
スピーディーな意思決定と高い生産性が求められるようになった
現代は、先行きが不透明で、将来の予測が困難な「VUCA時代」と言われています。
ビジネスを取り巻く環境の変化が激しく、スピーディーな意思決定と高い生産性が求められるようになりました。
しかし、個人の能力だけで対応できることには限りがあります。
そのため、専門性や強みの異なるメンバーを集め、協力しながらスムーズに仕事を進める必要があるのです。
ビジネスモデルの複雑化
グローバル化や技術革新により、年々ビジネスモデルの複雑化が進んでいます。
それに伴って、多様な価値観やバックグラウンドを持つ人と働く場面が増加。
さらに、日々発生する課題も、一筋縄ではいかない複雑なものが増えています。
こうした変化を受けて、企業内では新しい課題に対応するため、部門・チーム横断のプロジェクトやタスクフォースが発足されるようになりました。
チームワークを高める上で大切なポイント
リーダーとしてチームワークを高めていく上で、大切なポイントが3つあります。
これらのポイントに沿って、チーム運営を進めていくことをおすすめします。
ビジョンをしっかりと共有し、果たすべき役割を明確にする
チームとして目指していくビジョンを示し、メンバーの果たすべき役割を明確にすることが重要です。
「どんな目標に向けて行動するのか?」「現状とそれに対する課題は何か?」「メンバーそれぞれに期待していることは何か?」などを、メンバーが納得する形で共有しましょう。
そうすることで、目標がズレることなく、全員が責任を持って行動することができます。
心理的安全性を高め、発言しやすい環境を作る
円滑なコミュニケーションは、チームワークを発揮する上で欠かせません。
誰もがフラットに意見を発信できるよう、心理的安全性の高い環境を築くことが大切です。
雰囲気が緊迫し過ぎないようにアイスブレイクをしたり、メンバーの意見を尊重したりしましょう。
チーム内の心理的安全性を高める方法は、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
適切なリーダーの働きかけ
メンバーのサポートを適切に行うことで、個人のパフォーマンス最大化につながります。
普段のコミュニケーションを通して、メンバーのモチベーションや業務進捗など、さまざまなことに目配りしましょう。
チームワーク力が高い人の特徴
チームワークを高めるためには、リーダーだけでなく、メンバーの働きかけも重要です。
では、リーダーの支えとなるような、チームワーク力が高いメンバーとはどのような人なのでしょうか?
ここでは、チームワーク力が高い人の特徴について3つご紹介します。
自分の強み・弱みを把握している
「自分ができること、できないこと」をはじめ、自分自身についてよく理解しています。
例えば、自分が得意な仕事を積極的に引き受けることで、リーダーやほかのメンバーがコア業務に集中できる環境を生みだすことが可能です。
逆に自分が不得意な仕事に関しては、その仕事が得意な人に助けを求めて、必要以上に悩む時間を削減することができます。
このように、自分の強み・弱みを把握することで、チームの生産性向上に貢献できるでしょう。
協調性がある
協調性に長けており、チーム全体の状況を見ながら、適切な役割を担うことができます。
自分ができることを理解しているからこそ、たとえ業務範囲外だったとしても、ほかの人のサポートに入ることができるのです。
また、自分がサポートに入れない状況であれば、ほかの誰かに対して協力をお願いすることも。
状況や場面に応じて、チームのために自分が取るべき行動を考えられます。
観察力がある
先ほどの話にも通じますが、チームの状況や場面、ほかのメンバーの状態など、周囲のことをよく見ています。
チームで仕事を進めていく上で、"水漏れ箇所"となるような問題は日々発生します。
そういった細かいことにも気が付く観察力に優れており、リーダーに相談したり、自分がサポートに入ったりすることができるのです。
チームワーク向上のためにおすすめの施策
チームワークは自然に育まれるものではありません。
リーダーが意図的に相互理解と心理的安全性を深めるための仕組みを導入し、継続することが不可欠です。
本章では、チームのパフォーマンスとエンゲージメントを向上させる、具体的な施策を4つご紹介します。
「ハイ・コンテクスト」を排した情報共有文化の徹底
チームの認識のズレを防ぐため、
「言わなくてもわかる」というハイ・コンテクストな前提を排し、常に「誰が見てもわかる」情報共有を徹底します。
特にリモートワーク環境では、
口頭での指示だけでなく、プロジェクトの目標、進捗、決定事項をすべてドキュメント化し、
アクセスしやすい場所に集約することが重要です。
この文化を定着させるためには、リーダー自身が率先して情報をオープンにし、
「情報は共有して初めて価値が生まれる」という意識をメンバーに浸透させることが、連携ミスの減少と生産性向上に繋がります。
失敗を成長の機会に変える「建設的なフィードバックループ」
チームの活発な議論を促すには、失敗を個人で終わらせず、チーム全体の学びに変える仕組みが必要です。
そのため、フィードバックを「評価」ではなく「成長支援」と位置づけることが重要です。
具体的には、リーダーがメンバーの行動に着目し、改善可能な点をデータや事実に基づいて伝えます。
さらに、失敗した際には責めるのではなく、「何が原因だったか」「次にどう活かすか」をチーム全体で分析する場を設けることで、
心理的安全性を高め、挑戦しやすい文化を醸成します。
相互理解を深める「非公式な交流機会」の意図的な設計
高い成果を出すチームは、メンバーがお互いの個性や価値観を知り、リスペクトし合っています。
リーダーは、業務外の雑談や交流が失われがちな環境において、意図的に非公式な交流機会を設計する必要があります。
例えば、週に一度の「バーチャルコーヒーブレイク」や、
業務の始めに「最近の個人的なニュース」を共有するチェックインの時間を設けるなどです。
これにより、メンバー間の心理的な距離が縮まり、業務上の課題や不安も気軽に相談できる信頼関係の土台が築かれます。
意思決定を高速化する「権限委譲と自律性」の拡大
チームワークの目的は、リーダーの負担を減らすことではなく、組織として最大の成果を出すことです。
そのため、リーダーは、権限を握りすぎず、メンバーが自分で判断し行動できる自律的な権限委譲を進める必要があります。
メンバーに明確なゴールと裁量権を与え、意思決定のスピードを上げます。
リーダーは、決定権を渡した分野については口出しをせず、相談役やコーチ役に徹することで、
メンバーの主体性と責任感を育て、チームの実行力を大幅に向上させることができます。
チームワーク向上のためにリーダーがすべきこと
チームワークは、メンバーに任せきりにせず、リーダー自身が積極的な姿勢で環境を整備し、模範を示すことで実現します。
本章では、心理的安全性と自律性を育み、チームの実行力を最大化するためにリーダーが習慣化すべき具体的な行動を7つ解説します。
「なぜ」を伝え、チームのビジョンを自分ごとにする
リーダーは、単に「何をすべきか」を指示するだけでなく、
「なぜこの仕事が必要なのか」「チームの活動が組織全体の目標にどう繋がるのか」という上位のビジョンを、
熱意を持って伝え続ける必要があります。
この「なぜ (Why)」の共有を通じて、メンバーは自分の仕事に意味を見出し、
受動的なタスクではなくチームの目標達成を自分ごととして捉えられるようになります。
これにより、自律的な行動と高いコミットメントが引き出されます。
失敗を「学び」として称賛し、脆弱性を開示する
心理的安全性を高める最も強力な行動は、リーダー自身が失敗を隠さず、そこから得られた教訓を共有することです。
また、メンバーがリスクを恐れずに挑戦した結果の失敗に対しては、「ナイスチャレンジ」と称賛し、
責めることなく「次へ活かす学び」として扱う姿勢を示します。
リーダーが率先して脆弱性を示すことで、
「ここではミスしても大丈夫だ」という安心感が生まれ、活発な発言と挑戦の文化が醸成されます。
メンバー個々の「強み」を把握し、役割を最適化する
チームの多様な能力を最大限に活用するため、
リーダーはメンバー一人ひとりの知識、スキル、経験、そしてモチベーションの源泉としての「強み」を正確に把握する必要があります。
その「強み」が最も活きるようにタスクや役割を意図的に最適化して割り当てます。
これにより、メンバーは貢献実感を得られ、自信を持って仕事に取り組めるようになります。
これは、成果とエンゲージメントを同時に向上させる、リーダーの重要な役割です。
「傾聴」を徹底し、発言の機会を均等に与える
会議や議論の場では、声の大きい人や役職が高い人の意見に流されがちです。
リーダーは、意図的に発言の少ないメンバーに耳を傾ける「傾聴」を徹底し、
全員が意見を述べる機会を均等に与えるようファシリテーションする必要があります。
特に反対意見や懸念事項を丁寧に聞き出し、受け止める姿勢は、心理的安全性の維持に直結します。
多様な視点を取り込むことで、意思決定の質が向上します。
意思決定の背景をオープンにし、透明性を確保する
チームへの信頼を築くために、リーダーは意思決定のプロセスや背景を可能な限りオープンにする必要があります。
「なぜこの結論に至ったのか」「何がトレードオフだったのか」を明確に共有することで、
メンバーは不信感を抱くことなくリーダーの判断を受け入れることができます。
透明性の高いコミュニケーションは、ゴールの共通認識を強固にし、チームの一体感を醸成します。
1on1ミーティングを「育成」と「サポート」の場として活用する
日常の進捗確認とは別に、リーダーは定期的な1on1ミーティングを、
メンバーの育成と個人的なサポートに特化した時間として位置づけるべきです。
ここでは、業務の課題だけでなく、メンバーのキャリア志向やメンタルヘルス、チームへの懸念など、個人的な対話に時間を割きます。
この時間を通じて、リーダーはメンバーとの信頼関係を深め、早期にモチベーションの低下や離職リスクの兆候を察知し、対応することができます。
「成果」だけでなく「プロセス」や「協力」を公正に評価する
チームワークを促進するため、評価制度は個人の最終成果だけでなく、
プロセスにおける協調性や他者への貢献を組み込む必要があります。
具体的には、「誰かの危機を救った」「部門間の橋渡しをした」といったチームワークに関する具体的な行動を評価の対象とします。
リーダーがこうした目立たない貢献を公正に評価し、賞賛することで、「チームのために動くこと」が報われる文化が定着します。
実践的なチームワーク力やリーダーシップスキルを身につけるには?
今は書籍や動画学習など、チームワークやリーダーシップスキルを高める方法について学ぶ手段がたくさんあります。
一方で、実際のビジネス現場で多くの方が上手くいかないと悩んでいます。
その理由は、思考力や理解力、表現力、コミュニケーション力など、高度な複合スキルが同時に求められるからです。
実践レベルでビジネススキルを習得したいという方は、外部の機関を上手に活用して学ぶというのも1つの手です。
例えば、国内最大のビジネススクール・グロービス経営大学院では、「チームで働く力」を身につけるために適した『組織行動とリーダーシップ』講座があります。
現在、リーダーというポジションでない方でも、組織やチームの一員として協働し成果をあげていくためのマインドを育てるという点で、学びの多い講座です。
ビジネスを取り巻く外部環境が激しく変化する中で、リーダーとして影響力を発揮し、組織を動かすためにどのような行動をとるべきか。
『組織行動とリーダーシップ』講座では、メンバーの力を引き出し、リーダーとして組織で成果を出すための知識を体系的に学びます。
(▼講座の詳細はこちら)
『組織行動とリーダーシップ』講座
また、グロービス経営大学院では、随時オンラインにて『無料体験クラス』を実施しています。
授業の雰囲気や進め方を知りたい方は、まずはこちらからのご参加をおすすめします。
(▼日程一覧はこちら)
チームワーク向上にはクリティカル・シンキングが役立つ
チームで建設的な議論を行うには、クリティカルシンキング(批判的思考)のスキルが不可欠です。
感情論や思い込みを排し、前提や根拠を深く掘り下げて考えることで、議論の質を高め、本質的な問題解決に導くことができます。
これにより、全員が納得感を持って次の行動に移れるようになり、チームの実行力が大幅に向上します。
グロービス経営大学院でビジネススキルを身につけよう
グロービス経営大学院では、単なる知識習得に留まらず、
「チームを率いる実践的なリーダーシップ」や「課題解決力を高めるクリティカルシンキング」といった、
チームワーク向上に不可欠なビジネススキルを徹底的に鍛えます。
多様な受講生とのディスカッションを通じて、実践的な視点と多様な価値観を身につけ、明日から現場で活かせるスキル獲得をサポートします。
まとめ
リーダー・メンバー問わず、チームワーク力がある人は、自分自身のことや求められている役割、チームの状況などをよく理解しています。
目標達成する上でチーム全体に欠けている役割は何かを意識し、状況に応じて必要な役割を全うすることができます。
チームワークについてあまり意識したことがなかったという人は、まず自分を知ることから始めてみてはいかがでしょうか?
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。



