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心理的安全性とは?チームの生産性を最大化するうえで意識すべきこと

心理的安全性とは?チームの生産性を最大化するうえで意識すべきこと

目次

日本は、少子高齢化の進行により労働力人口の減少が進み、労働市場における人手不足が深刻化しています。
また、経済のグローバル化によって海外企業の安価で高品質な製品・サービスと競争しなければならない時代に突入しています。
こうした問題に対処するには、少ない労働力人口でも最大限の成果を生み出す取り組み、すなわち「生産性向上の改善・向上」がこれまで以上に必要になります。

そこで、社員の生産性を高め、組織として最大のパフォーマンスを発揮するための概念として近年注目されているのが「心理的安全性」というキーワードです。
本記事では、チームのパフォーマンスを高めるための「心理的安全性」について詳しくご紹介します。

心理的安全性とは

心理的安全性とは、「psychological safety(サイコロジカル・セーフティ)」という心理学用語を日本語訳したもので、チームの中でメンバーが誰に対しても恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態のことを指します。
「チーム内で何でも言い合え、発言によって人間関係の悪化を招くことがない状態」と言い換えることもできます。

このように聞くと、「空気を読んで仲良くすること」「ぬるま湯のチーム」と捉えられることがよくありますが、そのような状態とは異なります。
心理的安全性の高い職場ではむしろ、空気を読まない発言があったり、これまでのやり方や伝統を否定するような発言があったりします。
仮にそのような発言があっても組織内で拒否されず、人間関係や評価に影響しない、心理的に安全な状態が担保されています。
また、積極的に発言しあうことでお互いに失敗を恐れずに挑戦することを奨励しあいます。

「こんなことを質問すると、理解力がないと思われてしまいそう」
「反対意見を言ったら職場の人間関係が悪くなってしまうのでやめておこう」
「失敗が許されない雰囲気があるから無難に過ごそう」

このように、職場の中でメンバー同士が意見を出しづらい雰囲気があったり、挑戦せずに無難に過ごしているメンバーが多かったりしたら、注意が必要です。
このような状態だと、貴重なアイデアが埋もれてしまったり、問題の共有が行われなかったりします。
メンバーそれぞれが空気を読むことに時間を費やし、自らの強みを発揮できずにいる可能性が高いです。
そうなると、チームの生産性が高まらないことは言うまでもありません。

心理的安全性が注目される背景

心理的安全性の概念は、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン教授により、1999年に提唱されました。
心理的安全性が多くの企業から注目を集めるようになったのは、2016年に米Google社が「心理的安全性がチームの生産性を高める重要な要素である」という研究結果を発表したことが大きなきっかけとなりました。

Google社は2012年から約4年間の歳月をかけ、成功し続けるチームの条件を模索する「プロジェクトアリストテレス」という大規模なプロジェクトを実施し、その研究成果の報告を行いました。
生産性の改善・向上は世界中の企業にとって生き残りをかけた非常に重要なテーマであったため、「心理的安全性」というキーワードが一気に注目を集めるようになったのです。

チーム内で心理的安全性を高めるメリット

心理的安全性を高めることが労働生産性の向上に対して、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

メンバーのパフォーマンスが向上し、業績や成果につながる

メンバーがチームに対して不安や恐怖を感じることがない心理的安全性が高い状態にあると、社内の人間関係にとらわれることなく、目の前の仕事に全力で取り組むことができます
「こんな提案をしたら社内の人間関係を悪くしそうだ」と思って二の足を踏むことなく、積極的に提案を行うことで業務のスピードも速くなります。
その結果、仕事の効率があがり個人のパフォーマンスも高まり業績向上につながります。

コミュニケーションが活発になり、イノベーションが促進される

心理的安全性の高い環境であれば、メンバーが不安を感じて発言を控えることがなくなるため、コミュニケーションが活発になります。
新人であれベテラン社員であれ、発言を拒否される恐れがないため、これまで誰も考えなかった創造的なアイデアが生まれやすくなります
チーム内で出てくる意見は拒否されることなく、建設的な議論が行われ、その結果としてイノベーションが促進されます。

会社への満足度・愛着心(エンゲージメント)が高まる

心理的安全性の高い組織では、社員がモチベーション高く働くことができ一人一人が自身の能力を生かせている感覚を持つことができます。
結果として、会社への満足度が高まり、組織に対する愛着心が深まります。
離職率も低くなるため、優秀な人材の流出を防ぐことにも繋がります。

鬼滅の刃から学ぶ、心理的安全性の高いリーダーの特徴

エドモンドソン教授らによる研究グループは、組織の心理的安全性を高めるには「リーダー」の役割が重要であることを明らかにしました。
そして、心理的安全性を高めるリーダーには7つの特徴があることを示しました。

この特徴を紹介するのに適したリーダーがいます。
私の大好きな漫画「鬼滅の刃」に登場する、「煉獄杏寿郎」という人物です。
映画「鬼滅の刃~無限列車編」で活躍する彼の一つ一つのセリフを心理的安全性の高いリーダーの特徴にあてはめてみると、驚くほど一致するのです。
心理的安全性というキーワードを軸に鬼滅の刃を見ると、煉獄杏寿郎というリーダーの姿勢・発言・行動が、いかに心理的安全性の高い環境をつくっているかメンバーのチャレンジをどう促しているかを感じることができます。
鬼滅の刃をご存知の方は、ぜひ煉獄さんのセリフとそのシーンを想い浮かべながら7つの特徴を確認してみてください。
ご存知ない方はセリフ部分を読み飛ばしていただいて構いません。

直接話のできる、親しみやすい人になる

リーダーだからといって近寄りがたい存在でいるのではなく、何でも相談できる雰囲気をつくることが大切です。

<この特徴に当てはまる煉獄さんのセリフ>

『ここに座るといい』
『こっちにおいで 最後に少し話をしよう』

現在持っている知識の限界を認める

リーダーだから何でも知っておかないといけないと気負うのではなく、自身の知識の限界を認めることが重要です。
時にはメンバーのほうが知識豊富なこともあるかもしれません。

<この特徴に当てはまる煉獄さんのセリフ>

『うむ!そういうことか!だが知らん!"ヒノカミ神楽"という言葉も初耳だ!』

自分もよく間違うことを積極的に示す

リーダーだからといって失敗をしない完全無欠の人間である必要はありません。
リーダーが果敢にチャレンジして間違う姿はメンバーを勇気づけます。

<この特徴に当てはまる煉獄さんのセリフ>

『うたた寝している間にこんな事態になっていようとは!!よもやよもやだ!柱として不甲斐なし!!穴があったら入りたい!!』

参加を促す

リーダー一人で解決できることには限界があります。
何でも一人で背負おうとせずにメンバーを積極的に参加させましょう。

<この特徴に当てはまる煉獄さんのセリフ>

『どのような形になろうとも鬼である限り急所はある!俺も急所を探りながら戦う。君も気合を入れろ!』

失敗は学習する機会であることを強調する

リーダーが果敢にチャレンジし失敗から学ぶ姿勢を示すことでメンバーも失敗を恐れずにチャレンジするようになります。

<この特徴に当てはまる煉獄さんのセリフ>

『竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、もっともっと成長しろ。そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる。』

具体的な言葉を使う

リーダーはメンバーに対して、「言わずとも分かってくれているだろう」という勝手な期待を捨て、メンバーに指示を出す時には具体的な言葉を使うようにしましょう。

<この特徴に当てはまる煉獄さんのセリフ>

『動くな!!傷が開いたら致命傷になるぞ!!待機命令!!』

境界を設け、メンバーに責任を負わせる

リーダーがメンバーに業務をアサインする時は曖昧な状態ではなく、どの領域までやってほしいのかを明確に伝え、その領域についてはメンバーに責任をもってもらえるようにモチベートする必要があります。

<この特徴に当てはまる煉獄さんのセリフ>

『この汽車は八両編成だ!俺は後方五両を守る!残りの三両は黄色い少年と竈門妹が守る。君と猪頭少年はその三両の状態に注意しつつ鬼の頸を探せ!』

心理的安全性の高いリーダーは決して「ぬるま湯のチーム」はつくっておらず、それぞれのメンバーにチャレンジを促しています。
心理的安全性の高いチームをつくるということは、リーダーとメンバー含めて全員が難しい課題に挑みながら生産性を高めるためだといっても過言ではありません。

チーム内の心理的安全性を高める方法

チーム内の心理的安全性を高める上でリーダーは重要な役割を担っています。
しかし、リーダーだけではなく、メンバーも含めたチーム全体で心理的安全性が高めることも重要です。
そこで、チームとして心理的安全性を高める方法を4つご紹介します。

どんな意見でも発言しやすい環境を作る

日本企業の多くは、「ピラミッド型」の組織形態となっており、役職や肩書きにとらわれてしまい、メンバーが意見を言いづらい構造になっています。
上に立つ人は、メンバーが発言しにくさを感じていることに配慮し、発言しやすい雰囲気や機会をつくる必要があります。
優秀な人や声の大きい人など特定の人の意見ばかりに引っ張られることなく、全てのメンバーが自由に発言でき、その一つ一つの発言が大事に扱われている感覚をチームとして持つようにしましょう。

多様性を受け入れ、相互理解を深める

組織には、年齢・性別・国籍・価値観・ライフスタイルなど、異なる人材が集まります。
これらのどれか一つでもチームの中で受け入れられないと感じてしまうと、人間関係に悩んでしまいその人が持つ本来の力を発揮することができなくなります。
リーダーを含めたメンバー全員が自分とは異なる相手を受け入れる姿勢を持つことが大切です。

相互理解を深めるために、リーダーはメンバーと1on1ミーティングを行い、仕事以外の雑談も交えてお互いのことを話せる機会をつくることが効果的です。
また、リーダーとメンバーの間の相互理解だけではなくメンバー同士の相互理解を促進するために、カジュアルにお互いのことを話せるようなランチ会や懇親会などの機会を設けることも効果的です。

競争よりも共創するカルチャーをつくる

常に競争心が求められる環境で仕事をしていると、メンバー間で緊張関係が続きお互いに情報共有をしなくなったり、助け合いの精神が失われてしまったりします。
「失敗したら周りに追い抜かれてしまう」と思いながら働いている状態は、心理的安全性が高いとは言えません。

個人間の競争を求めるよりも、チームのビジョンを掲げてお互いに協力しあう、共創するカルチャーをつくることが重要です。
「失敗しても他の誰かがカバーしてくれるはず」「誰かが失敗したら自分がカバーする」と思えるような相互で信頼しあえる関係性をつくることができれば心理的安全性が一気に高まります。
そうなると、一人では成しえなかったことも協力しあって達成することもできるようになります。

まとめ

今回は、「心理的安全性」について、注目されている背景や心理的安全性を高めるメリット、高めるための方法についてご紹介しました。
心理的安全性と聞くと一見、ぬるま湯の仲良しチームと思われがちですが、本記事を読んでいただくとそうではないことが理解いただけたと思います。
心理的安全性の高いチームとは、メンバー同士がお互いに意見や指摘をしあい常にチャレンジを奨励しあう状態のチームであることを意味します。

そして、チームの心理的安全性を高める上で重要な役割を担うのが「リーダー」の存在です。
リーダーの姿勢、発言や行動がメンバーに伝播し、全体のカルチャーとなり、心理的安全性の高いチームに繋がるのです。

心理的安全性の高いチームづくりを考える上で本記事を参考にしていただけると幸いです。
また、実践を通して心理的安全性の高いリーダーシップのスキルを身につけていきたい方は、グロービス経営大学院の『組織行動とリーダーシップ』講座の受講をお勧めします。
このクラスでは、リーダーとしてのあり方や姿勢、組織をどのように導いていくかについて受講生同士で相互フィードバックをしながら実践的に学んでいきます。

(▼講座の詳細はこちら)
『組織行動とリーダーシップ』講座

多くの方に「チームのパフォーマンスが高まった」「どんな意見も言い合えるチームになった」という実感を持っていただけると大変嬉しく思います。

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著者情報

高原 雄樹(グロービス経営大学院  福岡校 スタッフ)

高原 雄樹(グロービス経営大学院 福岡校 スタッフ)

北九州市立大学法学部卒業。グロービス経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。楽天株式会社にてインターネットショッピングモール「楽天市場」の出店営業、ECコンサルティング、松山支社の立ち上げ、メンバーのマネジメント等を行う。その後、グロービスに入社。グロービス経営大学院福岡校の成長戦略の立案・実行や組織マネジメント、チームの責任者として従事。キャリアコンサルタント(国家資格)で得た知識・技能をもとに日々学生のキャリアと向き合っている。

※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。

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