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ビジネスをスムーズに進めていく上で欠かせないのが、観察力です。
先行きが不透明で、将来の予測が困難なVUCA時代を迎えた現代。
ちょっとした変化に気付ける能力は、ビジネスパーソンとして大きな強みとなるでしょう。
本記事では、観察力がある人の特徴やトレーニング方法をご紹介します。
観察力とは
観察力とは、「物事を観察し、変化に気付く力」を指します。
観察の対象となるものは実にさまざまですが、大きく2つに分けられるでしょう。
1つ目は、「ヒト」です。
会社の中で見てみると、上司や同僚、部下、他部署の社員、部門長などが挙げられます。
「どんな人なのか?」「どんな考えを持っているのか?」といったところまで観察の対象となるでしょう。
2つ目が、「モノ」です。
オフィスや店舗にある備品や仕事で使う道具、機械などを指します。
例えば、「いまだに昔の商品のポスターがオフィスに貼ってある」「店舗のフライヤーが古くなっていて、顧客から残念に思われている」など。
このほかにも、「メールの宛先が間違っている」「資料に誤字脱字がある」といったことも観察の対象となります。
観察力と洞察力と違い
観察力とよく似た言葉に、「洞察力」があります。
洞察力とは、「物事の本質を見抜く力」のことです。
観察はあくまで「表面的な部分を注意深く見る」という行為ですが、洞察は「物事の見えていない部分まで見抜く」という行為を指します。
物事の本質を捉えられるビジネスパーソンになるには、「なぜ事象が起こったのか?」「その真因は何か?」などを考えるための洞察力が必要です。
そんな洞察力の土台となる観察力について、詳しく解説していきます。
仕事において観察力を身につけるメリット
観察力を身につけておくと、さまざまなビジネスシーンで役立ちます。
分析力が高まる
あらゆる物事を観察することで、小さな変化や違いに気付けるようになります。
例えば、クライアントとのやりとりの中で、「競合商品との違いはこうですよね」「今回のアップデート、こういうところがすごく良いと思いました」と気付いたことを伝えると、相手に良い印象を与えることができるでしょう。
「自分や自社に興味を持ってくれている」というのは、やはり嬉しいものです。
そうしたコミュニケーションの積み重ねが、信頼関係の構築や業績向上につながります。
さらに、小さな変化や違いを発見した際に、「どうしてそうなったのか?」まで考えることで、分析力を高めることができます。
分析力が高まることで、クライアントへの提案内容の質も向上するでしょう。
コミュニケーションが円滑になる
観察を続けることで、相手が求めていることや意図を汲み取ることができます。
例えば、「最近ちょっと疲れている?」「前よりモチベーションが落ちている?」など、一緒に働いているメンバーの些細な変化に気付くことができます。
相手に合わせて細やかな気配りを行うことで、関係性が良好になり、日々のコミュニケーションも円滑になるでしょう。
ミスやトラブルが減る
冷静かつ慎重に作業を進められるため、ちょっとした違和感や変化にも敏感です。
「先月の数字と大幅に違うけど大丈夫だろうか?」といったことに気付けるため、ミスやトラブルを未然に防ぐことができます。
観察力がある人の特徴
では、観察力がある人にはどのような共通点があるのでしょうか?
日ごろから周囲に気を配っている
日常的にまわりをよく見ているため、細やかな気遣いが得意な人が多いです。
とくに、周囲の人の髪型や服装、様子など、人間への興味関心を持っています。
多角的な視点で物事をみることができる
視野が広く、さまざまな視点で物事を見ることができます。
「こういうケースはこうなる」「今までこうだったから、変化は起こらない」といった固定観念に縛られないため、柔軟に物事を考えたり、人が見逃すような変化にも気付いたりできるのです。
好奇心旺盛で、積極的に情報収集している
日常における全ての事象や物事は情報である、という認識を強く持っている人が多いです。
また、好奇心旺盛で、知らないことや新しいことに対するアンテナも張っています。
何気ない会話や街で見かけた広告なども、情報収集の一環として積極的に活用しています。
観察力を高める方法
観察力は、日々のトレーニングで鍛えることができます。
すぐに取り組める方法を3つご紹介します。
日常で起きる出来事や他者に興味を持つ
観察を行う上で何よりも大切なのが、情報収集です。
まわりの人の様子、コンビニでよく売れている商品、街で見かける広告など、日常で触れる全てのものが情報であるという意識を持ちましょう。
そうした意識がないまま何となく過ごしてしまうと、多くの情報を取りこぼしてしまいます。
「最近よく流れているCMは?」など、普段の生活の中でぜひ意識してみてくださいね。
仮説思考力を鍛える
常に自分なりの仮説を立てようとすることで、観察への取り組み方も変わってきます。
仮説を立てるためには、「どんな変化が起こっているのか」「その変化の要因は何か」といった情報が必要です。
どんな情報があれば仮説が成り立つのかを考えることで、観察の精度も向上するでしょう。
仮説思考力の詳しい鍛え方は、こちらの記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
変化に着目する癖をつける
ちょっとした変化に気付くための行動を癖付けることも重要です。
例えば、「毎日新しいことをひとつ発見する」というルールを作ってみるなど。
「何か新しいものはないか?」「昨日と今日で変化しているところは?」といった意識を持って過ごすことで、変化に敏感になれるでしょう。
人間だけでなく、オフィスや自宅、お出かけ先といった場所など、あらゆるものに対してそういった意識を持つことが重要です。
まとめ
変化の激しいVUCA時代において、観察力は非常に重要なスキルと言えるでしょう。
観察力を意識して行動することで、いつもと違う変化に敏感になります。
些細な変化に気付けるようになれば、人よりも早く新しいアイデアを提案することが可能です。
「これまで観察力を意識してこなかった」という方は、まずは毎日何か新しいことを発見するといった目標を立てて実行してみてはいかがでしょうか。
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。