目次
「もっと斬新なアイデアを考えられるようになりたい」
「これまでにはない新しい企画を提案したい」
...といったことに悩んだ経験はありませんか?
そんな方におすすめなのが、「ゼロベース思考」という考え方です。
ビジネス環境の変化に伴い、今注目を集めているスキルのひとつです。
本記事では、ゼロベース思考の概要やメリット、身に付ける方法などをご紹介します。
ゼロベース思考とは
ゼロベース思考とは、前提知識や思い込みにとらわれず、ゼロから物事を考えることです。
私たちは普段、これまでの経験や価値観、知識などをもとに、物事を判断しています。
しかし、既存の枠組みや考え方に縛られて、柔軟な発想ができなくなる場合もあります。
そういった際に、まっさらな状態で物事を考え、創造的なアイデアを生みだすために使われる思考法です。
ゼロベース思考が注目されている理由
最近、この「ゼロベース思考」という言葉を耳にする方も多いのではないでしょうか。
ここでは、ゼロベース思考が注目を集めている背景について、ご紹介します。
ビジネス環境の複雑化
経済のグローバル化や消費者ニーズの多様化など、ビジネス環境の複雑化が進んでいます。
これまで企業が直面してこなかった未知の変化が増え、過去の成功体験や考え方を踏襲するだけでは、生き残っていくことが困難な時代です。
経営だけでなく、現場のオペレーションなども日々複雑化しており、さまざまな場面でイノベーションが求められるようになってきました。
こうした時代の変化に対応するためにも、新たなアイデアを生みだすゼロベース思考が重視されています。
働き方や価値観の多様化
ビジネス環境だけでなく、働く人の価値観、そして働き方の多様化も進んでいます。
かつての日本企業では、終身雇用や新卒一括採用、年功序列などが当たり前でした。
しかし、成果主義を重視する企業が増え、そういった価値観は大きく変化しています。
また、リモートワークの浸透などに伴い、多様な働き方が求められるようになりました。
こうした変化にあわせて、素直に新しい考え方を受け入れることが重要視されています。
ゼロベース思考を身に付けるメリット
では、ゼロベース思考を身に付けることで、どんなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、3つのメリットをご紹介します。
複雑化した課題の解決法の発見
ビジネス環境の複雑化に伴い、日々発生する課題もさまざまな要因が絡み合っていることが多いです。
「問題が複雑で解決の糸口が見えない」「何から考えたらいいか分からない」というときに、ゼロベース思考を用いることで斬新な解決方法を見出すことができます。
新しいアイデアが生まれやすい
経験の延長線上で考えていないため、これまでにはない新しいアイデアを生みだせます。
過去の成功体験や知識にとらわれず、「もっとこんな商品・サービスがあったらいいな」と柔軟に考えることができます。
顧客視点で考えることができる
画一的な視点で物事を考えるのではなく、多面的に物事を考えられます。
ゼロベース思考を活用することで、「自社の強みはここだから、もっと強く訴求しよう」という自社視点ではなく、「本当に顧客はこれらを求めているのか?」と顧客視点で考えることができるのです。
そうすることで、幅広い視野を持って分析や判断を行うことができるでしょう。
ゼロベース思考のポイント
ゼロベース思考を取り入れるにあたって、重要なポイントを2つご紹介します。
思い込みや先入観にとらわれない
1つ目は、「きっとこうだろう」という思い込みや先入観を常に客観視することです。
先入観を持たないと言葉で言うのは簡単ですが、自分が無意識に置いている前提にはなかなか気付かないものです。
例えば、過去の成功体験だけで物事を判断してしまったり、たまたま読んだ書籍の知識に決断が左右されたりした経験はありませんか?
このように知らず知らずのうちに、思い込みや先入観を抱いていることが多いです。
そのため、自分の思考を客観的にチェックする習慣をつけるようにしましょう。
未来志向で考える
2つ目は、「過去」ではなく「未来」志向で物事を考えることです。
過去を分析するだけでなく、「もっとよくするには?」といった視点が重要です。
視線を未来に向けて、物事をポジティブに受け止めることで、イノベーションを生みだすことができます。
ゼロベース思考を身に付ける方法
ゼロベース思考は、一朝一夕で身につくものではありません。
まずは自分の思考を客観的に見て、意識していくということが大切です。
ここでは、ゼロベース思考を身に付けるためのトレーニング方法をご紹介します。
前提を疑う
ゼロベース思考を身に付ける上で重要なのは、自分の隠れた前提を疑うことです。
思い込みや思考の癖は意識しないと気付けないため、常に客観的にチェックする必要があります。
こうした自分の考えを常に疑う「クリティカル・シンキング(批判的思考)」を意識してトレーニングすることで、思考の精度が高められます。
クリティカルシンキングを鍛えることで、主観や先入観に捕らわれずに物事を見る力が養われていきます。
一方で、クリティカルシンキングは、書籍を読んだり、動画を観ただけでは、なかなか習得が難しい思考法でもあります。
グロービス経営大学院など、講座として提供しているビジネススクールもあるので、こうした外部の機関を活用するというのも1つの手です。
講座は2週間に一度、計6回の開催。
3ヵ月でかなり思考の仕方が変わりますので、ぜひ検討してみてください。
(▼講座の詳細はこちら)
『クリティカルシンキング』講座
またグロービス経営大学院では、随時オンラインにてクリティカルシンキング講座の『無料体験クラス』を実施しています。
授業の雰囲気や進め方を知りたい方は、まずはこちらからのご参加をおすすめします。
(▼日程一覧はこちら)
論点(イシュー)をおさえる
解決すべき課題の論点(イシュー)を押さえ続けることが重要です。
あれこれと考えているうちに、「そもそも出すべき結論がズレていた」なんて経験をしたことはありませんか?
「今ここで考えるべきことは何か」「何が重要な問題なのか」を常に意識することで、本質的な解決策を考えることができるでしょう。
全体構造と物事のつながりを把握する
ゼロベースで考える上で、物事の全体像やつながりをおさえることも大切です。
「何と何がどういう関係性なのか」「因果関係があるのか」などを見分けながら、思考を整理していきましょう。
そうすることで、複雑に見える課題でも、解決策の糸口が見つかるはずです。
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まとめ
先が見えない時代を迎え、すでに多くの変化が私たちの身の回りで起きています。
過去や思い込みにとらわれない「ゼロベース思考」の重要性は、ますます高まっていくでしょう。
ゼロベース思考を身に付けたいという方は、まず「そもそも」を口癖にすることをおすすめします。
「そもそも違うんじゃないか?」「そもそも意味があるのか?」と口にすることで、自分の隠れた前提や思い込みに意識を向けることができます。
思考のトレーニングの積み重ねが重要だからこそ、こうした簡単なところから始めてみてはいかがでしょうか。
著者情報
村尾 佳子(グロービス経営大学院 経営研究科 副研究科長)
関西学院大学社会学部卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市政策修士。高知工科大学大学院工学研究科博士(学術)。大手旅行会社にて勤務後、総合人材サービス会社にてプロジェクトマネジメント、企業合併時の業務統合全般を経験。現在はグロービス経営大学院にて、事業戦略、マーケティング戦略立案全般に携わる。教員としては、マーケティング・経営戦略基礎、リーダーシップ開発と倫理・価値観、経営道場などのクラスを担当する。共著に『キャリアをつくる技術と戦略』、27歳からのMBAシリーズ『ビジネス基礎力10』『ビジネス勉強力』『リーダー基礎力10』がある。
※本記事の肩書きはすべて取材時のものです。